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八重の桜 第24話「二本松少年隊の悲劇」 ~武士の本懐と玉砕戦~

 白河口を占領した新政府軍の軍事参謀・大村益次郎は、会津を討つ前に、まず奥羽越列藩同盟の弱小諸藩を落とす作戦に出ます。慶応4年(1868年)6月には、常陸平潟から北上した新政府軍が棚倉藩を陥落させ、つづいて泉藩、湯長谷藩を制圧し、磐城平藩を攻めました。磐城平藩の前半主は、老中職を務めたこともある安藤信正でした。磐城平城には仙台藩兵なども駐屯していましたが、7月13日の攻防戦で同盟軍は敗北を喫し、磐城平城は落城します。

 「会津は根本なり、仙台、米澤のごときは枝葉なり、枝を刈りて根を残す、ゆえに従って滅ぼせば従って起る、早く根本を絶たば枝葉随って落ちん」
 とは、大総督府参謀の板垣退助の言葉ですが、まさしく、大村の立てた作戦は、枝葉を刈って根本を枯らすというものでした。そしてその作戦はみごとに功を奏し、磐城平城城が落城すると、奥羽越列藩同盟の結束が音を立てて崩れはじめます。7月初旬に秋田藩が同盟を離脱すると、弘前藩、新庄藩、守山藩、三春藩らも次々に降伏。同盟は瓦解の一途をたどっていきます。東北がひとつになったこの同盟でしたが、必ずしも鉄の意志で結束していたわけではなかったんですね。

 7月29日、降伏した三春藩は新政府軍の先鋒隊となり、二本松藩に攻め込みます。二本松城が敵の手に落ちれば、須賀川周辺に駐屯していた仙台藩兵は前後の敵に挟まれることになります。そうなると仙台に帰れなくなるのではないか・・・との動揺が藩兵たちのなかで起こり、戦場からの離脱が始まりました。仙台藩は列藩同盟の盟主。本来であれば、二本松に敵が迫れば応援に向かわねばならないのに、盟主が最初の逃げ出したのです。同盟の瓦解は決定的でした。

 援軍を失った二本松藩は孤立無援の戦いを余儀なくされます。二本松藩兵1000人に対して新政府軍約7000人と、兵力の差は歴然としており、新政府軍に下った諸藩のように、降伏の道を選んでも仕方がない状況でしたが、家老の丹羽一学(富穀)「死を賭して信義を守るは武士の本懐」徹底抗戦を主張したため、二本松藩は新政府軍に立ち向かいます。しかしこのとき、二本松藩の主力兵は白川口方面へ出陣しており、城内にはわずかな手勢と老人兵、そして戦場に出るにはまだ早い少年たちしかいませんでした。そこで急遽結成されたのが、弱冠21歳の砲術師範・木村銃太郎を隊長とする二本松少年隊でした。

 二本松少年隊という名称は後年に付けられたもので、新政府軍に迫られ崩落寸前の城下で、出陣を志願した13歳から17歳までの少年たちで急遽結成された部隊に、名称などあるはずがありませんでした。数えの13歳といえば、今で言えば小学5・6年生ぐらいで、後年の神風特攻隊に繰り出された少年兵より遥かに幼い子どもたちです。丹羽一学が選んだ「武士の本懐」の道は、そんな子供に銃を持たせる道でした。

 少年たちの多くは木村銃太郎の門下生でした。出陣前夜、少年たちは武士として出陣できる喜びに、まるで「修学旅行のようなはしゃぎようだった」と、生き残った隊士が語っています。幼い頃から武士としての心得を叩きこまれてはいたでしょうが、それでも所詮は幼い子どもたち。この後自分たちに襲いかかる事態を、どれほど想像できていたでしょうね。出陣した62人の少年たちのなかで、戦死したのは16人。銃弾に倒れた者もいれば、斬り殺された者もいました。ドラマでスポットが当たっていた13歳の成田才次郎は、長州藩の小隊長・白井小四郎をみごとに刺し殺す功をあげますが、その後長州藩兵に撃ち殺されます。このとき白井は、「自身の油断が招いたゆえの不覚」と、自身を刺した少年の勇敢さをたたえ「殺してはならん」と部下たちに言ったそうですが、隊長を討たれた兵たちとしてはそれを見過ごすわけにはいかず、その場で銃殺されたと言います。撃つ方もまた辛かったことでしょう。

 少年たちの奮闘も虚しく、二本松城はわずか1日で落城します。丹羽一学ら重臣は、城主・丹羽長国を米沢に逃れさせたあと城に火を放ち、家臣ともども自刃して果てます。壮絶な最期でした。

 多くの東北諸藩が新政府軍に寝返っていくなかで、最後まで奥羽越列藩同盟の信義を貫き、凄まじい一藩総玉砕戦で散っていった二本松藩兵。彼らは後世に武士の鏡であるかのように美談として語られます。一方で、予科練などに10代の少年が志願し、特攻隊などに送り込まれた一億総玉砕戦は、史上もっとも愚かな戦争として後世に裁かれています。私には、その違いがよくわかりません。


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by sakanoueno-kumo | 2013-06-17 20:25 | 八重の桜 | Trackback | Comments(0)  

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