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バドミントン無気力試合に見る、1次リーグ+決勝トーナメント方式の考察。

ロンドンオリンピックのバドミントン女子ダブルスで決勝トーナメント進出を決めたはずの中国、韓国、インドネシアの4ペアが、「無気力試合を行った」として失格処分となり、連日話題になっています。
無気力試合=故意に試合で負けようとした、ということですね。
無気力試合を行った理由は、決勝での組み合わせが有利になるための作戦だったとか。
詳しくいえば、決勝トーナメントでは予選リーグ1位と2位があたる仕組みになっているため、通常であれば予選を1位で通過した方が決勝で楽な相手と対戦できるはずですが、先に順位が決まった別の予選リーグの結果次第では、1位で通過するより2位で上がるほうが楽だったりする場合もあるわけです。
今回の場合も、たまたま優勝候補と目されるペアが別の予選リーグで2位通過してしまったことにより、後発のペアがそれらと当たらないため、あえて2位通過を狙ったというものでした。
つまり平たく言えば、勝つために負けようとしたわけです。

この行為に世間や有識者からの風当たりは厳しいようで、「スポーツマンシップに反する」とか「オリンピックを冒涜している」などの声が後をたたず、事態を重く見た世界バドミントン連盟は、該当する選手を失格処分としました。
たしかに試合の映像を見れば、サーブを故意にネットにぶつけたり、わざとアウトにしたりといった酷い内容で、見ていて気持ちのいいものではありませんでしたね。
でも、私は彼女たちの作戦は当然の判断だと思います。
失格になった4ペアは、いずれも既に1次リーグ突破が決まっていました。
ここで勝っても負けても決勝に進めるのなら、有利な道を選択するのは当然でしょう。
悪いのは彼女たちではなく、この1次リーグ+決勝トーナメントという方式自体に問題があるのではないでしょうか?

そもそも、スポーツの世界で似たようなことは当たり前のようにあります。
たとえば陸上競技でいえば、決勝を見据えて体力温存のために予選を流すのは当然の行為で、ウサイン・ボルト選手が1次予選から世界記録並の走りを見せるなんてことはあり得ません。
予選は勝つためのものではなく、決勝に進むためのものですから。
あれは「無気力試合」ではないんですか?

先日、1次リーグ2位通過で決勝進出を決めた日本女子サッカー代表「なでしこジャパン」も、1次リーグ最終戦の南アフリカ戦は「引き分け狙い」だったと佐々木則夫監督が記者会見で述べていましたよね。
決勝トーナメント初戦での長距離移動を避けるためだったとか。
あれなんかも、見方によれば「無気力試合」なんじゃないんですか?
だって、勝ちに行ってないんですから。

こうして見ても、予選というのは決勝に進むための戦いであり、その予選通過を確実にした場合、次は決勝をどう有利に戦うかを考えるのは、当たり前の戦略です。
だいいち、「故意に負けた」なんて、どうやって証明できるのでしょう?
今回の場合、対戦した両チームとも「負け狙い」だったため、あのようなあからさまな酷い試合となってしまいましたが、仮に片方だけが「負け狙い」だったら、無気力を悟られることなく上手く負けられたんじゃないでしょうか?
その場合、失格処分にはならない?
それっておかしくないですか?

そもそも1次リーグ+決勝トーナメントの方式は、このような事態が起こりうる制度です。
それを防ごうと思うのなら、すべてトーナメントで行うべきでしょう。
1度負けたらそれで終わり、実に単純明快でわかりやすく、よほどの実力差がない限り手を抜くことはできません。
高校野球と同じですね。
ただ、トーナメントの場合は一発勝負ですから、往々にして番狂わせを生みます。
その点、リーグ戦は総当り方式ですから、ほぼ実力で決まるといっていいでしょう。
そこで考案されたのが、この1次リーグ+決勝トーナメントの方式だと思うんですね。
まずは1次リーグで実力者を選び、その選ばれた実力者のみで真剣勝負のトーナメントを戦う。
実によく出来た方式だと思いますが、一方でこの度のような戦略を生むのも事実です。
いずれの方式にも一長一短があって、これがベストといったものはないんですよね。
今回焦点となった選手たちは、現行の制度のなかでどう有利に戦うかを考えた上での行為だったわけで、それで失格処分は、あまりに気の毒というほかありません。

いずれにせよ、タイム制で引き分けがあるサッカーなどの競技と違って、バドミントンのような時間制限なしで必ず勝敗が決するラリーポイント制の競技には、この制度は向いてなかったのかもしれませんね。
4年後のリオデジャネイロ大会では改善を望みます。


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by sakanoueno-kumo | 2012-08-04 00:06 | 他スポーツ | Trackback | Comments(2)  

Commented by しばやん at 2012-08-05 07:49 x
なるほど、双方とも「負け狙い」の試合になったのであんな「醜い試合」になってしまったのですね。

「悪いのは彼女たちではなく、この1次リーグ+決勝トーナメントという方式自体に問題」「バドミントンのような時間制限なしで必ず勝敗が決するラリーポイント制の競技には、この制度は向いてなかった」という指摘はその通りだと思います。

せめて、次の相手がどこになるかわからないように、決勝トーナメントに進むチームが決定後に組み合わせを抽選にするだけで、こんな醜い試合はなくなるはずですね。
Commented by sakanoueno-kumo at 2012-08-06 03:47
< しばやんさん

おっしゃるとおりだと思います。
ただ、そうなると1位と1位、2位と2位が当たる可能性が出てくるので、結局トーナメントと変わらないことになります。
この方式の趣旨は、できるだけ実力者同士が早い段階で当たることのないように考えられたシステムだと思いますので・・・。
でも、結局この度のように、実力者が2位通過してしまったら意味がないんですけどね。

サッカーのワールドカップでは、このような無気力試合をできるだけ防ぐために、同時刻に別会場で試合を進めるという方法をとっていますが、それとて完全ではないですしね。

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