軍師官兵衛 第40話「小田原の落日」 ~石垣山一夜城~
であればと、秀吉は仲介に入ります。秀吉は真田氏が占領していた沼田3万石のうち3分の2を北条氏に返還させ、名胡桃城を含む3分の1を真田氏のものとする裁定を下し、氏政・氏直父子のどちらかの上洛を約束させました。これですべてが上手く治まったかに見えたのですが、それでも北条氏は重い腰を上げようとはせず、そんななか、北条配下の沼田城主・猪俣邦憲が名胡桃城を武力で奪い返す事件が発生。これに怒った秀吉は、大名同士の私闘を禁じた惣無事令に反するとして、小田原征伐を諸大名に発令。宣戦を布告します。
天正18年(1590年)3月、秀吉は総勢22万という大軍を引き連れ、小田原城に向かいました。その中には、黒田官兵衛、長政父子もいます。一方の北条軍は、小田原城に惣構を築いて迎え撃つ体制を整えます。かつては上杉謙信や武田信玄ですら落とせなかった難攻不落の小田原城。兵糧や武器弾薬は豊富に備蓄され、支城とのネットワークを活用すれば、豊臣軍とて跳ね返せる自信があったのでしょう。しかし、豊臣軍は端から小田原城に攻め込む気などなく、大軍で包囲して城に籠もらせることが目的でした。このあたり、氏政・氏直父子の読みが甘かったといえるでしょうね。
豊臣軍は小田原城に睨みを効かせて閉じ込めておきつつ、周りの支城を次々に落としていきます。更に追い打ちをかけるように、北条氏と同盟関係にあった伊達政宗までもが豊臣軍の傘下に下ります。もはや北条氏に味方する大名はおらず、孤立無援状態となった城内では、士気が下がる一方でした。
そんなとき、小田原城に籠もる城兵たちの度肝をぬく出来事が起こります。小田原城からわずか3kmほどの距離にある山上に、突如、豊臣軍の城が姿を表したんですね。この城は一夜にして完成したという逸話から、「石垣山一夜城」と称されますが、もちろん一夜で築かれたなんてことはあり得ないわけで、着陣早々から秀吉は小田原城から見えない場所に密かに築城を進め、城が完成したと同時に周りの樹木を伐採するといった演出を実行したため、それを見ていた小田原城の籠城兵たちは、まるで突然城が姿を表したとしか思えない錯覚に陥り、その秀吉の規格外な力を目の当たりにして、ますます士気が下がります。
ここまでくればもはや勝負は決したも同然で、双方これ以上、無駄な血を流すことを避けるべく和議の方向へ舵を切ります。その交渉役に任じられたのが、ほかならぬ官兵衛でした。官兵衛は敵陣に向けて和睦の意を表した矢文を放ち、酒樽などの陣中見舞いを贈ると、北条氏政は返礼に武器弾薬を送り付けてきました。ドラマでは、これは城内にまだ武器弾薬が有り余っているという、余裕を見せつけるための行為としていましたが、別の解釈では、もうこれ以上戦う気はないといった意思表示という見方もあるようです。いずれにせよ、これを好機とみた官兵衛は、ドラマのとおり、単身丸腰で小田原城に乗り込みました。その毅然とした姿に城兵は圧倒され、誰も官兵衛に矢を向けなかったと伝えられます。
官兵衛の小田原城開城の説得に対して、氏政はなかなか首を縦に振らなかったといいますが、息子の氏直は開城命令を受け入れ、自らの命と引き換えに父・氏政と城兵の助命嘆願を行います。これを聞いた秀吉は大いに喜び、氏直の死罪は取り消しますが、氏政には切腹を命じました。また、氏直も切腹こそ免れたものの、無罪放免とはならず高野山に追放となります。秀吉は官兵衛の功績を大いに称えますが、官兵衛にしてみれば、氏政の助命を説得できなかったことが、多少心残りの結末だったかもしれません。
ちなみに、ドラマでは官兵衛が出した和議の条件として、伊豆・相模・武蔵領の安堵とありましたが、これについては、『黒田家譜』や『異本小田原記』など後世になって成立した史料にのみ見られる説のようで、最近では否定的な見方が強いようです。本領安堵を条件に和議を結び、あとで約束を反故にする・・・。なんか、数話前にも観たような話ですね。
ちなみにちなみに、支城攻めに失敗した石田三成を秀吉が罵る場面がありましたが、三成が攻めた忍城は、小田原城の支城の中で唯一最後まで落城しなかった城で、最近では、映画『のぼうの城』でも描かれていた舞台ですね。吏僚としての才覚には長けていた三成ですが、武功には乏しく、その汚名返上とばかりに大規模な水攻めで臨みますが、結局小田原城の開城まで忍城は持ち堪え、三成の面目は丸つぶれとなった戦いです。それにしても、本作での三成は小者感丸出しですね。まあ、黒田家視点で見れば三成はああなるのかもしれませんが、仮にも関ヶ原の西軍の大将。ヒール役はいいとしても、もうちょっと、大物感があってもいいのかなぁ・・・と。
そんな三成と武断派の確執が決定的となるのが、次週から描かれる「朝鮮出兵」です。
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by sakanoueno-kumo | 2014-10-07 00:52 | 軍師官兵衛 | Trackback | Comments(2)
主人公を悪者にしないために悪役が作られるというのは大河にありがちな配役ですが今回の場合は秀吉がよくやってくれていますから、あそこまで三成を貶めないでもいいのにって気もします。
私は、三成をヒール役にすること自体には否定するつもりはないんですけどね。
ただ、ヒール役にするにしても、もうちょっと懐の深い人物にしてほしかったなあと・・・。
それにしても、三成役の俳優さんは、名前は知らないのですが上手いですね。
あれほど憎たらしい演技は、そうそうできるものではないなあと。