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ドラマ『それでも、生きてゆく』に思い出す、14年前のあの事件。

『それでも、生きてゆく』というTVドラマにハマっています。
少年犯罪被害者家族加害者家族の物語で、第1話は観逃したのですが、なんの気なしに観た第2話に引き込まれてしまい、以後、録画してでも観ています。
ドラマはフィクションと謳ってはいますが、加害者が14歳の少年で、被害者が小学生の幼女で、ハンマーで殴る手口や、その凶器を自宅屋根裏に隠していた描写など、明らかに、1997年に日本中を震撼させた、あの神戸連続児童殺傷事件、いわゆる“酒鬼薔薇聖斗事件”を下敷きにしていると見ていいのでしょう。
脚本は坂元裕二さんで、主題歌は小田和正さんという、往年の『東京ラブストーリー』コンビ。
物語の舞台は、事件から15年が過ぎた現在で、名前を変えて人里離れた農園で働きながらひっそり暮らす元少年Aと、転職、引越しを繰り返しながら隠れるように生きてきた加害者家族、娘を殺されたことで夫婦間にヒビが入り、家族がバラバラになってしまった被害者家族と、それぞれの苦悩が真摯に描かれています。
瑛太さん演じる被害者の兄と、満島ひかりさん演じる加害者の妹が、「禁断の愛」となりそうな予感がして、それはさすがにどうよ!・・・と思わなくもないですが・・・。
だって、フィクションとはいえあまりにも現実にあった事件とラップし過ぎていますからね。
当事者が観られたら、どう思うのかと・・・。

“酒鬼薔薇聖斗事件”といえば、私たち神戸市民にとっては忘れることのできない暗い記憶です。
事件が起きた1997年とは、「阪神・淡路大震災」が起きた2年後のことで、表面的には復興が進んでいたものの、その復興の波に乗れた人と乗りそこねた人の格差が生じ始め、震災による経済的な二次災害がボディーブローのように効き始めた頃でもあり、神戸全体が震災直後とはまた違った意味での、殺伐とした空気に包まれていた頃でした。
そんな折り、またも日本中の人が神戸に注目することになった出来事が、あの“酒鬼薔薇聖斗事件”でした。
当時、神戸はもはや人の住める街ではないんじゃないか?・・・なんて、他の地域に住む知人からいわれたものです。

私の住まいは、あのおぞましい出来事があった学校や、有名になった“タンク山”などから車で10分ほどのところで、買い物などで頻繁に通る場所です。
見慣れた景色が全国ネットの報道番組で、毎日毎日流れるというのは、なんとも妙な気分でした。
当時の街の物々しい雰囲気も忘れられませんね。
事件が起きてから加害者の少年が逮捕されるまで、小中学生はすべて集団登下校が強制され、街には石を投げれば当たるほど警察官が立ち、巡回しているパトカーは兵庫県警のものだけではなく、近隣の県からかなりの応援部隊が神戸に集結していたようで、まさしく、人の住むべき街ではないような物々しさでした。

当時、加害者逮捕前の報道では、犯人は黒いワンボックスカーに乗った30歳代の長身の男などといわれてましたが(私の知人で黒いワンボックスカーに乗った30歳代の長身の男性は迷惑がってましたが・・・笑)、私はあの犯行声明文からみて絶対に未成年か、せいぜい20歳ぐらいの若者の犯行だと思ってましたよ(当時、妻や職場の同僚たちにもそう豪語してましたし)。
当時のテレビに出てくる専門家の見解では、文中に「積年の恨み」など古い言い回しが使われていることなどから30歳代以上の中年世代と分析していましたが、絶対そんなことないと思ってました。
そもそも学校や義務教育に向けた恨みつらみなんて動機自体、卒業して間もない若者の抱く感情であって、卒業して何十年も持ち続ける感情でもないでしょうし、たとえ恨みが残っていたとしても、報復の矛先が違うように思います。
さすがに14歳と知ったときは驚きましたが、こういった事件での学者の分析なんて、結構的外れなものだなあ・・・と思ったものです。

当時、私は2歳の息子を持つ新米親父で、どう間違えたらこのような凶悪犯が育つのか、これから子供を育てていく上で非常に恐怖を覚え、ゆえに興味深くもありました。
で、何年かのちに加害者の両親が書いた手記『「少年A」この子を生んで・・・』も読みました。
正直、かなり後味の悪い本で、読まなきゃよかったと思いましたね。
手記を読んでわかったのは、犯行の原因は育った環境や育て方ではなく、「少年A」が生まれ持った異常な性癖が原因であること。
言ってみれば、究極のサディストだったわけで、これはある意味どう仕様もないこと。
彼はこの世に生まれてくるべきじゃなかった人間だと思います。
ただ、その異常性を気付いてやれるかどうかが、親として最も重要な務めなのでしょうが、この「少年A」の両親は、少年がある時期から異常な信号を発していたにも関わらず、気付いてあげることが出来なかったんですね。
でも、これってこの両親に限ったことではなんじゃないかと思います。
ほとんどの親は、自分の子が異常だとは思わないでしょうから・・・。
親は自分の子供のことは一番よく見えていると思いがちですが、それは大きな間違いで、親であるからこそ見えないことがたくさんあるということを知らなければなりませんね。

このドラマをキッカケに、当時のことを思い出しました。
当時2歳だった私の息子ももうすぐ17歳になり、その後に生まれた娘も9歳になった今、改めて親の気持ちになって、被害者の親加害者の親と、究極の選択でどちらになりたくないかと妻に質問したところ、妻は迷わず被害者の親と答え、私は加害者の親といいました。
これは、男と女の違いかもしれず、父親と母親の違いかもしれません。
当然ですが、どちらにもなりたくないという答えが正解ですけどね。

このドラマで印象的なのは、加害者家族の方が曲がりなりにも家族として結束していて、被害者家族の方が夫婦兄弟ともにバラバラになってしまっていたこと。
普通は逆に思いがちですけどね。
現実にはどうかはわかりませんが、あながち的外れでもないのかもしれません。
ドラマは第5話が過ぎたとこで、これからが核心部分に入っていくのでしょう。
どんな着地点が用意されているのか、今後も目が離せません。


ゴメンナサイ・・・時代劇ではありませんが・・・。
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by sakanoueno-kumo | 2011-08-11 20:09 | その他ドラマ | Trackback | Comments(8)  

Commented at 2011-08-15 11:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sakanoueno-kumo at 2011-08-17 09:31
< 非公開コメントさん。
コメントありがとうございます。
昨日まで夏期休暇だったためPCに向かう時間がとれず、レスが遅くなってしまいました(汗)。

委細、承知しました。
時間があるときにそちらに伺いたいと思います。
Commented by ゴン at 2011-09-03 01:56 x
私も、『それでも生きてゆく』は興味深く観ています。
私も、どちらの親になりたくないか考えることがあります。
私は女性ですが、答えは・・・加害者の親!!
絶対、加害者の親にはなりたくありません。
もしも・・・
被害者の親になった時には、復讐心は出てくるかもしれません。
酒鬼薔薇聖斗事件、まだ若く ニュースもあまり観ていなかったので 薄っすらしか知りませんでした。
神戸であった事件なのですね。
私、5年程前から神戸に住んでます。垂水に住んでるので
ちと近いかも!?
Commented by sakanoueno-kumo at 2011-09-03 04:21
< ゴンさん
コメントありがとうございます。
そうですか・・・男女の違いと言い切ってしまうことはできないようですね。
ただ、ドラマを見ていると、妻はどうしても大竹しのぶさんに感情移入してしまうようですし、私はやはり、時任三郎さんの苦悩に胸が苦しくなります。

垂水にお住まいなんですね。
私の住まいも垂水です。
右上の似顔絵のような男が歩いていたら、私だと思ってください(笑)。
Commented at 2014-02-07 12:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sakanoueno-kumo at 2014-02-07 18:40
< 非公開コメントさん

コメントありがとうございます。
非公開でのコメントなので、どこまでお応えしていいか迷いましたが、とてもスルーできる内容ではなかったので、ちゃんとお応えさせていただきます。

少年法が、刑罰ではなく少年を保護して再教育するための制度だということは充分理解しているつもりです。
ですが、私の個人的な考えを述べさせてもらえば、殺人とそれ以外の犯罪では、考え方を変えるべきだと常々思っています。
被害者遺族にとっては、加害者が少年か成人かなどはどうでもいいことで、いえることは、死んだ人は二度と生き返らない、どう償っても取り返しのつかない犯罪だということです。
彼は医療の長い矯正教育を受けて更正しているとの仰せですが、だから罪を償ったことになるんですか?
法律上の償いは済んだかもしれませんが、倫理上、殺人犯は生涯、社会的制裁のなか生きていかねばならないと思います。
ましてや、その動機が無差別殺人となれば、なおさら許されるべきことではありません。

つづく
Commented by sakanoueno-kumo at 2014-02-07 18:41
< 非公開コメントさん

つづき
私が文中で「究極のサディスト」と表現したのは、彼の両親の手記を読んだからです。
あまり詳細に言いたくはないのですが、彼は残虐な行為をしていたとき勃起していた、と供述していますよね。
身の毛もよだつ供述ですが、これを性癖といわずにどう説明するんですか?
同性愛者やマゾヒストやサディストなど、先天的な性癖は、矯正で改められるものではありませんよね。
同性愛は罪ではありませんが、殺人は言うまでもなく犯罪です。
先天的な性癖が違法なものだとすれば、やはり、その人間は生まれて来るべきではなかった人間ということになるんじゃないでしょうか。
でも、生まれてきてしまった以上、生涯その性癖を理性で抑えて生きてもらうしかありません。
しかし、彼は理性のタガが外れて罪を犯してしまった。
理性を保てなかったのは少年だったからだと言われるかもしれませんが、だとしても、犯してしまった罪は消えません。

つづく
Commented by sakanoueno-kumo at 2014-02-07 18:41
< 非公開コメントさん

つづき

彼の心の闇はとても深い、と仰られますが、彼が心にどんな深い傷を負っていたとしても、許されるべきことではないでしょう。
また、社会とか環境とか、なんでもかんでも般化して語るのも好きではありません。
貴方は精神科医療の専門家だそうですが、私はその分野にはまったくの門外漢です。
ですが、たぶん貴方の倍近く生きていますし、また、人の親を20年近くしています。
貴方のご意見は、学術的な目線での見解でしょうが、私の目線は、子どもを持つ親として、ひとりの人間としてです。
たぶん、お互い相容れることはできないように思いますね。
長々と失礼しました。

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