八重の桜 第16話「遠ざかる背中」 ~徳川慶喜は二枚舌?~
安政5年(1858年)、第14代将軍が一橋慶喜のライバルだった徳川慶福(家茂)に決まると、ときの人々はこのような川柳を詠んで嘲弄したといいます。その家茂が死に、いよいよ慶喜が徳川宗家の相続者となると、今度は次のような狂歌が作られました。
「大木をばたおしてかけし一橋 渡るもこわき徳川のすえ」
「二つ箸持つとも喰えぬ世の中に 一ツ橋でも喰えなかるらん」
この時期、すでに庶民は幕府の瓦解を予見しはじめていたのでしょうか。
慶喜は徳川本家相続を承知したとき、自分の意のままに政治を改革することを条件とし、これを老中らに承認させます。そして慶応2年(1866年)9月には、人材の登用、賞罰の厳正、冗費の節約、陸海軍の充実、外交の刷新、貨幣・商法制度の改革など、8箇条の施政方針を示し、その線に沿って改革が行われますが、まず当面解決しなければならない問題は、第二次長州征伐をどう処理するかということでした。
慶喜は当初、自ら長州征伐に出陣し、あくまで武力によって長州藩を屈服させるべく強硬な態度で臨みました。出陣を前に旗本を集めて、「毛利大膳父子は君子の仇である、このたび出陣する以上、たとへ千騎が一騎になろうとも、山口城に攻め入り、勝敗を決する覚悟でいる。」と、勇ましく述べています。しかし、いよいよ出陣しようとしたときに、小倉落城の報が伝わり、戦局が絶望的となっていることを知ると、たちまち態度を軟化させて自身の出陣を取りやめ、朝廷にはたらきかけて、将軍の死を理由に休戦命令を出させることに成功します。
続いて慶喜は、軍艦奉行・勝海舟を広島へ派遣して、長州藩との休戦交渉に当たらせます。もともと慶喜は勝のことを快く思っていませんでしたが、この局面で長州藩と口がきけ、また薩摩藩との対立も緩和させ、しかも幕府の立場を守る交渉ができる人物は、勝以外にいなかったでしょう。勝は厳島で、長州藩代表の広沢兵助(真臣)、井上聞多(馨)らと会談し、幕府軍が撤退するとき、長州藩が追撃しないことで協定を成立させます。さすがは勝海舟といったところですが、実はもう一方で、慶喜は朝廷にも同時にはたらきかけ、休戦から更に進んだ停戦の勅命の引出しに成功します。勝の派遣は、いわば時間稼ぎに利用されたかたちになってしまいました。しかも、結果的に交渉の席についた長州藩にも不義理をはたらくことになってしまい、これに怒った勝は、辞表を提出して江戸へ帰ってしまいます。こうして、第二次長州征伐は、なおいくつかの問題を残しながら、一応の決着をみたのです。
二点三点したこれらの行動から、「二心殿」「二枚舌」などと揶揄され、後世にあまり人気がない慶喜ですが、果たして本当に「二枚舌」だったのでしょうか? たとえば当初の勇ましい態度にしても、事実上幕府軍の総裁という立場で、兵の士気を高めるためには必要な態度だったでしょうし、一方で、戦局を冷静に判断して引き際を模索するのもまた、立場上、必要なことだったのではないでしょうか。長州藩との交渉にしても、結果的に勝を裏切るかたちになってしまったものの、もし勝の交渉が不成功に終わったときのことを考え、次の手を準備するのもまた、総裁という立場上、当然の行動だったように思います。ただ、あまりにも頭が良すぎて、その思考のスピードに周りの者がついていけなかった・・・。そんなところだったんじゃないでしょうか?
「太平の世にあぐらをかいた幕府など、一度、壊れた方がよいのだ。幕府を鍛え直さねばならぬ。カビの生えた軍制から職制の大元に至るまで、全てを作り直す。それが将軍の勤めだ。」
ドラマ中、将軍職継承宣言をした小泉孝太郎さん演じるところの徳川慶喜が言った台詞ですが、ちょっと待って!!!・・・どっかで聞いたことある台詞ですよね!
「自民党をぶっ潰す!」
そうです・・・小泉孝太郎さんの実父・小泉純一郎元首相の掲げた「聖域なき構造改革」のキャッチフレーズですね。この台詞を聞いて思わず吹き出してしまったひと、多かったんじゃないでしょうか? どう考えても、この台詞は作者の意図的にしか思えません(笑)。ぜったい小泉慶喜にこの台詞を言わせたかったのでしょうね(笑)。でも、だったら、せっかくだからこう言わせたほうが良かったんじゃないでしょうか?
「幕府をぶっ潰す!」
実際の慶喜に、そこまでの気概があったかどうかはわかりませんけどね。
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by sakanoueno-kumo | 2013-04-22 19:29 | 八重の桜 | Trackback(3) | Comments(8)
第16回の視聴率は、前回の14.2%より少し下がって、13.8%でした。久々の大河レビューです(汗)やっと黒木メイサさん(中野竹子役)、登場♪(^^)薙刀の勝負、八重、彼...... more
特に女性は会津の義を重んずる男たちが大好きなようです
逆に云えばこれは小泉慶喜がハマっているからなんですね
いやー、歴史好きには小泉慶喜はツボです
能面のような顔をして次々に先手を打っていく
悪評なんか気にしない
今回は佐川官兵衛を見下ろすシーンがありましたが「おまえほ
んとにバカだなぁ」と蔑むような視線が慶喜らしい
>幕府をぶっ潰す!
脚本家もこのセリフ言わせたかったんだろうけど、やってしまたら日本中を爆笑の渦に巻き込むか凍りつかせることになったでしょうね
会津からはもう恨み骨髄って感じ!?
私はブログ主さんと同じ見解です。
【参照】
http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=bloodcrow2012&articleId=11488358930&frm_src=article_articleList
http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=bloodcrow2012&articleId=11489814155&frm_src=article_articleList
http://m.ameba.jp/m/blogArticle.do?unm=bloodcrow2012&articleId=11512974809&frm_src=article_articleList
ホント、小泉慶喜はヒットですよね。
あんな顔ですもん。
ただ単に美男子というだけでなく、貴公子という言葉がピッタリというか・・・。
やっぱ、育ちの良さでしょうか・・・。
今後、小泉慶喜を超える慶喜は難しいでしょうね。
コメントありがとうございます。
慶喜の扱いは、倒幕側から描いた物語でも、幕府側から描いた物語でも、どちらの視点からでもヒール役になっちゃうんですよね。
実に気の毒な気がしてなりません。
ご紹介いただいた参照URLは、よくわからないのですが?
私は演技以前に顔だけでほーっと思いましたよ。
慶喜について言えば私は幕末最大の功労者だと思っていますが、ただ、今回の大河ドラマのような一面はあったのかもしれませんね。
元々が、貴公子なんですから。
・・・・・
4月27日午前から、鳩子の結婚式があるホテルに行ったが、そのホテルに怒りが爆発し、テンションはまた上がり、その怒りを鎮めるのに、大変だった。
六本木ヒルズ内にあるグランド ハイアット 東京の宴会場の建物は、危険極まりない建物である。
火事が起こった場合、宴会場から逃げるほとんどの人が大パニックになり、死傷者が出る!
危険極まり無く、欠陥建物だ!
設計者(設計事務所)も、設計思想(倫理)が問われる!と思った。
このようなことが世の中にまかり通るのも、頭に来る!のだ。
その後、近くの麻布消防署、テレビ朝日、当のグランド ハイアット 東京 、企画・設計し、運営している森ビルに対して、メールを送信した。
現代においては、既得権者の機構をぶっ壊すには、ブログ及びメールしか無い気がします。
レスがたいへん遅くなって申し訳ありません。
コメントいただいてたことはスマホで確認していたのですが、なかなかゆっくりPCに向かう時間がとれなくて・・・。
小泉慶喜はホントはまり役ですね。
顔だけでばく、貴公子が貴公子を演じてるわけですから、当然かもしれません。
私も慶喜は維新最大の功労者だと思いますが、ただ、英明な貴公子で有るがゆえの自尊心の高さは持ちあわせていたかもしれませんね。
コメントありがとうございます。
ですが、本稿とはとくに関係のないお話で、しかもご指摘の場所には行ったことがなく、貴兄のお怒りに対して肯定も否定もできる知識も材料も持っておりません。
申し訳ありません。