江~姫たちの戦国~ 第33話「徳川の嫁」
過酷な戦いとなった「朝鮮の役」において武断派は常に前線で戦う一方、軍監として従軍していた文治派は、その戦いの様子を逐一秀吉に報告。武断派はその報告に偏りがあると感じ、自分たちの働きが秀吉の耳に正確に伝わっていないのではないかと疑念をおぼえ、その憤懣は、この軍監を人選した石田三成に向けられていた。その三成が、「朝鮮の役」の休戦や講和に尽力し、戦後の論功行賞に大きな影響力を及ぼした。大陸に渡り、辛酸をなめつつ奮闘した武断派の彼らにしてみれば、その間、秀吉の側にいてずっとデスクワークをしていた三成に、働きぶりを評価されるというだけでも面白くないことだったが、そんな三成が下した福島正則や加藤清正らの武功の評価は、彼らが受け入れがたいほど低いものだったという。生真面目な三成にしてみれば、その評価は決して間違ってはいなかったのかもしれない。だが、正則や清正にしてみれば面白いはずもなく、前述した三成への感情も加わって、やがては憎悪となっていった。現代でもよく耳にする、現場と事務方の対立の構図である。
そんな一触即発の関係でありながらも、なんとか導火線に引火せずにここまでいられたのは、秀吉の旧友で五大老のひとりでもある前田利家が、両者の間に上手く入っていたからであった。それだけでなく利家は、徳川家康の行動を牽制する立場でもあった。しかし、慶長4年(1599年)閏3月3日、その前田利家が病没してしまう。その直後、利家の死を待っていたかの如く武断派の加藤清正、福島正則、藤堂高虎、黒田長政、浅野幸長、細川忠興、脇坂安治の七将が暴発。大坂の前田屋敷に滞在していた石田三成を殺害すべく襲撃した(石田三成襲撃事件)。しかし、この動きを事前に察知した三成は、佐竹義宣の協力を得て屋敷を逃げ出し、伏見城に逃げ込む。この騒動を収拾したのが、徳川家康だった。家康は武断派を説得して鉾を収めさせ、襲撃した武断派が三成の身柄引き渡しを要求したため、三成を蟄居にすることで手を打たせる。そして閏3月10日、三成は家康の次男・結城秀康の警護のもと佐和山城に戻り、謹慎生活となった。こうして三成は政治の表舞台から遠のくこととなる。
なお、今回のドラマでもそうだったように、物語では欠かせないこの事件の一説として、三成が敵である家康に助けを求め、単身で家康の向島屋敷に入り難を逃れたという逸話があるが、最近ではこの説は否定的な見方が多いようである。その理由としては、これらの典拠となっている史料は明治以降のもので、江戸期に成立した史料に三成が家康屋敷に赴いたことを示すものはないからだとか。しかし、江戸期に作られた三成の史料ほど信頼できないものはなく(江戸時代には三成は悪人と見なされた)、それをもって否定するのも早計な気がする。史料には残っていないが、伝承レベルで残っていたものが明治以降に記述された・・・と考えられなくもない。この逸話は、いってみれば石田三成の豪胆さを示す貴重なエピソードで、この逸話をもってして三成が好きになったという人も多いはず。現在、否定的な見方が多いこの説だが、私は、信じたいと思っている。
いずれにせよ、この事件を収拾したことにより徳川家康はその影響力を拡大し、一方で石田三成は失脚した。一説には、家康自身がこの事件の黒幕だった・・・なんて俗説もあるが、それは穿ち過ぎとしても、武断派と文治派の対立が家康にとって有利にはたらいたことは間違いない。これ以降、豊臣政権の政務は家康が一手に握ることとなる。
本来なら3話ぐらいに分けてもよかったほどの内容を1話にまとめて、さらにタイトルにある『徳川の嫁』の話も進め、かなり詰め込み感満載となってしまった今話だったが、あくまで主役はお江の物語だから、これも仕方がないといったところだろうか。
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by sakanoueno-kumo | 2011-08-31 00:25 | 江~姫たちの戦国~ | Trackback(3) | Comments(0)

関ヶ原の戦いがどのようなものだったのか、それをしっかりと把握したいという思いから、司馬遼太郎の「関ヶ原」という時代小説3巻を読んでみました。そこには、秀吉の死語に家康が考え抜いた様々な諜略とそれを支えた本多正信の動きがつぶさに記述されていて、スリリングな状況がそこにはあったことを知ることができます。 それを見ているからなのかもしれませんが、今回の江というドラマの中で描かれる家康や正信はずいぶん丸く優しい人物に描いているようで、そのギャップに悩まされています。例えば、三成が豊臣ゆかりの武将たちに囲まれ...... more

第33回の視聴率は、前回の15.4%より少し上がって、15.6%でした。今回は「徳川の嫁」という副題なので、ホームドラマになるのではと思ったのですが、違いましたね。家康と三成の対立...... more

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