ドラマ『運命の人』にみる、「国民の知る権利」の危険性。

今、『運命の人』という連続ドラマをやってますよね。
『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』などで知られる山崎豊子氏の原作小説のドラマ化で、今から約40年前の沖縄返還密約をめぐり元新聞記者が逮捕されたという実際の事件を下敷きにした物語です。
当時、私は5歳でしたからこの事件を知るはずもなく、原作小説も読んでいないので何の予備知識もありませんが、さすがは数々の名作を世におくりだした巨匠の作品、第一話を見逃したにもかかわらずハマっております。
物語も引きこまれますが、当時の政治家さんたちを演じられる俳優さんたちのキャスティングがハマり過ぎてて笑っちゃうほどなんですよね。
田中角栄元総理をモデルとした田淵角造役の不破万作さんや大平正芳元総理をモデルとした小平正良役の柄本明さんなど、いずれも「上手いな〜」と感心してしまいますし、福田赳夫元総理をモデルとした福出武夫役の笹野高史さんなんて、はっきり言ってそのまんまですよ(笑)! 
佐藤栄作元総理をモデルとした佐橋総理役の北大路欣也さんは少々カッコよすぎる気がしないでもないですが、これは物語の役どころ上、仕方がないでしょうね(まあ、実際の佐藤栄作氏もダンディーな人でしたけどね)。

で、先日第4話を観ましたが、物語は本木雅弘さん演じる主人公の弓成記者が、外務省の機密文書漏洩に際して、真木よう子さん演じる外務省勤務の女性事務官に機密文書を持ち出すようそそのかした罪で逮捕されてしまいます。
一方その頃、弓成記者が所属する毎朝新聞社では「報道の自由を守ろう」という気運が高まり、他の新聞社も巻き込んで「国民の知る権利」をうたった一大キャンペーンが展開され、逮捕拘束中の弓成記者は一躍世論によって英雄視され、釈放に至ったとう話でした。

実際のこの事件のときもドラマのような世論だったのかは、当時5歳だった私は知るはずもありませんが、ドラマ中やたらと連呼されていた「国民の知る権利」という言葉は、私たちも記憶に新しい言葉ですよね。
そう、一昨年の尖閣諸島沖漁船衝突事件の折り、当時の菅直人内閣が公開していなかった衝突事件の一部始終が撮影された動画を、「sengoku38」なる登録名を名乗った現職の海上保安官が無断でYouTube上に投稿した、あの尖閣ビデオ流出事件の際です。
あのときの世論も「国民の知る権利」が声高にうたわれ、sengoku38氏の行動を「よくやった!」と支持するといった声が大半を締め、一躍時の人として英雄扱いされていました。
でも、当時は言うと袋叩きに合いそうな雰囲気だったので発言しませんでしたが、私は正直言って彼を英雄扱いする空気は危険極まりないと思っていましたけどね。

たしかに映像を見れば、国家機密に値するような内容だとはとても思えず、政府が何を頑なに秘匿しているのか理解に苦しむものでしたが、だからといって、政府が国家機密としているものを、国家公務員の末端の一兵卒である海上保安官が独断で公開するなどあってはならないことで、そこが崩れたら国家は成り立たなくなるんじゃないでしょうか。
「国民の知る権利」はたしかに大切ですが、その前に公務員には守らなければならない秘匿義務があり、この行動を許せば、第二第三のsengoku38氏を生むことになり、それはともすれば国家の秩序を破綻させることで、その先に見えるのは国の破滅といっても大げさではないと思えるわけで・・・。
にもかかわらず、sengoku38氏の行動は「愛国心に燃えた憂国の士だ」などと擁護され、半ば世論に負けるようなかたちで不起訴処分となり、海上保安官という職は自主退職というかたちで辞めることになったものの、その後、著書を出版したり、コメンテーターとしてテレビやラジオに出演したりと、ちょっと勘違いしていませんか?・・・と言いたくなるようなご活躍ぶりです。

このドラマの主人公のモデルである元新聞記者の西山太吉氏は、公務員でもないのに国家公務員法違反の罪を問われ、当時の国家権力によって葬り去られた人物といっていいのでしょう。
一方、本来ならば国家公務員法違反の罪を問われても仕方がなかったsengoku38こと一色正春氏は、今やまるでウィキリークスの創設者、ジュリアン・アサンジ氏のような英雄扱いです。
この違いは、この三十余年でそれだけ日本は進歩した良い国になったということでしょうか?
私には、その逆に思えてならないですけどね。

話をドラマに戻しますが、主人公の弓成記者のライバルで、大森南朋さん演じる読日新聞政治部の山部記者のモデルは、ナベツネさんこと渡邉恒夫氏だそうですね。
何ともカッコよすぎる配役ですが、あろうことか、ご本人がその人物像にクレームをつけているそうで・・・。
なんでも、料亭で政治家(田中角栄のモデル)にペコペコしながらごちそうになったり、買収される下等な「たかり記者」のように描かれていることを、そんな事実はないとして激怒しているとか。
いつものことながら、態度はデカイけど度量は小さい人ですね、このジイさんは・・・。
ムキになって怒ったほうが、かえって図星なんじゃない?・・・と思われちゃいますよ。


ブログ村ランキングに参加しています。
よろしければ、応援クリック頂けると励みになります。
   ↓↓↓


by sakanoueno-kumo | 2012-02-09 20:42 | その他ドラマ | Trackback(1) | Comments(4)  

トラックバックURL : https://signboard.exblog.jp/tb/17346726
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Tracked from 早乙女乱子とSPIRIT.. at 2012-02-15 00:47
タイトル : 理想と現実の間 〜運命の人・第5話感想〜
ڤ̩ƤȤФ졢Ĥ˥˴ޤƤ פ뤿˵ˤΤ礭夲Ƥ ʤȤˤʤäƤʤ ۸ΤΤΤʤ?ɡڤˤƤ⡢⤦ʾ弫ʬ餤ʤä?ʤ öơ ɤعԤ ö۸ΤȲȤԤƮä?ɡ ϽεԤɤʤ⡢ȤνǼ²Ȥդ롣 ˤƤ⾾Ҥ餸Ƥ뤫˸ʤ ޡϰɽ ̾⤤ƣɺ ء֥ƥӥϤɤ? ƥӥġɤNHKȤɤ˲ȤäѤäƤʤʡϤääʹԤνȤäʤȤˤƤ㤦Ǥ衢ͤϹ̱ľäʹˤʤʸ...... more
Commented by みや at 2012-02-10 12:40 x
私はドラマを見ていないのですが、尖閣の流出問題について同じように感じておりました。その後、上司や同僚がどれほど迷惑を被った事か想像すると気の毒でなりません。

権力に反抗する事はなんとなく勇気ある行動に思いがちですが、組織をまとめる方の苦労を思うといたたまれない時があります。
Commented by sakanoueno-kumo at 2012-02-10 18:10
< みやさん
まったくですね。
“権利”と“自由”とか、言葉にすれば聞こえはいいですが、その前に守らなければならない“規則”や“秩序”があり、それがなくなったら組織は成り立たなくなる・・・それは学校や会社という組織でもそうですが、国家という組織も同じだと思います。
しかし、あのときほとんどのマスコミが彼に同情的でしたし、中には「よくやった」と絶賛するキャスターもいましたよね(誰とはいいませんが)。
これはとっても怖いことなんじゃないかと思います。
Commented by フシチョウ at 2012-02-14 17:54 x
いつも我が意を得たり、といった感じで楽しく読ませて頂いてます。
尖閣の問題についても同じように感じていました。最近、あまりに世論と言われるものがあやしいものだと感じることが多くなりました。
sakanoueno-kumoさんのようなご意見もネット上では時々お見かけすることを考えると本当の世論は何なのか全く分からなくなりますね。
Commented by sakanoueno-kumo at 2012-02-14 20:26
< フシチョウさん
なるほど、おっしゃるとおりかもしれませんね。
近年の世論というのは、白か黒かにハッキリしすぎているように思います。
しかも、どちらかに極端に偏っていることが多いようにも思いますね。
私は小泉政権支持者ですが、そういった傾向というのは小泉政権以降、如実になってきたような気がします。
わかりやすいのは悪いことではないのでしょうが、一度立ち止まって、物事を両面から見るということも必要だと思います。
尖閣のビデオを公開しなかった当時の内閣は確かに理解しがたいものでしたが、だからといって公務員が政府の意向に背いていいの?・・・と。
物事を片方だけからしか見ないでいると、大切なものを見落としがちになり、大変な過ちを犯す場合があると・・・。

<< 大平シローさんの急逝を悼む。 平清盛 第5話「海賊討伐」 >>