真田丸 第44話「築城」 ~真田丸~
その天下無双の大坂城ですが、とはいえ、まったく弱点がなかったわけではありません。北は淀川、東は河川と湿地帯、西は湿地帯と大阪湾に守られていましたが、南側だけは河内平野と陸続きで、天然の要害というべき地形ではありませんでした。生前の豊臣秀吉もこの点は重々心配しており、晩年に総構えを築き、その弱点を封じようとしていました。
ちなみに、現在の大坂城は大坂夏の陣以後に徳川幕府によって再建されたもので、豊臣時代のものではありません。豊臣時代の城跡に盛土をして、堀の幅も石垣の高さも豊臣時代のほぼ2倍の大きさになっていますが、面積でいえば、豊臣時代の縄張りのほうがはるかに大きく、約15km四方、現在の徳川大坂城の約5倍の規模だったといいます。例えば、現在の大坂城の最南端は大阪環状線森ノ宮駅付近ですが、当時の最南端は、そこから更に1駅南下した玉造付近にありました。大坂城全体がひとつの都市だったといえます。このとてつもない広さだったからこそ、10万ともいわれる牢人たちを収容できたんですね。
大坂城の弱点である南側の守りを強化するために作られた出城が、今年の大河ドラマのタイトル「真田丸」でした。ここで信繁は迫りくる徳川勢を相手に巧みな戦術を展開し、一躍歴史の表舞台に名乗りをあげることになるのですが、この真田丸が実際、誰によって築かれたものであったかは定かではありません。史料によれば、信繁が南の弱点を見抜いて築いたという説や、ドラマのように、もともとは後藤又兵衛基次がここに目をつけて砦を築こうと準備していたところ、信繁が横取りしたという説もあり、あるいは、又兵衛が諸軍の遊軍を命じられたため、代わって信繁が守ることになったというものもあります。ただ、物理的に考えれば、信繁や又兵衛が入城してから築いたにしては日数が少なすぎで、もともと彼らが入城前から構築が始まっていたものを、信繁(あるいは又兵衛)が引き継いだと考えるのが自然かもしれません。
いずれにせよ、信繁率いる真田軍がここを守備したことは間違いなく、「真田丸」と呼ばれるようになったのも事実です。もっとも、この出城を真田軍が単独で守ったわけではなく、長宗我部盛親軍と半分ずつ分担して守備していたのですが、真田軍の活躍があまりにも派手だったため、「真田丸」と呼ばれるようになったのだとか。盛親は面白くなかったでしょうね。ちなみに、「真田丸」の呼称は当初からついていたものではなかったようですが、翌年の夏の陣のときにはこの出城の跡地を「真田丸」と呼ぶようになっていたようで、そう呼び始めたのは徳川方だったようです。敵方にそう名付けられたということは、やはり、相当インパクトが強かったのでしょうね。
有名な真田軍の「赤備え」についてですが、かつて真田家が仕えた武田信玄の配下である飯富虎昌や山県昌景らの軍勢が「赤備え」で統一していたと伝わり、その流れをくんだものだったと考えられます。古来、武将の間で「赤」は、強者の象徴でした。古くは源平合戦で赤い紐で編んだ鎧などが登場しており、これは、自身が強者であることをアピールするためのものだったと言われます。当時、鎧を赤くするためには「辰砂」という赤い色の鉱物が必要で、たいへん高価なものだったそうです。武田軍の伝統を継承し、強者であることを顕示し、高価な赤備えを纏った真田軍。この戦いにかける強い思いがうかがえます。
家康が若い兵たちに「仕寄せ」の作り方について講義するシーンがありましたが、時代考証担当の丸島和洋氏の話によると、『翁物語』に出てくる逸話のアレンジだそうです。似たような描写では、司馬遼太郎氏の小説『城塞』のなかでも、家康が戦経験のない若い兵の無知さを嘆くシーンが描かれています。実際、関ヶ原の戦いから14年の歳月が過ぎており、しかも、その関が原では徳川家譜代のほとんどの旗本たちは徳川秀忠と共に遅参しており、関ヶ原に勝利したものの、徳川方として戦ったのは外様大名ばかりでした。したがって、20万とも30万ともいわれる徳川軍ですが、これが初陣という若侍が圧倒的に多かったわけです。「戦争を知らない子供たち」だったわけですね。一方の豊臣方の牢人たちは、関が原はもちろん、文禄・慶長の役を戦った猛将揃いで、その点から言えば、決して豊臣方は兵力差ほど不利だとはいえませんでした。しかし、それらを率いる豊臣家首脳(大野治長ら)にそれほど戦経験がなく、さらには、淀殿や大蔵卿局などの女たちが軍議に口をはさむ始末では、百戦錬磨の猛将たちも、きっとやる気を削がれたでしょうね。このドラマでの淀殿のキャラが、まだつかめませんが・・・。
さて、いよいよ次週、大阪冬の陣開戦です。
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by sakanoueno-kumo | 2016-11-07 23:06 | 真田丸 | Trackback(1) | Comments(0)