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龍馬伝 第19話「攘夷決行」

 「尊王攘夷」。帝を尊び、外敵を武力で退けようという思想。250年もの長い間鎖国によって天下泰平を維持してきた我が国だったが、ペリー艦隊によってその扉がこじ開けられ、以後、外敵による侵略を憂う、主に下級武士たちの間で高まった思想である。その背景には、この時代より少し前、隣国である清国がアヘン戦争時の通商の結果、西欧列強に支配されるに至った実情が影響していた。攘夷という言葉の元は中国の春秋時代の言葉で、日本での原点は朱子学を重んじた水戸学から発した思想である。水戸学とは水戸藩で形成された学問で、全国の藩校で教えられ、その「愛民」「敬天愛人」などの思想は、吉田松陰や西郷隆盛をはじめとした多くの志士たちに多大な感化をもたらした。最初は純粋に外敵による自国への侵略を防ごうという国防精神によるものだったはずだが、時の帝・孝明天皇の意向が攘夷であったことで「勤王思想」と結びつき、やがてそれが「倒幕運動」のエネルギーと化していった。これは一種のすり替えであった。

 その「尊王攘夷」をスローガンに結集された「土佐勤王党」とその旗頭の武市半平太。謹厳実直で「天皇好き」とあだ名された彼だったが、果たして彼の掲げた「攘夷」とはどのようなものだったのだろうか。本当に純粋な国防精神によるものだったのだろうか。下級武士に過ぎない彼にとって藩内で出世するのは容易ではない。そこに追い風となって吹いてきた「尊王攘夷論」という世論。聡明な彼ならば、攘夷論が現実的でないことなどわからないはずもなく、その本質を知った上で、自身の立身出世の手段として世論を利用したともとれなくもない。彼の行った攘夷運動は、吉田東洋をはじめとする開国論者を暗殺し、世情に無知な公卿を操って幕府に働きかけるといった政治的な策謀ばかりで、そのたびに自身が出世していくというものだった。
 「土佐勤王党言うたち、所詮は武市先生のものじゃきのぅ。」
ドラマ中、海軍操練所に派遣された望月亀弥太が言った言葉だが、その言葉どおり、武市半平太の掲げた「攘夷論」とその徒党「土佐勤王党」は、結果的に彼自身を栄進させるための手段でしかなかった。

 文久3年(1863年)、長州藩と英 仏 蘭 米の列強四国との間に起きた下関戦争や、同じ年に薩摩藩と英国の間で起きた薩英戦争などにおいて外国艦隊との力の差に直面したことにより、単純な攘夷論というものが急激に息をひそめ、外国との交易によって富国強兵を図り、諸外国と対等に対峙する力をつけるべきだとする「大攘夷論」が登場する。これによって、攘夷運動の主力であった長州藩・薩摩藩も事実上開国論へと転換していき、やがて時代は坂本龍馬を必要とし始める。そしてその一方で、単純攘夷論だった武市半平太と土佐勤王党は、歴史の中での役割を終えて、時代に切り捨てられ消えていくこととなる。


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by sakanoueno-kumo | 2010-05-10 01:46 | 龍馬伝 | Trackback(7) | Comments(2)  

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おはようございます。いつもありがとうございます。
本当に。望月亀弥太さんの台詞、こっちにきてよかった。。それは印象的でした。役割はありましたね、武市さん。大括り、大攘夷論というのですね。アヘン戦争の背景も分からせていただきました。
Commented by sakanoueno-kumo at 2010-05-10 13:58
< ayumiyoriさん。
いつもコメントありがとうございます。
ここ2話ほど、どうも説明的なブログ内容になってしまい、反省しています。
武市半平太ですが、事ここに至って、彼ほど聡明な人ならば、土佐に帰った己の身にどういう運命が待っていようかは予見出来たと思うのですが、そんな境地におかれた彼の心境などに着目した文を書きたいのですが、なかなか上手く形容する言葉が見当たりません。
今話で「攘夷の夢が潰えた」と言っていましたが、それはすなわち「半平太の栄進の夢が潰えた」ということ。
下野=死を意味するもので、それでも土佐に帰る道を選んだ彼の心境はどのようなものだったのでしょうね。

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