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なでしこジャパンの国民栄誉賞授与に思う。

サッカー女子ワールドカップで優勝した日本代表チーム「なでしこジャパン」に、国民栄誉賞が授与されることが正式に決まったそうですね。
団体での受賞は今回が初めてだとか。
たしかに、男女通じての初のW杯制覇という快挙を成し遂げ、東日本大震災以降テンションが下がりっぱなしだった国民に、立ち上がる勇気と希望を与えてくれた彼女たちの活躍は素晴らしいもので、後の世に語り継がれるべき偉業だと思います。
ですが、国民栄誉賞といわれると、少々違和感を持ってしまうのは、私だけでしょうか。

そもそも国民栄誉賞の選考基準の曖昧さはこれまでもいわれてきたことですが、そのわりには他の勲章などよりも知名度が極めて高いのが、この賞の特徴です。
というのも、過去に受賞された18組の方々が、誰もが認める錚々たる顔ぶれだからでしょう。
最初の国民栄誉賞受賞者となった王貞治氏は、その受賞理由となった本塁打世界記録樹立の実績以上に、国民栄誉賞に選ばれたという事実が、王貞治氏の功績を確固たる地位に押し上げたといっても過言ではありません。
その後の受賞者をみても、たしかに選考基準の曖昧さは否定できませんが、「なぜ、この人物が受賞できないのか?」という批判はあっても、「なぜ、この人物が受賞するのか?」という声は、あまり聞こえてこなかったように思います。
そのことからも、いかにこの賞が権威のある賞であるかが見て取れます。

私が思うこの賞の受賞条件は、王貞治氏が受賞して長嶋茂雄氏が受賞していないことや、渥美清氏が受賞して石原裕次郎氏が受賞していないこと、長谷川町子氏が受賞して手塚治虫氏が受賞していないことなどからみるに、“記憶”だけではなく“記録”を残していることが重要な条件だと思われます。
それも、短期間の記録ではなく、長年に渡って積み重ねてきた記録や実績が必要で、たとえ大変な偉業であったとしても、一瞬の輝きだけでは評価されないものだと解釈できますし、おそらくこの賞の設立当初はそうだったと思います。
ところが、その定義に当てはまらない受賞者が出たのは、2000年のシドニー五輪・女子マラソンで金メダルに輝いた高橋尚子氏の受賞でした。
たしかに彼女の偉業はこの度の「なでしこ」たちと同じで、日本女子陸上界初の金メダルを、オリンピックの花形であるマラソンの舞台で、しかも当時のオリンピック新記録という快挙まで成し遂げての獲得という点でいえば、伝説のランナーとして後世に語り継がれるアスリートであることは間違いないでしょう。
ですが、「長年に渡って積み重ねてきた記録や実績」という観点でいえば、それまでの受賞者と比べて明らかに異色なものでした。
高橋尚子氏の受賞がありなら、たしかに今回の「なでしこ」たちの受賞もありですよね。
でも、であれば、長嶋さんや手塚さんなど、他にも受賞できる人がたくさんいるようにも思えます。

かつてシアトルマリナーズのイチロー選手が、メジャーリーグで日本人選手史上初となる首位打者を獲得したとき、小泉純一郎内閣から授与を打診されましたが、「国民栄誉賞をいただくことは光栄だが、まだ現役で発展途上の選手なので、もし賞をいただけるのなら現役を引退した時にいただきたい。」と固辞しました。
さらにイチロー選手は、のちにメジャーリーグのシーズン最多安打記録を樹立した際にも授与を打診されましたが、このときも同じ理由で固辞しています。
彼は、時の内閣の方々以上に、この賞の重みを知っていたのでしょう。

元阪急ブレーブスの福本豊氏は、当時の世界記録となる通算939盗塁を達成した際に、当時の中曽根康弘内閣から授与を打診されたそうですが、「そんなんもろたら立ちションもでけへんようになる。」といって固辞したそうです。
いかにも福本氏らしい断り方ですが(賞にかかわらず立ちションはいけませんが・・・笑)、ある意味、真理だと思います。
受賞すれば、国が認める国民の英雄となるわけですから、その地位に相応しい生き方をせねばならず、その後の人生が大変かもしれません。

高橋尚子氏は、この国民栄誉賞受賞以降、そのプレッシャーからか成績も振るわなくなりました。
彼女についていえば、もし国民栄誉賞など貰っていなかったら、五輪2連覇もあったんじゃないかと思ってしまいます。
美空ひばり氏や長谷川町子氏が受賞したとき、「なぜ存命のうちに授与しないのか」という批判の声が多く聞こえましたが、私はそれでいいんじゃないかと思うんですよ。
スポーツ選手は引退してから、文化人は死んでから、現役中に受賞するものじゃないんじゃないかと・・・。
この度の「なでしこ」たちの受賞で、女子サッカーの頂点がこの2011年W杯になってしまわないことを祈ります。


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by sakanoueno-kumo | 2011-08-05 19:52 | 他スポーツ | Trackback(1) | Comments(6)  

Tracked from 平太郎独白録 親愛なるア.. at 2011-08-06 10:02
タイトル : 続・蟻が象を倒した なでしこジャパン国民栄誉賞授与!
親愛なるアッティクスへ サッカー女子ワールドカップ(W杯)で世界一のアメリカを下し、初優勝した日本代表チーム「なでしこジャパン」に国民栄誉賞が授与されるということが正式に決まったそうですね。 団体での受賞は初めてだそうですが、まあ、今回の場合、それもありなんでしょうね。 冷遇されてきた女子サッカーそのものへの認識を新たにさせるという意味でも・・・。 ただ、選考基準の曖昧さが指摘されてきたのは今に始まったことではないのでしょうが、私は澤 穂希選手一人の受賞でも良かったのではないかとも思ってい...... more
Commented by heitaroh at 2011-08-06 10:04
私は藤山一郎(でしたっけ?)がもらったときや渥美清がもらったときにはものすごく違和感がありました。
私は寅さんなんて一度も見たことがありませんし、周囲でも見に行っているなんて人は聞いたことがありませんでしたから。
その意味では東京ローカルのスターなんじゃないの・・・と。
Commented by sakanoueno-kumo at 2011-08-07 00:22
< heitarohさん。
私も寅さんは映画館に観に行ったことはありません(TVでは観たことありますが)。
たしか、同一役者のシリーズ映画では世界最長のギネス記録なんですよね。
つまりは本稿でも述べたとおり、「長年に渡って積み重ねてきた記録や実績」ということなんでしょう。
長嶋さんが受賞してないのに、衣笠祥雄さんが受賞しているようなもので・・・。
いってみれば衣笠さんは、中国ローカルですから・・・(笑)。

藤山さんは・・・私もよくわかりません。
『青い山脈』が、長きに渡って国民から愛された・・・ということでしょうか?
Commented by Tacky at 2011-08-07 14:39 x
sakanoueno-kumo 様

中中、ブログでこういった記事に出会う事が出来ないので素晴らしいと思いますし、そこまで調べて(一般常識の範囲内なのかもしれませんが)

確かに、なでしこの成績は素晴らしいですがイチローが固辞したとなると?と思ってしまいます。
ただ、この賞に対する意見は人それぞれに違い、またそれだけ議論するに値する賞なのかもしれないと

改めて考えさせられました。ありがとうございます。
Commented by sakanoueno-kumo at 2011-08-08 11:05
< Tackyさん。
コメントありがとうございます。
イチロー選手や福本選手が固辞したのは、彼らの考え方であって、どちらが正しいという種のものではないと思います。
ただ、その意味では、この度の団体受賞というのはどうかと・・・。
団体だと、中には辞したいと思っている人がいたとしても、断れないですからね・・・。
Commented by Tacky at 2011-08-08 15:13 x
たしかにそうですね。
私は、辞退しますなんて言いづらいですしね。(^^)
Commented by sakanoueno-kumo at 2011-08-08 20:46
< Tackyさん
まったくです。

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