太平記を歩く。 その87 「櫻井驛跡(楠公父子訣別之所)」 大阪府三島郡島本町

大阪府と京都府の府境近くに位置する「櫻井驛跡」を訪れました。

「駅跡」といっても現代でいうところのそれではなく、古代律令制度下の「駅家」の跡です。

ここは、「楠公父子訣別之所」として知られています。


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『太平記』によると、建武3年(1336年)、九州から大軍を率いて上洛してくる足利尊氏を討つべく湊川に向かう楠木正成が、この地で11歳になる嫡子・楠木正行に訓戒を与え、河内国に帰らせたと伝えられています。


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『太平記』巻16「正成下向兵庫事」には、その別れの情景が記されています。


今度の合戦、天下の安否と思う間、今生にて汝が顔を見んこと、これを限りと思うなり。

正成すでに討死すとききなば、天下は必ず将軍(尊氏)の代になりぬと心得べし。

然りといえども、いったん身命を助からんるに、多年の忠烈を失いて隣人に出ずること有るべからず。


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史跡公園内に建ついちばん大きな石碑『楠公父子訣別之所』の碑です。

大正2年(1912年)に建立されたそうです。

揮毫は陸軍大将の乃木希典

でも、乃木は明治天皇崩御の際に殉死していますから、この碑が出来たときには、既にこの世にいなかったことになります。


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こちらは、昭和6年(1931年)に建てられた『明治天皇御製碑』で、明治天皇が明治31年(1898年)に詠まれた歌が刻まれています。


「子わかれの 松のしずくの 袖ぬれて 昔をしのぶ さくらいのさと」


揮毫は海軍大将・東郷平八郎だそうです。


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こちらは、『楠公父子子別れの像』です。

昭和15年(1940年)に建てられた最初の像は銅製だったそうですが、その後、戦争の協力で金属供出され、石像に変わったそうです。

更に時を経て、現在の像は平成16年(2004年)に有志によって寄贈されたものだそうです。


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どうりで、アニメちっくな顔だと思いました(笑)。


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正行の頭上のは、本物です(笑)。


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台座の「滅私奉公」の文字は、公爵・近衛文麿の揮毫です。

昭和15年の「滅私奉公」が何を意味するか・・・、後世の私たちは知っています。


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こちらのは最も古い石碑で、明治9年(1879年)に英国大使パークスが楠木正成の精忠に感じて、「楠公訣児之処」と刻した石碑を建てたそうです。

楠公さんの精忠はインターナショナルのようです。


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こちらは「旗立松」「子別れの松」と呼ばれる古松の幹です。

この松の木の袂で、楠木父子が決別したと伝えられます。

明治30年(1897年)に松は枯死し、一部を切り取って小屋に保存したそうです。


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「桜井の別れ」のエピソードは、戦前の国語の教科書には必ず乗っていた逸話で、「桜井の訣別」という学校唱歌にもなりました。

乃木希典、東郷平八郎、近衛文麿。

戦前の国粋主義バリバリですね。

乃木も東郷も、日露戦争後は生きながらにして神に祀り上げられた人物です。

忠臣の象徴として神格扱いされた大楠公と同じですね。

ただ、正成が後世に神扱いされることを望んでいたかどうかは、定かではありませんが。


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ちなみに、この「桜井の別れ」の逸話は『太平記』のみに記されているだけで、また、当時の正行は左衛門少尉の官職に就いており、年齢はすでに20歳前後だったという説が古くからあり、史実かどうかは疑わしいとされています。



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by sakanoueno-kumo | 2017-07-15 00:11 | 太平記を歩く | Trackback | Comments(0)  

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