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平清盛 第5話「海賊討伐」

 「おまえは人ではない・・・“もののけ”だ。」
と、ドラマでは、およそ人の気持ちがわからない天然系の悪女として描かれている待賢門院璋子。たしかにあれでは、鳥羽院が“もののけ”と罵りたくなるのも無理はない。ある意味、歴史を大きく動かしたといえる彼女。実際にはどんな女性だったのだろうか。

 鳥羽法皇(第74代天皇)の后妃として知られる待賢門院(藤原璋子)美福門院(藤原得子)。もちろん、他にも后妃はいたようだが、天皇の生母となったのはこの二人だけである。この時代、天皇に複数の皇后がいた場合、そのうちの一人を中宮と呼んだが、武家の正室と側室とは違って、中宮と皇后との間には待遇などの面で大差はなかったようである。待賢門院璋子は崇徳上皇(第75代天皇)、後白河法皇(第77代天皇)の生母で、美福門院得子は近衛天皇(第76代天皇)の生母となった。

 待賢門院璋子は、藤原北家の傍流である閑院流当主・藤原公実光子(隆方の娘)の間の末娘として、康和元年(1101年)にこの世に生を受けた。生母・光子は鳥羽院、堀河天皇(第73代天皇)の乳母をつとめた女性だったというが、その縁あってか、璋子は白河法皇(第72代天皇)の寵妃であった祇園女御の養女となったとされている。さらに璋子はその祇園女御の縁で、白河院にもことのほか可愛がられて育ったという。

 2人の愛情を受けて美しい女性に成長した璋子は、16歳となった永久5年(1117年)に白河院の孫である鳥羽帝の後宮に入内させられ、翌年、皇后の宣旨を受け中宮となる。当時、鳥羽帝は14歳。璋子は絶世の美女だったといわれ、14歳の鳥羽院にしてみれば、2歳年上の璋子の美しさに心を奪われるには、さして時間はいらなかっただろう。ただ、14歳と16歳のカップルで、現代で言えば、夫・中学2年生と妻・高校1年生。心身ともに夫婦となり得ていたかは微妙なところで、この翌年に生まれた第一皇子(崇徳帝)が、鳥羽帝のではないのでは・・・といった醜聞が飛び交うのも無理はなかった。しかも、その胤の主が、鳥羽帝の祖父であり璋子の養父でもある白河院だというのである。

 実際に白河院の璋子に対する溺愛ぶりは尋常ではなかったようで、たとえば『今鏡』によれば、幼いながらの類稀なる美貌の持ち主だった璋子を、白河院は毎夜懐に抱いて就寝した、と記されているらしい。また、白河院は適齢期となった璋子を、最初は関白・藤原忠実の嫡男・藤原忠通との縁組を進めようとするが、忠実の猛烈な反対により破談となり、やむなく孫の鳥羽院に入内させた、という逸話もある。この辺りの経緯は忠実の日記『殿暦』に詳細に記されているそうで、璋子が生んだ第一皇子が白河院の胤であるとの記述も、この日記に認められるそうである。真実は定かではないが、忠実・忠通はこの縁談話の破談によりしばらく中央政界から失脚させられており、そんなリスクを負ってまで破談に持ち込んだ事実を思えば、事実か否かはともかく白河院と璋子の不埒な噂というのは当時からあったのだろう。忠実はこの日記の中で璋子のことを、「奇怪不可思議の女御」と評している。

 そんな白河院と璋子の乱淫な噂を鳥羽帝も知っていたようで、崇徳帝のことを「叔父子」と呼んで冷遇したと伝えられる。実際にどちらの胤であったかは璋子しか知る由もないが、鳥羽帝がそう信じて疑わなかったところを見れば、鳥羽帝には男としての身に覚えがなかったのかもしれない。自身の嫁さんと祖父が密通していたなんて、男としてこの上ない屈辱だと思うが、にもかかわらず白河院、鳥羽帝、璋子の三人の関係は壊れることなく、三人仲良く連れ立って紀伊熊野参詣に赴くことも一度や二度ではなかったとか。現代の感覚では理解しがたい三角関係である。その後も璋子は鳥羽帝との間に五男二女も儲ける。白河院に逆らえなかったという理由もあっただろうが、璋子はよほど魅力的な女性だったのだろう。

 白河院と鳥羽院の二代を手玉に取った魔性の女・待賢門院璋子。ドラマでは、デリカシーの欠片もない天然キャラに描かれているが、男は往々にしてこの種の悪女に弱いものである(もちろん美人であることが大前提だが・・・笑)。これが計算された悪女なら男次第で変わりようもあるが、天然だから余計にタチが悪い。そんな“もののけ”・・・“奇怪不可思議の女御”に危うくハマりかけた男性は、現代でも結構いるのでは・・・? 


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by sakanoueno-kumo | 2012-02-06 20:48 | 平清盛 | Trackback(3) | Comments(2)  

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Commented by 吉垣季紗 at 2012-02-08 02:36 x
はじめまして、ブログ村から来ました。

待賢門院璋子の史料上の実像を知ると、
いっそう、大河が面白くなります!

それと、大河での璋子のキャラクターに対して、
やはり男性の方からの視点はまた、違うものなんですね。
(単に、「無垢で愚かな女」として描かれているようにしか……)

追伸:確か、忠実の娘、高陽院(泰子)も鳥羽院の皇后ですよね。
入内の経緯が経緯だけに、影が薄いですが。
Commented by sakanoueno-kumo at 2012-02-08 18:29
< 吉垣季紗さん

コメントありがとうございます。
実は偶然にも、私も昨日、ブログ村から貴ブログを拝読しておりました。
で、今日見たらコメントいただいてたのでビックリしています(驚)。

本ドラマでの待賢門院璋子のキャラは強烈ですね。
あと、嫉妬心にもがきながら璋子に翻弄される鳥羽上皇のドMぶりも(笑)。
高陽院は天皇の生母ではないので、物語の中で陰が薄いのは仕方がないですね。

今後ともよろしくお願いします。

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