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大坂の陣400年記念大坂城攻め その11 ~城中焼亡埋骨墳~

時代は進んで幕末、大坂城にはもうひとつの歴史があります。
慶応3年(1867年)12月9日に発せられた王政復古の大号令のあと、二条城から追われた第15代将軍・徳川慶喜は、ここ大坂城に入ります。
そして年が明けた慶応4年(1868年)1月3日、旧幕府軍と新政府軍が激突した「鳥羽・伏見の戦い」が始まりますが、薩長軍が錦旗を掲げたことにより賊軍となった旧幕府軍は、その後も各地で奮戦はするものの、敗色は濃厚となります。
そんななか、幕府軍総司令官である徳川慶喜は、6日夜、ひそかに大坂城を脱出して海路江戸に逃げ帰っちゃうんですね。
このとき、老中はじめ京都守護職の松平容保や京都所司代の松平定敬も、慶喜の厳命により、家臣たちを置き去りにして江戸へ向かうことを余儀なくされました。
翌朝、主君に欺かれたことを知った大坂城中の将兵たちが、呆然自失となったことは言うまでもありません。
このときの行動が、後世に徳川慶喜という人物の評価を下げた最大の要因であるといっていいでしょう。

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写真は大坂城玉造口南に建立されている「城中焼亡埋骨墳」です。
この碑は、慶喜が去ったあとの城中で、城と共に自害して果てた幕臣たちの慰霊碑です。
総大将がいなくなった大坂城では、もはや戦いを続ける理由もなく、翌日の7日から兵の退去が始まりますが、1月9日、新政府軍への城の開け渡しを潔しとしない幕臣たちが、城に火を放ち、自害して果てました。

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石碑の裏には、「慶応四年辰歳七月 薩州・長州建之」とあります。
つまり、この碑は焼失からわずか半年後に、しかも敵である薩長軍によって建てられたんですね。
大坂城から上がった火が鎮火した翌日の1月10日、錦の御旗を掲げて大坂城に入った征討大将軍・仁和寺宮嘉彰親王(小松宮彰仁親王)と薩長軍は、焼け跡のなかに多くの遺体を確認します。
それを見た薩長兵たちは、城と運命を共にした幕臣たちを「武士の鑑」とたたえ、その遺骨をこの地に埋葬して石碑を建てたそうです。

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この日の大坂城は観光客でいっぱいでしたが、ここに足を運ぶ人はほとんどいませんでした。
場所は外堀の更に南のはずれにあり、たぶん、あまり知られてないんでしょうね。
写真のように、ひっそりとした場所です。

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慶喜がなぜ土壇場で逃げ出したかは、いろんな見方があって定かではありません。
わたしが思うに、水戸学の本拠地である水戸徳川家出身の慶喜にとって、朝敵になることは耐え難きことだったのだろうと推察します。
聡明すぎたんですね。
ただ、理由はどうあれ、結果的に彼が敵前逃亡したことによって、その後の内乱は最低限の局地戦ですみ、その結果、多くの人命を失うことなく、新政府樹立へのプロセスをスムーズにし、日本の植民地化を目論む欧米列強につけ入る隙を与えなかったことを思えば、それが慶喜の意とするところだったかどうかは別として、結果的に我が国を危機から救ったといえます。
幕末維新の最大の功労者は徳川慶喜だった・・・とは、少し過大評価かもしれませんが、もう少し高く評価してあげてもいいんじゃないでしょうか。

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このとき城に放たれた火は、真冬の乾燥した空気のなか一晩中燃え続け、ほとんどの建造物が焼失しました。
慶喜の逃亡によって内乱は防げましたが、慶喜が逃げなかったら、大坂城の建造物などの遺産が、もっと後世に残されていたかもしれませんね。
兵どもが夢の跡・・・です。

さてさて、「その11」まで続いた大坂城攻めシリーズですが、この辺で終わりたいと思います。
近日中に、大坂城以外の大坂の陣関連史跡をめぐっていこうと思っています。

追記
2017年より日本100名城スタンプの収集をはじめました。

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大坂の陣400年記念大坂城攻め その1 ~外堀~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その2 ~大手口、搦手口~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その3 ~西の丸~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その4 ~二の丸・豊国神社~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その5 ~石山本願寺推定地の碑と蓮如上人袈裟がけの松~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その6 ~内堀~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その7 ~刻印石、巨石~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その8 ~本丸~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その9 ~天守閣~
大坂の陣400年記念大坂城攻め その10 ~豊臣秀頼・淀殿ら自刃の地~

大坂の陣ゆかりの地めぐりシリーズも、よければ。
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大坂の陣400年記念ゆかりの地めぐり その1 ~三光神社(真田丸跡)~


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by sakanoueno-kumo | 2015-08-28 22:11 | 大坂の陣ゆかりの地 | Trackback | Comments(0)  

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