平清盛 第18話「誕生、後白河帝」

 久寿2年(1155年)7月23日、近衛天皇(第76代天皇)が17歳の若さで崩御した。近衛帝は鳥羽法皇(第74代天皇)の第9皇子で、生母は皇后の美福門院得子。これまで何度も紹介してきたとおり、近衛帝の兄である崇徳上皇(第75代天皇)は、鳥羽院と中宮・待賢門院璋子との間に長男として生まれながら、鳥羽院は祖父の白河法皇(第72代天皇)と璋子が密通して出来たのが崇徳院だと信じて疑わず、鳥羽院は終生、崇徳院のことを「叔父子」と呼んで忌み嫌ったと伝えられる。そのことが理由だったかどうかはわからないが、鳥羽院政下で崇徳院は23歳の若さで天皇位を無理やり退位させられ、わずか3歳の近衛帝が誕生した。崇徳院にしてみれば、天皇が弟では将来の院政は不可能であり、崇徳院にとってこの譲位は大きな遺恨となった。

 その近衛帝が崩御した。近衛帝は病気がちで、藤原頼長の日記『台記』によれば、15歳の時には一時失明の危機に陥り、退位の意思を関白・藤原忠道に告げたという。17歳での早世で、しかも病気がちだったため皇子はおらず、近衛帝の崩御は、天皇家の内紛の序章となるには想像に難しくなかった。

 当然ながら、崇徳院はわが子の重仁親王を即位させ、自身が治天の君となって院政を行うことを期待した。嫡流という点でいえば、重仁親王の即位が最も相応しいといえた。一方で、鳥羽院亡き後も権勢を保ちたいと考えていた美福門院得子は、関白・藤原忠通と組んで、鳥羽院の第4皇子・雅仁親王の第1皇子・守仁親王(のちの第78代・二条天皇)を皇位につけようと画策し、鳥羽院もそれを支持していた。しかし、それには問題があった。存命中の父が天皇を経験していないにもかかわらず、その息子が皇位についた前例がなかったのである。そこで、にわかに浮上してきたのが雅仁親王だった。

 この頃の雅仁親王は政治的な問題には一切感心を示さず、当時流行していた歌謡・今様に耽溺する日々を送っていたという。兄である崇徳院は雅仁親王のことを「文にあらず、武にもあらず、能もなく、芸もなし」と酷評しており、また、雅仁親王の乳父だった信西(藤原通憲)でさえ、「和漢の間 比類少なき暗主なり」と、こき下ろしている。当時の朝廷内では、誰もが雅仁親王のことを「帝の器にあらず」と考えていた。そんな雅仁親王に白羽の矢が立ったのは、何としても重仁親王の即位を回避したい者たちの政治的な思惑から、いったん雅仁親王に即位させ、そのうえで守仁親王に譲位させるという、いわば中継ぎ投手的な役割での即位だった。こうして、本人さえなるはずがないと思っていた天皇、第77代・後白河天皇が誕生したのである。この皇位継承により、崇徳院が院政を行う望みは完全に絶たれたに等しかった。

 この重要な時期に、内大臣・藤原頼長が妻の服喪のため朝廷に出仕していなかったのはドラマのとおりで、皇位継承を決める王者議定にも参加していなかった。常に正論をもって臨んだ頼長は重仁親王を推していた。守仁親王を推していた兄・忠道とは対立関係にあり、一説には、近衛帝の死は頼長が呪詛したためだという噂を立てられ、職務を停止されて事実上の失脚状態となっていたともいわれる。厳しい処罰を伴う頼長の厳格な政治姿勢は、多くの敵を作り、反頼長組織を生んでいた。政治とは、正論ばかりでは行えないというのは、今も昔も変わらないようだ。

 政権から締め出された崇徳院と頼長が接近するのは時間の問題だった。


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by sakanoueno-kumo | 2012-05-07 01:46 | 平清盛 | Comments(2)  

Commented by SPIRIT(スピリット) at 2012-05-07 22:04 x
『腹黒く、よろづにきわどき人』と評された頼長に敵がおおかったのは確かでしょうね。
近衛天皇の病も頼長の調伏という噂があるほどでしたし。

古くからある寺社の反感をかったものは長続きしなかったようですね。
頼長もそうですし、清盛もまた・・。
Commented by sakanoueno-kumo at 2012-05-08 21:33
< SPIRIT(スピリット)さん

私は嫌いじゃないですけどね・・・頼長のキャラ(笑)。
たぶん、かなりIQの高い男だったのでしょうが、融通がきかないため結果的に多くの敵を作ってしまったところなどを見れば、本当の意味で賢い男ではなかったのかもしれませんね。
所詮は官僚で、政治家ではなかったのでしょう。
その意味では、清盛のほうがよほどずる賢く、政治家だったのでしょう。
ドラマでは悪役となっている頼長ですが、実は不器用な男だったのかもしれませんね。

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