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花燃ゆ 第42話「世界に賭ける糸」 ~生糸直接輸出の支援~

 維新を経て近代国家を目指していた明治初期の日本でしたが、「産業」と呼べるようなものはほとんどなく、相変わらず農業を主体とした貧しい国でした。そんな中、上州産生糸だけは、その優れた品質が欧米諸国で高い評価を得ていました。しかし、当時は来日中の欧米商人が生糸を買い付けた上で輸出するという間接輸出だったため、買い付けの段階で買い叩かれてしまい、品質に見合った対価を得られていませんでした。群馬県(当時は熊谷県)の県令に赴任してきた楫取素彦も、どうにかして買い叩きを防ごうと頭を悩ましていたようです。

 ちょうどその頃、県内屈指の生糸業者だった星野長太郎、新井領一郎兄弟が、欧米諸国に生糸を直接輸出することを思い立ち、領一郎がアメリカに赴く希望を抱きます。しかし、当時、アメリカへの渡航、滞在には巨額の資金が必要で、とうてい長次郎たちに捻出できるレベルではありませんでした。そこで、その支援を熊谷県庁へ嘆願したところ、県令の素彦は彼らの考えに賛同し、支援対策に奔走します。直接輸出することができれば、買い叩きが防げるだけでなく、輸出増加も期待できる。怜悧な素彦はそう考えたのでしょうね。そんな素彦の奔走の甲斐あって、領一郎は渡航の公的支援を得ることができました。その後、領一郎はわが国ではじめて生糸の直接輸出に成功することになります。

 ナレーションにもありましたが、この領一郎の孫娘ハルは、アメリカの駐日大使を務めたエドウィン・ライシャワーに嫁ぎます。また、領一郎の娘でハルの母にあたる美代は、領一郎がアメリカ滞在中に生まれた娘で、わが国最初の帰国子女ではないかと言われています。あと、ドラマにはまったく関係ありませんが、ほかにも、領一郎はわが国で最初にゴルフをした人物と言われています。そんなこんなのエピソードからも、領一郎が当時の人として実に先進的グローバルな人物だったことがわかりますね。それもこれも、素彦の尽力がなければ、なかったことかもしれません。人の出会いが歴史をつくる・・・そんなエピソードです。

 吉田松陰の短刀が領一郎の手によって海を渡った話は、ハルの著書『絹と武士』の中にある記述です。それによれば、素彦の尽力でアメリカ渡航の支援を得ることができた領一郎が、そのお礼かたがた素彦のもとを訪れた際、妻の寿子が、兄・松蔭の形見だという布にくるまれた短刀を差し出し、これを携えて渡航して欲しいと依頼されたといいます。曰く、「果たすことが出来なかった兄の渡米の夢を叶えてほしい・・・」と。松蔭が没してから20年近い歳月が過ぎていましたが、未だ亡き兄の思いを忘れずにいた寿子は、素晴らしい女性ですね。いい話です。

 刀は武士の魂。松蔭の魂は、新井領一郎というバイタリティあふれる若者によって海を渡りました。能動的なところでいえば、松蔭と領一郎は少し似ていたのかもしれません。


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by sakanoueno-kumo | 2015-10-19 22:37 | 花燃ゆ | Trackback(1) | Comments(0)  

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