花燃ゆ 第27話「妻のたたかい」 ~禁門の変(蛤御門の変) その2~

 元治元年(1864年)7月19日、長州軍は京への進撃を開始します。まず、福原越後、益田右衛門介、国司信濃の3人が率いる隊が三方から出撃しますが、対する会津藩兵桑名藩兵の守りは固く、行く手を遮られます。そんな戦況のなか、来島又兵衛率いる隊が強引に突っ込んで御所の中立売御門を突破。蛤御門に殺到しました。さすがは武勇の誉れ高き又兵衛、単に勇ましいだけじゃなく、よほどの実戦上手だったことがわかります。

 又兵衛の部隊は門扉を突き破って突入し、大激戦を演じます。又兵衛自身は風折烏帽子具足、陣羽織を身にまとい、その出で立ちは元亀・天正の戦国武将さながらだったといいます。そんな又兵衛の奮闘もあって、一時は長州軍が押しまくる展開となりましたが、薩摩藩兵が援軍に駆けつけると形勢は逆転します。その薩摩藩兵の指揮官は、西郷吉之助でした。西郷は馬上の又兵衛さえ討てば長州軍は撹乱すると見、配下の川路利良に狙撃を命じました。しばらくして又兵衛は胸を撃ち抜かれて落馬。死を悟った又兵衛は、自ら槍で喉を突いて自刃します。享年48歳。西郷のねらいどおり、この長州軍きっての豪傑の死から、長州軍の潰走が始まりました。

 久坂玄瑞真木和泉が率いる約500の部隊が御所に着いたときには、すでに又兵衛は討死していました。2日前の軍議で又兵衛と衝突していた玄瑞は、この惨状に及んでもなお朝廷への嘆願をあきらめておらず、前関白の鷹司輔煕屋敷に入ってへの取り次ぎをすがりますが、輔煕はこれを拒絶。このときすでに玄瑞の部隊は包囲されており、万策尽きた玄瑞は、共に行動していた同じ松下村塾同門の寺島忠三郎と刺し違えて自刃します。玄瑞は自刃する直前、同じく腹を斬ろうとしていた同門の入江九一を制止し、急ぎ帰国して藩主父子の上洛を阻止するよう依頼しますが、不運にもその九一も、直後に鷹司屋敷の裏門で待ち伏せていた福井藩兵に槍で顔を突かれ、その衝撃で両眼が飛び出し、見るも無惨な死体となって転がりました。玄瑞25歳、忠三郎22歳、九一は28歳でした。

 前年の雪辱戦とばかりに暴発した長州藩兵は、薩会連合軍の前に潰滅してしまいましたが、その哀れな長州藩士たちに涙する前に、この戦いの巻き添えとなった京の市民たちに目を向けなければなりません。戦いはわずか1日で終わりましたが、落ち延びる長州勢とそれを追う幕府勢の放った火で、晴天続きで乾燥状態にあった京のまちは、たちまち火の海と化します。その戦火は3日に渡って燃え続け、堀川と鴨川の間、一条通と七条通の3分の2が焼き尽くされました。『甲子兵燹図』に描かれたそのさまは地獄絵図さながらで、命からがら逃げおおせた人々も、山中から呆然と市中の火の海を眺めるばかりだったといいます。一説には焼失戸数は4万2千戸ともいわれ、253の寺社、51の武家屋敷が焼けました。市民は家を失い、家族と離れ離れになり、まちは蝿のたかる死体が積み上がりました。後世に伝わる「禁門の変」「蛤御門の変」といった呼び名は、戦を起こした当事者であるのちの明治政府が、この戦いをなるべく小さくみせるためにつけた名称で、当時の呼び方では、干支をとって「甲子(きのえぬ)の戦争」といわれたそうです。戦争でいちばん辛い思いをするのは何の罪もない庶民だということですね。21世紀のいまも変わらない事実です。

 この戦いにより、長州藩は多くの有能な人材を失いました。この発狂したとしか思えない無謀な暴挙によって古い攘夷派は壊滅、激情的な猪突猛進型の攘夷運動は、このときに終わったといえるでしょう。長州藩が目を覚ますには、あまりにも大きな代償でした。


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by sakanoueno-kumo | 2015-07-06 16:34 | 花燃ゆ | Trackback(1) | Comments(0)  

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