天地人 あとがき
昨今の戦国ブームが追い風になって、それなりの人気を得ていたようですが、一方で古くからの大河ドラマファンからは酷評が多かったこの「天地人」。長年大河を見続けてきた私にとっても、評価の低い作品となってしまいました。私はこのブログで全47話を毎週追っかけてきましたが、なるべく酷評はしないという趣旨を貫いてきたのですが、途中から辛くなってきたというのが正直なところです。印象に残ったシーンや心に響いた言葉などを記してきたのですが、何も感想が浮かばない回もあって、苦しみました。
何が評価を下げたかといえば、諸所いろいろだとは思いますが、よく耳にする「史実と違う。」という意見に関しては、私はあまり言いたくない部分です。登場人物が実在の人とはいっても、基本的にドラマである以上フィクション。そのフィクションの物語に史実を盛り込んで楽しく見せるというのが、歴史ドラマのポイントだと思うからです。史実ありきで構成すれば、それはドキュメンタリーであってドラマではないと私は思います。過去、名作といわれる作品の中にも、フィクション性の強い作品も見られます。それをもってして面白くないと評するのは私は賛成できません。文書などで残っている史実は、歴史の断片に過ぎません。本当かどうかわからないところにこそ、歴史ドラマの面白さがあると私は思っています。
次に直江兼続という人物についてですが、戦国武将の中で人気の高い人物ではあるものの、脇役の感が強く、主役として1年間物語を作るには難しい人物ではあったでしょう。しかし、昨年の「篤姫」、一昨年の「山本勘助」も本来脇役の人物で、この二つの作品は私の中で評価が高く、人物の所為とは言えないところがあります。ただ、秀吉などにも勝るとも劣らないと言われた「策士、直江兼続」の姿はあまり見ることが出来ず、最後まで優等生だった姿がイメージと違い、兼続ファンをがっかりさせたところだと思います。妻夫木聡さんの爽やかなイメージから脱却できず、本来の直江兼続の魅力を作り出せなかった感は否めません。
私がこの作品の中でもっとも感じたのは、テーマの曖昧さです。「愛と義」という、あまりにも広いテーマだった故、その本質が伝わってきませんでした。「利」のみを求める戦国時代において「愛と義」を貫いた直江兼続の人生を通して、弱者を切り捨て、利益追求に邁進する現代人にメッセージを送る・・・という壮大なテーマをうたっていた制作サイドでしたが、結局は何が「義」なのか、何を伝えようとしているのかが見えてきませんでした。第9話の上杉謙信の言葉に「義とは、人が人であることの美しさよ。」というものがありましたが、あまりにも抽象的すぎて理解に苦しいものでした。昨年の「篤姫」では、「役割」という非常に解りやすいテーマがあり、物語を通してその主題がぶれなかった・・・という点に、多くの視聴者の共感が得られたのではないかと思います。この天地人においては、そのテーマである「義と愛」に一貫性がなく、兼続の行動にも矛盾点が多く、共感を得ることが出来なかったことが、この作品の評価を下げた一番の要因と私は思います。
以上は私の個人的な勝手極まりない感想です。全話を通して酷評は避けていただけに、そのままの姿勢を最後まで貫こうかとも思いましたが、「あとがき」ということで正直な感想を述べさせてもらいました。長年大河は見続けてきましたが、ブログという場で全話感想を述べさせてもらったのはこの作品が初めてです。そいうった意味では、心に残る作品になりそうです。ブログを毎週読んでくださった方がいるかどうかはわかりませんが、毎週感想をエントリーした翌日のアクセス数がもっとも多く、そのことを励みに臨んできました。11か月間ありがとうございました。
次週からの「坂の上の雲」、来年の「龍馬伝」でも、ブログエントリーは続けていきたいと思います。
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by sakanoueno-kumo | 2009-11-25 02:04 | 天地人 | Trackback(1) | Comments(4)

親愛なるアッティクスへ 昨日、一昨日は少し肌寒かった福岡県地方ですが、今日からはまた、元の春の陽気に戻りそうですね。 例年、私はゴールデン・ウィークに入ったら、冬も完全に終わり・・・ということで、ストーブなどを片づけるようにしておりますので、今年もどうやら、これで寒さとはしばらくお別れのようですね。 ところで、今年の大河ドラマ「天地人」(でしたよね?)ですが、今まで辛抱強く見てきましたが、ついに見るのを断念しました。 主人公を素晴らしく描くがために、他の登場人物、特に敵対側を落として描...... more
なるほど。
仰るとおりですね。
でも、私も、新撰組や風林火山、篤姫などは、史実と違うとわかっていても、それはそれで楽しんで見ることが出来ましたが、「天地人」だけは(途中から)見る気になれませんでした。
何でなんでしょうね。
言われてみれば、はて・・・と。
理由は人それぞれなんでしょうけど、要するに面白くなかったということなんでしょう。(笑)
史実であってもフィクションであってもいいのですが、劇中に引き込まれるといったシーンは、残念ながらありませんでた。毎年大河を見ているだけに、観なきゃいけないような思いで観ていた・・・といった感じです。
ただキャストでいうと、小栗旬の石田三成はカッコよかったですよ。私の中ではヒットでした。それとドロンジョ・・・いや深キョンの淀殿も・・・。
妻夫木聡はいい役者さんだとは思いますが、さわやかすぎて兼続のイメージにはちょっと無理があったのではと思います。
でした♪二人の雰囲気が役柄にぴったりで。
幸村の城田優はもっと活躍してほしかったですね。
それから松田龍平くんの政宗も。ゲームの人気に便乗して
ちょろって出してしまった…みたいな感じが残念。
妻夫木さんと北村一輝さんは本当に大好きなんですけど、
やっぱり兼続が余りにも綺麗ごとキャラだったことと、
景勝の存在感の薄さにドラマの浅さが出てしまったのかも。
阿倍謙信もカッコ良かったんですけどねえ。
「坂の上の雲」の好古さんに大期待してます。
大河ファンの声はやはり皆同じですね。1年間通して見て「ここが良かった!」と声を大にして言える場面が思いだせません。
しいて言えば、関ヶ原の後の石田三成と福島正則が酒を酌み交わすシーンぐらいかな・・・。兼続がらみではないところがこのドラマを象徴しているような・・・。