司馬遼太郎記念館をたずねて。 その2
十数年越しの希望だった司馬遼太郎記念館を訪れたこの日、せっかく来たのだから、なにか記念になるものを買って帰ろうと、グッズ売場であれこれ見てたのですが、どれも結構いい値段するんですよ。
文庫本用のブックカバーなんて5000円もするし、ペンケースも4000円以上して、さすがにちょっと手が出ませんでした。
かといって、ストラップや絵葉書など、安いからといって使わないものを買っても仕方がないし・・・で、結局購入したのがこれです。
これも3200円もしたので、決して安い買い物ではありませんが、わたしはこういうところに来ると、必ず何か記念品を買って帰りたくなる性分でして、グッズ屋さんの思うつぼの客です。
司馬氏自筆とうたっていましたが、名前はそうでしょうけど、イラストもそうなんでしょうか・・・?
このイラストは、アイルランドの妖精だそうです。
司馬氏とアイルランドといえば、『街道を行く−愛蘭土紀行』が有名ですね。
あと、本を一冊買いました。
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いまさら紹介するまでもないでしょうが、司馬氏が小学校6年生の国語の教科書向けに書き下ろした『二十一世紀に生きる君たちへ』です。
実は、この本を買うのはこの度が4度目になります。
1度目は自分自身のために、2度目は、いま大学生の息子が小学校を卒業するときの贈り物として、3度目は、今年高校を受験する甥っ子が小学校を卒業するときの贈り物としてでした。
そして、今年3月には、わが娘が小学校を卒業します。
たぶん、この度が最後の購入になるでしょうね(って、いつの日か孫に贈ってるかもしれませんが・・・苦笑)。
小学生向けに書かれたエッセイですが、わたしはこの無駄のない文章が大好きなんですね。
人間は自分で生きているのではなく、大きな存在によって生かされている・・・ということ。
人間とは自然の一部にすぎない・・・ということ。
自己を確立するためには、何をしなければならないか。
そして、わたしがもっとも好きな言葉は、「やさしさ」は、人の持つ本能ではない。だから、わたしたちは訓練をしてそれを身につけねばならない・・・という一文。
わたしは、はじめてこの一文を読んだとき、目からウロコが落ちました。
そうか、生まれつき優しい人間なんていないんだ・・・と。
言いかえれば、訓練すれば、誰でもやさしくなれるんだ・・・と。
わたしは、この一文読んでほしくて、これまで子どもたちにこの本を贈ってきました。
どこまでその思いが伝わっているかはわかりませんが、心の片隅に少しでも響いてくれれば・・・という思いです。
わたしは、このエッセイを何度読み返しても、目頭が熱くなります。
名文中の名文だと思います。
この本には、もうひとつ『洪庵のたいまつ』という作品も収録されています。
こちらも小学生向けに書かれた随筆で、緒方洪庵を題材にした一編です。
世のために尽くした人の一生ほど、美しいものはない・・・という一文から始まるこのエッセイは、緒方洪庵という人の、私利私欲を捨て、人のために生きた生涯を紹介したものです。
幕末きっての蘭学者だった彼が、自分の恩師たちから引き継いだたいまつの火を、弟子たち一人ひとりに移し続け、やがてその火はそれぞれの分野であかあかと輝き、日本の近代を照らす大きな明かりとなった・・・と。
そしてそのたいまつの火は、現代のわたしたちにも受け継がれている・・・ということですね。
これもまた名文です。
司馬遼太郎記念館を出て歩いて10分ほどのところにある中小阪公園というところに、『二十一世紀に生きる君たちへ』の一文を抜粋した文学碑がありました。
まるで、二十一世紀にわが国で起きる、科学・技術が洪水のように人を飲み込んでしまった事故を予見しているかのような一文ですよね。
ほかにも、同作のなかのこの一文に関連した氏の言葉を部分的に抜粋して紹介します。
人間は・・・・繰り返すようだが・・・・自然によって生かされてきた。古代でも中世でも自然こそ神々であるとした。
このことは、少しも誤っていないのである。
歴史の中の人々は、自然をおそれ、その力をあがめ、自分たちの上にあるものとして身をつつしんできた。
この態度は、近代や現代に入って少しゆらいだ。
人間こそ、いちばんえらい存在だ。という、思い上がった考えが頭をもたげた。
20世紀という現代は、ある意味では、自然へのおそれがうすくなった時代といってもいい。
現役の政治家さんの中には、司馬氏を崇拝すると公言している先生方がたくさんおられます。
その司馬氏が、二十一世紀に生きる私たちに向けて何を伝えたかったのか・・・たしか安倍晋三さんも司馬氏のファンでしたよね。
今だからこそ、もう一度この文章を読み返してみるべきではないでしょうか・・・。
さて、司馬遼太郎記念館訪問の備忘録のつもりが、話が思わぬ方向に向かっちゃいましたね。
とりとめがなくなってきたので、このへんで終わりにします。
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by sakanoueno-kumo | 2014-02-06 23:21 | 大阪の史跡・観光 | Trackback | Comments(2)
拙ブログの8月20日付け記事で
「司馬遼太郎と福井の寿司屋」という話を書きました。
司馬の器の大きさが感じられる話だと思います。
ご高覧いただければ光栄です。