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江~姫たちの戦国~ 第8話「初めての父」

 お江たち三姉妹の新たな父、柴田勝家は、大永2年(1522年)、尾張国愛知郡上社村で尾張国守護斯波氏の流れをくむ柴田勝義の子として生まれたと伝わる。しかし、諸説あり定かではない。織田信長の父・織田信秀の家臣として仕え頭角を現し、信秀の没後は、嫡子の信長ではなくその弟の織田信行に家老として仕えた。やがて勝家は、信長を排除し信行を織田家後継者にしようと画策するも、弘治2年(1556年)8月、信長との戦いに敗れ、剃髪して降伏した。その後、信行が再び謀反を企てた際には、勝家はこれを信長に通報、信行は自刃に追いやられた。

 信行の死後、勝家は信長の家臣となる。しかし、一度は信長に刃を向けた身、最初は警戒され、主だった戦には参戦できない時期を過ごす。そんな中、与えられた少ないチャンスに勝家はすべて先鋒として武功をあげ、その勇猛さから次第に信長の信頼を得るところとなり、いつしか信長の天下統一に向けての片腕となっていった。そして朝倉氏滅亡後、信長麾下の佐々成政不破光治佐久間盛政前田利家らを率いて、長きにわたって越前を支配していた加賀一向一揆を平定。その功により、越前国北ノ庄(現在の福井県福井市)を与えられ、織田家中で最も多くの領土を有するようになる。能力重視の信長配下の中で、最も代表的なサクセスストーリーとして誰もが羽柴秀吉を思い浮かべるが、勝家とて決して平坦な道だったわけではなく、努力で掴んだ織田家筆頭家老の地位だった。

 柴田勝家といえば、“鬼柴田”と異名からも想像するように、武骨な武闘派の武将をイメージしがちだが、統治能力にも長けた人物だったようで、善政を敷き、領地をよく治めたといわれる。だからこそ、織田家で最も多くの領地を与えられたとも考えられているらしい。また、最初に刀狩をしたのは秀吉ではなく、勝家だったという説もあるとか。勝家は回収した刀を、新しい農具や釘などに代えていた、などという話も残っている。武勇においても、行政面においても、信長の天下統一に欠かせない人物だったようだ。

 信長の死後、勝家は明智光秀討伐に参戦できなかったこともあり、前話の清洲会議では羽柴秀吉にイニシアティブをとられ、織田家筆頭の地位を秀吉に奪われることとなる。一般に、それ以前から勝家と秀吉は性格が合わなかったともいわれ、小説などでは信長の生前から二人の不仲が描かれることが多い。しかし実際にはそれを裏付ける史料は残されていない。そもそも木下藤吉郎という名で活動していた秀吉が、天正元年(1573年)頃から名乗った“羽柴”という姓は、柴田勝家の“柴”と、もうひとりの重臣・丹羽長秀“羽”を一文字ずつもらったものだといわれている。少なくともこの頃はまだ、秀吉にとって勝家は大先輩にあたる人物で、尊敬する存在だったのではないだろうか。勝家にしても、まさか将来、名字の一文字を与えた人物と対峙することになろうとは、夢々思わなかったことだろう。そしてそれが、自身の最後の戦になろうとも・・・。

 そんな勝家のもとに嫁いだ、お市の方。前話の稿でも述べたとおり、この結婚は信長の三男・織田信孝の仲介だったという説や、近年では秀吉の仲介だったという説が有力になっているそうだが、結婚の理由については、どれも想像の域をでない。勝家にはこのとき正室はいなかった。お市が初めての正室だったという説もあるが、これも定かではない。正室はいなかったものの側室は複数いたという話もあるが、これも明確ではないようだ。武勇にも行政面にも優れた勝家だったが、そっち方面は不器用な男だったのだろうか。

 いずれにしても勝家にとっては60歳を過ぎてからの結婚。理由はどうあれ、彼にとって美貌で知れたお市とのこの結婚は、信長の横死の知らせ以上に「青天の霹靂」だったのではないかと想像する。彼は、二回り以上離れた新妻と3人の娘たちをたいそう大切にしたとか。勝家にとってお市は、“眩いほどの奥さん”だったのだろう。
 「多少なりとも、それがしに、想いを寄せてもらいたいのでございます。」
 このような台詞を勝家に吐かせたのは、いかにも女性脚本家らしいメロドラマの世界ではあるが、とはいえ、私がもし勝家の立場なら、天下の情勢など忘れて、妻と残り少ない余生を穏やかに過ごせたら・・・などと思ったかもしれない。60歳といえば、人生50年の当時でいえば明らかに余生。武勇で知れた勝家といえども、わずかでも、そんな想いが心をよぎっていたとしても、何ら不思議ではない。

 しかし、そんな想いを世情は許すはずがなかった。
 勝家とお市の穏やかな日々は、1年と続くことはなかった。


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by sakanoueno-kumo | 2011-02-28 02:32 | 江~姫たちの戦国~ | Trackback(7) | Comments(2)  

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Tracked from ぱるぷんて海の家 at 2011-02-28 11:32
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Tracked from strの気になるドラマ .. at 2011-03-03 21:31
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Commented by heitaroh at 2011-03-02 19:28
信長が秀吉と勝家を重用したのは二人には子がなかったから・・・という話を聞いたことがあります。
有り得る話でしょうね。

今、かなり、バタバタしていて、なかなか、ゆっくりコメントが出来ません。
また、落ち着きましたら、まとめて・・・(笑)。
Commented by sakanoueno-kumo at 2011-03-03 09:54
< heitarohさん。
>信長が秀吉と勝家を重用したのは二人には子がなかったから
ごめんなさい・・・その意味がよくわからないのですが、後継者がいないから、どれだけ力を与えても、織田家を脅かすことはない・・・ということでしょうか?
それとも、後継者がいないから、他の武将ほど自家の繁栄に執着がない・・・とか?
特に秀吉には、秀勝を養子にしてますから、秀吉がいくら力を持っても、のちの織田家は安泰・・・といったところだったのでしょうか。

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