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軍師官兵衛 第46話「家康動く」 ~石田三成襲撃事件~

 豊臣秀吉の死後、天下の政は五大老五奉行の合議制で行われます。今で言う内閣のようなものですね。しかし、実質的には、莫大な領地と高い官位を持つ二人の長老、徳川家康前田利家が権勢をふるい、そこに五奉行の筆頭的立場である石田三成が加わった三者が実権を握って進められます。ただ、そのトップである内閣総理大臣的立場の者がおらず、さらに、家康と三成はそもそも秀吉の生前から折り合いが悪かったため、そんな不安定な内閣が上手く機能するはずがありません。案の定、秀吉の死から半年も経たないうちに、早くも体制は崩れはじめます。

 そのキッカケを作ったのは徳川家康。秀吉が死ぬやいなや家康は、秀吉の生前に禁止と定められた大名間の婚姻を無断ですすめ、着々と味方づくりを始めます。そんな挑発ともとれるあからさまな専横行為に、三成ら反家康勢は大いに憤慨し、前田利家のもとに集結。情勢は一触即発のムードとなります。しかし、このときは利家と家康の間で和解が成立し、なんとか衝突は避けられました。このとき利家を説得したのが、ほかならぬ黒田官兵衛だったといいます。このあたり、『黒田家譜』によると、

「奉行衆利家卿をすゝめて、内府をほろぼし奉らんとする謀、別の儀にあらず。今天下の両雄は、内府と利家なり。利家を大将として内府を討たんとす。内府亡び給はゞ天下にこはき人は利家一人なり。利家は老人にて病者なれば、やがて逝去し給べし。」

 と説いた上で、

「今の世に内府をほろぼさんとする事は、蟷螂が車を遮るに異ならず。今利家卿等が邪謀の欺かれ給はん事、謀の拙き所なり。いそぎ利家卿内府と和睦し給ふべき由をいさめ給へ。」

 と諌めています。ほぼドラマのとおりですね。ただ、ドラマでは官兵衛が利家を直接説得していましたが、『黒田家譜』の記述では、利家の嫡男・前田利長に進言させたとあります。いずれにせよ、『黒田家譜』の記述が実話かどうかは定かではありませんが。

 和解成立からわずか1か月後の慶長4年(1599年)3月3日、利家が病没します。利家の死によって、それまでなんとか保たれていた均衡が一気に崩れ、予てから三成憎しで団結していた武断派の加藤清正、福島正則、藤堂高虎、黒田長政、浅野幸長、細川忠興、脇坂安治の七将が暴発。大坂の前田屋敷に滞在していた石田三成を殺害すべく襲撃します。しかし、この動きを事前に察知した三成は、佐竹義宣の協力を得て屋敷を逃げ出し、伏見城に逃げ込みます。この騒動を収拾したのが、徳川家康でした。家康は武断派を説得して鉾を収めさせ、襲撃した武断派が三成の身柄引き渡しを要求したため、三成を蟄居にすることで手を打たせます。そして閏3月10日、三成は家康の次男・結城秀康の警護のもと佐和山城に戻り、謹慎生活となりました。こうして三成は政治の表舞台から遠のくことになります。

 この経緯のなかでの有名な逸話として、武断派の襲撃を受けた三成が、敵である家康のもとに助けを求めて単身乗り込み、難を逃れたという話があります。このエピソードから、三成が単に小賢しいだけのインテリ官僚ではなく、豪胆な一面を持った武将だったという印象につながっています。このたびのドラマでも、この逸話を採っていましたね。石田三成という人物を描く上で欠かせないエピソードといえますが、残念ながらこの逸話は、最近では否定的な見方が強いようです。というのも、この説の典拠となっている史料は明治以降のもので、それ以前に成立した史料には、三成が家康屋敷に赴いたことを示すものはないからだとか。三成ファンの人にとっては少々ガッカリな事実だと思いますが、ただ、まったく荒唐無稽な逸話かといえば、そうとも言えないですよね。徳川に弓引いた「天下の大悪人」として蔑まれていた江戸期の史料には、三成を称える史料など存在するはずがありません。しかし、伝承レベルで巷に残っていた逸話が、三成が再評価された明治になって拾い記された・・・と考えられなくもないかなぁ・・・と。多少、そうあってほしいという願望が込められていますが・・・。

 この事件を収拾したことにより徳川家康はその影響力を拡大し、一方で石田三成は一時失脚します。一説には、すべて家康の描いたシナリオ、家康自身がこの事件の黒幕だった・・・なんて俗説もありますが、いかがなものでしょう。いずれにせよ、この武断派と吏僚派の対立が家康にとって有利にはたらいたことは間違いありません。これ以降、豊臣政権の政務は家康が一手に握ることとなります。

 そして官兵衛は・・・なるほど、そういう物語の展開で描いていくんですね。次週以降を楽しみにしたいと思います。


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by sakanoueno-kumo | 2014-11-17 19:57 | 軍師官兵衛 | Trackback(1) | Comments(2)  

Tracked from ショコラの日記帳・別館 at 2014-11-18 20:03
タイトル : 【軍師官兵衛】第46回感想と視聴率「家康動く」&最終回情報
副題「家康動く」 新聞ラテ「家康動く~後継争い激化!勝者は誰か?」 第46回の関... more
Commented by heitaroh at 2014-11-17 21:51
私はむしろ、糸の離縁はこういう展開で行くんだなというのに苦笑。
まあ、自己都合で離縁というのは今の時代、理解を得られないでしょうね。
Commented by sakanoueno-kumo at 2014-11-18 20:38
< heitarohさん

たしかに、自分から身を引きそうな感じですね。
結婚というものの持つ意味が現代とまったく違うわけですから、そのまま描いてしまうとドラマにならないということでしょうね。

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