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世界陸上大邱大会における、フライング一発失格に思う。(後編)

昨日の続きです。
世界陸上大邱(テグ)大会で新たに導入されたフライング一発失格のルール改正により、男子100メートル決勝で世界記録保持者のウサイン・ボルト選手が失格となり、巷では「厳しすぎる」との声が高まっているようです。
私も、少々厳しすぎるような気がしないでもないと昨日は述べましたが、でも、たしかに以前はフライングの続出で競技進行の妨げになるケースが多々あり、それはそれで問題だとは思っていました。
かつては、「同一選手が2度目のフライングをした際に失格」となっていましたが、あまりにもフライングが続出していたずらに体力を消耗し、選手の集中力の維持に支障をきたす事態が続いたため、2003年に「1度フライングがあった後は、誰が違反しても失格」といったルールに改正されました。
しかしこのルールも問題で、敵を揺さぶるため、1回目に故意のフライングをするという心理作戦として悪用する選手が後を絶たず、2009年8月に開かれた国際陸連総会で1回目からの失格が承認され、現行ルールに至ったそうです。
一長一短ではあるものの、やむを得ない改正といったところでしょうか。

フライングで思い出されるのは、織田裕二さんと中井美穂さんのコンビが初めてキャスターを務めた、1997年の世界陸上アテネ大会での女子100メートルの決勝。
レースは当時38歳のベテラン、ジャマイカのマリーン・オッティ選手とアメリカの新星マリオン・ジョーンズ選手の対決に世間の注目が集まっていました。
オッティ選手は常に優勝候補と目されながらも、大きな大会ではいつも3位に終わってしまうことが多く、ブロンズの女王なんて不名誉なあだ名で呼ばれていた選手です。
でも、私はこのオッティ選手が好きだったんですよねぇ。
明るく楽天的なジャマイカ人のイメージとは違い、競技に対して真面目直向きというか、なんとなく日本人っぽくて・・・。
実力がありながら万年3位というところも、なんか日本人っぽくないですか?
ですから、当然このときも、オッティ選手を応援していました。

しかし、勝負はオッティ選手でもジョーンズ選手でもない、第三者のフライングによって明暗を分けることになりました。
このとき、たしかにスタートの鉄砲音とフライングの鉄砲音の間隔が短かったような気がしましたが、スタートを切った全選手の中でオッティ選手だけがフライングに気づかず、他の選手がレースを取り止めているのに彼女だけが70mほど全力疾走してしまいました。
競技はルールにそって、直後の仕切り直しとなるわけですが、70mも全力疾走してしまったオッティ選手は、当然かなりの体力を消耗してしまっています。
そこからゆっくり歩いて時間を稼ぎながら、息を整えてスタートラインに戻りましたが、38歳の肉体がそう簡単に回復するはずもなく、おそらくモチベーションも下がってしまったことでしょう。
結果はジョーンズ選手の優勝、オッティ選手は7位に沈みました。
あのとき、オッティ選手に対する同情の声と、フライングに気付かなかった彼女を責める声とがありましたが、私は、彼女がそれだけ自分の走りに集中していたということの表れだと思いますし、むしろ一流のアスリートとしてあるべき姿だったとさえ思います。
そう考えれば、フライングは自身のみならず、最高のスタートを切ったかもしれない他の選手に対しても罪な行為であり、一発失格もやむを得ないかもしれませんね。

ウサイン・ボルト選手は失格処分後の会見で、「フライングは完全に自分の責任だ。今後の教訓にしたい。」と潔く落度を認めており、また、自身の失格によってこの度のルール改正の見直しも含めた賛否両論の声が上がっていることに対しても、「ルールを変えるべきだとは思わない。」と発言しています。
さすがは、世界最速男の余裕ですね。
来年のロンドン五輪でもこのルールが適用されることはほぼ間違いないでしょうから、今度こそは最高のスタートを決めて、世界新記録を樹立して欲しいものです。

ちなみに上述したマリーン・オッティ選手は、その後もジャマイカからスロベニアに国籍を移してアテネ五輪に出場し、2007年の世界陸上大阪大会には47歳という年齢での出場を果たし、51歳の現在でも現役選手を続けているとか。
2000年に記録した10秒9940歳以上の世界記録で、2010年に記録した11秒6750歳以上の世界記録だそうです。
もし、あのときの不運なフライングがなくレースに勝っていれば、有終の美を飾って引退していたかもしれませんね。
今では「生涯現役」をモットーとしているそうですが、彼女にしてみれば、レースを途中で止めるのは、もう“真っ平御免”といったところかもしれません。
人生のフライングは、やり直しは効きませんから・・・。

マリーン・オッティ選手・・・心に残る、伝説のスプリンターです。

世界陸上大邱大会における、フライング一発失格に思う。(前編)


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by sakanoueno-kumo | 2011-09-10 18:41 | 他スポーツ | Comments(0)  

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