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金本知憲選手の連続試合出場ストップに思う。

 先日、阪神タイガース金本知憲選手の連続試合出場が、1766試合で止まりましたね。この記録は、元・広島東洋カープ衣笠祥雄氏が持つ2215試合に次ぐ歴代2位の記録です。まあ、衣笠氏の記録を塗り替えるには、まだあと3年強ありましたから、現在43歳の金本選手には普通に考えて無理がある話で、どのみちどこかでピリオドが打たれ、歴代2位となるのは誰しもがわかっていたことでした。ただ、その終わり方があまりにもあっけない幕切れでした。敵地での中日戦で今季初めて先発を外れ、8回2死一塁から代打で出場。しかし、一塁走者の俊介選手が盗塁失敗。打席を完了せず、直後の守備に就かなかったことで、足掛け14年に渡って続けてきた大記録に終止符が打たれた、というわけです。“ルールの盲点”をつかれる思わぬ形になり、球界やファンの間で波紋が広がっているようです。

 この終わり方について、私は最高の着地点だったんじゃないかと思っています。正直いって、金本選手の連続出場に無理があることは、ファンの間では周知のところでした。そのことは、ご本人が一番わかっていたことだと思います。しかし、積み重ねてきた数字があまりにも偉大すぎて、監督を含め周囲が必要以上に気を使っているという状況だったと想像します。昨年4月、連続フルイニング出場の世界記録1492試合でピリオドを打ったのは、右肩痛に苦しんでいた金本選手自らの決断によるものでした(参照:金本知憲選手の決断)。あの時点で連続出場記録にも終止符を打つべきだったと私は思うのですが、その後も真弓明信監督は金本選手を代打で使い続けました。真弓監督にしてみれば、それは人情だったのでしょうが、しかしその後の金本選手も、決して使い続けるべき状態には見えませんでした。金本選手も、無理に記録を伸ばすことは本意ではなく、「無理して出すのはやめてください。あまり気にしないでください。」と常にいっていたそうです。しかし、真弓監督にしてみれば、その引導を渡す決断は、なかなか出来なかったのでしょう。金本選手にしても、真弓監督の気持ちを無碍に出来ないという思いもあったんじゃないでしょうか。

 そんな状況の中での今回の終止符。誰の決断でもなく、野球のルールによって終止符が打たれたわけです。金本選手にしてみれば、広陵高校の後輩である俊介選手の果敢なプレー(セオリーでいうと、あそこでの盗塁はいただけませんが)によってもたらされた結果ですから、ある意味、本望なんじゃないでしょうか。こんな終わり方は誰にも想像がつきませんでしたが、金本選手も正直ホッとしているところがあるかもしれません。一番ホッとしているのは、真弓監督かもしれませんが・・・。

 この1766試合連続出場という数字は偉大だと思いますが、正直いって、ここ数年は無理に記録を伸ばした観は否めませんね。金本選手の記録を否定するわけではありませんが、続けることに意味があるとは私は思いません。常に100%の力を出せる状態での連続出場であれば価値があると思いますが、続けることによってパフォーマンスが落ちるなら、続けるべきではないと私は思います。“皆勤賞”を高く評価し、少々体調が悪くても無理して働くことを美徳とするのは日本人の国民性ですが、それは所詮、一流半以下の場合だと思います。本当の一流なら、休まず働いて80%しか力が出せないよりも、適度に休息をとって100%の力を発揮するほうが、結果的に会社のため、チームのためになるのではないでしょうか。一流選手は、そうすることが許される立場なわけですから。

 プロ野球は興業でもありますから、エンターテイメントという観点で見れば、人気選手は出場し続けることに価値があるともいえるかもしれません。球場に足を運んで、ひいきの選手が休んでいたらファンはガッカリするでしょう。その意味では、プロ意識が強いといえるかもしれませんが、しかし、ファンにとってはひいきの選手の“活躍”を見たいわけで、活躍できない状態にあるのなら、出るべきではないと思います。好きな歌手のコンサートに行って、風邪ひいて声が出ない状態だったら、「金返せ!」と言いたくなりますよね。プロのエンターティナーである以上、最高のパフォーマンスが出来るよう体調管理すべきで、それに失敗したときは、人前に出るべきではないと私は思います。

 金本選手は、自身の著書『覚悟のすすめ』の中で、「自分が連続出場を続けてきたのは、自分が主力選手ではなかったからだ。」と述べています。自分は広島時代、レギュラーに定着した選手ではなかったから、少々体調が悪くとも与えられたチャンスを逃したくはなかった・・・休んだら、次は使ってもらえないかもしれない・・・その思いで出続けていたら、いつの間にか記録となっていた・・・と。それは正直な言葉だと思います。スポーツのみならず、どんな世界でもそうですが、認めてもらうまでは、少々無理してでも与えられたチャンスにしがみつかなければ、一流にはなり得ません。その意味では、当初の連続出場は“必要な無理”だったのでしょう。しかし、後半の金本選手は誰しもが認める超一流選手。であれば、満身創痍の状態で尚も無理をする必要はなかったのでは・・・と思わざるを得ません。いつの頃からか、記録のための連続出場になっていたのではないでしょうか。

 てなことを言ってきましたが、金本選手の野球に対する取り組みや考え方は素晴らしいと思っています。その真摯な姿勢が、この連続出場の数字になったともいえるでしょう。ただ、後半はその数字が彼を縛っていたようにも思えました。今回、記録が途絶えたことで、その呪縛から解き放たれて、また違った金本選手が見られるような気がします。43歳とはいえまだまだ阪神にとっては金本選手は必要。これからは適度な休息をとりながら、ここ一番のところで100%のパフォーマンスを見せてほしいと思います。そして出来れば後輩たちに、こういってほしい。
 「俺の記録を目標にするな。一流になったら、休める選手になれ。」・・・と。


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by sakanoueno-kumo | 2011-04-20 21:41 | プロ野球 | Trackback | Comments(0)

 

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