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「奇兵隊内閣」というネーミングは失敗では?

 8日の皇居での認証式を終えて、正式に第94代内閣総理大臣に就任した菅直人氏。思えば十数年前、「総理にしたい政治家」としての人気を小泉純一郎氏と2分した時代もあった菅氏。2001年に就任したの小泉首相以降、安倍氏、福田氏、麻生氏、鳩山氏と世襲サラブレット総理が5代も続き、考えてみれば今世紀初の叩き上げ総理の誕生だ。決してエリートコースを歩んできたわけではない自身の政治家人生を糧に、これまでにない「庶民派総理」をアピールするべく名付けたキャッチフレーズは「奇兵隊内閣」。なるほど閣僚の顔ぶれを見れば、サラリーマンや自営業出身の閣僚ばかりでうなづける比喩だが、でもちょっと待て!「奇兵隊」の本当の姿を知っているのか?

 「奇兵隊」を知らない人のためにここで説明すると、今話題の大河ドラマ「龍馬伝」の舞台である幕末、長州藩士・高杉晋作の発案によって結成された戦闘部隊で、農民や町民など身分にとらわれない形で組織された軍隊。士農工商すべてが世襲だったこの時代、革命的な組織だったわけだが、何故このような組織が生まれたかというと、この時期の長州藩は攘夷運動によって英、仏、蘭、米の列強四国相手に戦った下関戦争で多くの戦士を失い、加えて幕府による長州征伐の攻撃を受け、まさに満身創痍の状態で人材不足が甚だしい状態に陥っていたわけで、この「奇兵隊」は、いうなれば苦肉の策だったわけだ。奇兵隊の「奇兵」の意味は、武士のみの部隊である「正規兵」の反対語で、つまりは「奇兵」=非常勤といった意味合いの言葉。となれば、菅総理の名付けた「奇兵隊内閣」は、人材不足による苦肉の策で非常勤、ということになる。

 もうひとつ、奇兵隊出身の代表的な人物に山縣有朋(やまがたありとも)という人がいる。足軽という低い身分から身を起こしてこの奇兵隊に入隊し、明治政府では第3代・第9代の内閣総理大臣にまで昇りつめた人物だが、この山県は日本陸軍の基礎を築いた人物で、「国軍の父」とも称され、後の大東亜戦争における陸軍の暴走の道を作った人物だと言ってもいい。加えて、民主党が忌み嫌う官僚制度の確立にも尽力した人物でもあり、さらに、こちらも民主党が嫌う「政治と金」の部分でも、明治政府最初の汚職事件とも言われる「山城屋事件」においてもこの山縣有朋が深く関わっている。言ってみれば、民主党の目指す政治から見れば「悪の権化」ともいえる人物で、そんな人物が軍監という中核を担っていた組織が「奇兵隊」だ。

 菅新内閣の門出にケチをつけるつもりは毛頭ないが、本当の奇兵隊の姿を思えば、この「奇兵隊内閣」というネーミングは失敗だったのではないだろうか?


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下記、記事本文引用
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<菅首相>「奇兵隊内閣」…自ら命名
 記者会見に臨んだ菅首相は、自らを幕末の志士になぞらえ、新政権を「奇兵隊内閣」と名付けた。
 首相は、「菅政権を象徴するキーワードは」との問いに「私自身は草の根で生まれた政治家」と答えた。山口県が発祥のセントラル硝子(本社・東京都)に勤務していた父を持つ首相は、世襲政治家が続いた歴代首相との違いを強調するように「普通のサラリーマンの息子」とも述べた。
 さらに、長州藩士高杉晋作が結成した奇兵隊のエピソードを引用。武士だけでなく庶民も参加した点を挙げ「幅広い国民の中から出てきたわが党の国会議員が奇兵隊のような志で勇猛果敢に戦ってもらいたい」と話した。
 また、04年の代表辞任後に始めた四国八十八カ所巡礼に触れ「53番札所まで来たお遍路も続けたいが、しばらくは後にして、日本のため全力を挙げたい」と述べた。
 会見に出席した英インディペンデント紙のデイビッド・マックニール特派員は「『サラリーマンの息子』との発言が印象深かった。日本の首相は世襲が多く、どの外国人記者もこの発言は記事にするだろう」と語った

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100608-00000633-san-pol

by sakanoueno-kumo | 2010-06-09 01:04 | 政治 | Trackback(2) | Comments(4)  

Tracked from 平太郎独白録 親愛なるア.. at 2010-06-18 14:21
タイトル : 非松下村塾系・菅直人総理に清狂草堂塾の悲哀を見る
親愛なるアッティクスへ 菅 直人総理は山口県出身だったんですね、知りませんでした。 でも、これで山口県からは伊藤、山県、桂、寺内、田中、岸、佐藤、安倍に次いで9人目の総理大臣ですか。 戦後だけでも4人ですから、こうなると、単なる藩閥政治の賜とばかりもいえないでしょう。 ただ、菅さん以外のこれまでの総理大臣というのはすべて、吉田松陰以来の松下村塾系長州閥の延長線上にあるといってよく、(平太郎独白録 : 日本の中枢で現代も生き続ける長州閥:参照。)その意味では、菅さんは、初めてのまったく別系統...... more
Tracked from 平太郎独白録 親愛なるア.. at 2010-06-18 14:21
タイトル : 日本の中枢で現代も生き続ける長州閥
親愛なるアッティクスへ 以前、元総理大臣、岸信介について書かれた本を読んだことがあります。 今頃、なぜ、岸信介なのか?と言いますと、私が興味があったのは、岸とは実弟佐藤栄作の夫人を通しての義理の伯父に当たる、松岡洋右(国連脱退時の全権代表にして三国同盟の立役者。近衛内閣で外務大臣。)との関係を知りたかったからです。 二人は、満州国で「2キ3スケ」と言われた大物同士で、かつ同郷で親戚同士で有れば、当然、他者には入れないような濃厚な関係があったと思うのが普通でしょうが、佐藤と松岡の伝記には、ここ...... more
Commented by marquetry at 2010-06-10 12:16
ご無沙汰しております!
菅さんは、頭の良い人の様ですから、案外、奇兵隊内閣...をズバリ狙ってたかもよ〜。亀井さんにも印籠(郵政を今期中にしないと連立辞めるよ〜)突きつけられ、小沢派閥は党内でも別行動で選挙一色みたいですし...まさに、非常事態の非常勤内閣なのではないでしょうか?...と、感じる私でした。
Commented by sakanoueno-kumo at 2010-06-10 14:30
< marquetryさん。
幕末にはもうひとつ、「彰義隊」という軍隊があります。
大政奉還後、鳥羽・伏見の戦いで敗れた徳川軍は賊軍になってしまいますが、その後の徳川家の警護と江戸の町の治安を守るために結成された組織がこの「彰義隊」です。
しかしその中身はというと、幕府復権のために集まった「寄り合い所帯」で、旧幕臣のみならず諸藩藩士や博徒やヤクザまでも参加した、いわゆる「烏合の衆」でした。
旧自民党系から社会党系まで幅広く集まる民主党は、まさに「寄り合い所帯」。
どうしても幕末に例えたいなら「奇兵隊内閣」というよりも、「彰義隊内閣」と言った方が合っているかもしれません。

ちなみにこの「彰義隊」は、結成から3ヶ月足らずの上野戦争によって壊滅するんですけどね・・・。
参院選の結果によっては、その責任を問われて短命に終わる可能性は十分あり得る菅内閣は、まさに「彰義隊内閣」・・・と、感じる私でした(笑)。

Commented by marquetry at 2010-06-10 19:51
なるほど...その線は濃厚かもしれません...小沢さんがあっさり引き下がった当たり...どんな先を読んだのか?と気になってた所です。
Commented by sakanoueno-kumo at 2010-06-10 20:33
< marquetryさん。
小沢さんがおとなしく引き下がったのは、参院選の責任回避というのが本音かもしれませんね。
菅内閣の支持率は高いようですが、さてさていつまで続くか…。

ところで、このRESですが、初めて携帯からしてみました。
ちゃんと出来てるのかなぁ。

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