花燃ゆ 第43話「萩の乱に誓う」 ~激動の幕末長州藩の終焉~

 明治9年(1876年)10月28日、山口県はにおいて、不平士族たちの新政府に対する反乱が勃発します。その首謀者は松下村塾生だった前原一誠。決起の趣意書には、「木戸孝允等帷幄に出入し、寵待此なく、しこうして先君の業、掠めて己の功となし」(原文は漢文)と書かれていました。つまり、木戸孝允ら政府高官たちは、先君・毛利家の地をほしいままにしている、と。廃藩置県から4年の歳月が過ぎていましたが、士族たちの心は、未だ毛利家の家臣だったんですね。

 維新後一時期、前原は新政府の参議、兵部省の兵部大輔を務めていました。ただ、前原の登用は、彼の識見や経験を斟酌されたものではなく、前任の大村益次郎暗殺されたため、同じ長州閥から繰り上がりで抜擢されたようなものでした。幕末に多くの有能な人材を失っていた長州藩は、薩摩藩に比べて人材が少なかったんですね。そんななか、同じ松下村塾出身の伊藤博文山縣有朋の出世に便乗して、前原も政府高官に登用されたといった感じでした。しかし、そもそも軍事の専門家ではない前原は、あまり出仕することがなかったようです。やがて徴兵制をめぐって木戸、山縣と対立し、明治3年(1870年)9月に追われるように政府を去ります。先述した決起の趣意書からも、木戸に対する恨み節が感じ取れますよね。

 その後、版籍奉還、廃藩置県で全国の諸藩が解体されると、新政府に反発を抱く不平士族が全国各地にあふれはじめます。そんななか、政府内も権力抗争のゴタゴタが続くのですが、明治6年の政変(征韓論政変)によって、西郷隆盛、江藤新平、副島種臣、板垣退助らが参議を辞任すると、新政府の軍人、高官の多くが西郷らと行動を共にしました。日本中に、新政府と不平士族らの一触即発の空気が漂いはじめます。

 最初に決起したのは、佐賀県でした。これまでずっと薩長の下風に立たされてきたことへの憤懣もあり、加えて江藤、副島が政府からはじき出されたことが導火線となり、明治7年(1876年)2月1日、帰郷した江藤が3千人近い不平士族の神輿に担ぎあげられて挙兵します。いわゆる「佐賀の乱」ですね。しかし、大久保利通の指揮する新政府軍によってまたたく間に鎮圧され、首謀者の江藤は即刻、斬首、梟首となります。不平士族たちへの見せしめですね。

 その後、政府は不平士族たちの特権をさらに削ぐべく、明治9年(1876年)に帯刀禁止令、秩禄処分を断行します。これによって、不平士族たちの憤懣はいっぺんに頂点に達し、同年10月24日に熊本県で太田黒伴雄らが「神風連の乱」を、続いて10月27日には福岡県秋月町で宮崎車之助らが「秋月の乱」を起こします。神風連の乱はわずか1日で鎮圧されましたが、秋月の乱勃発の報が短時間で萩に伝わり、これを千載一遇の好機とみた前原は、10月28日に挙兵します。これが、「萩の乱」勃発までの経緯です。

 しかし、前原にはそれほど人望カリスマ性もなかったのでしょうか。集まった士族は150人にも満たず、これでは大反乱になるべくもなく、たちまち広島鎮台兵によって鎮圧されます。前原は逃亡先の島根県下で捕縛され、首謀者として即日、斬首となります。享年43歳

 前原も江藤も太田黒も宮崎も、挙兵した彼らはみんな鹿児島の西郷の決起を期待していました。乱を起こせば、必ず西郷が起ってくれるに違いない・・・と。この頃、不平士族にとって西郷の声望は、まことに巨大なものになっていました。彼らのあいだでは、西郷は精神的支柱だったんですね。ところが、当の西郷はなかなか動かない。結局、それぞれの反乱が連携することなく単発で終わってしまい、前原たちの思いは砕け散りました。もし、このとき西郷が動いていたら、歴史はどうなっていたんでしょうね。

 この萩の乱には、美和の一族が深く関与していました。ドラマでは美和の甥にあたる吉田小太郎杉民治の長男)しか出てきませんでしたが、民治長女の婿養子で玉木文之進の跡取でもある玉木正誼も、乱に加わり討死しています。一族から二人も反乱者を出し、さらに、首謀者である前原が松下村塾出身であったことから、玉木文之進はその道義的責任を痛感し、同年11月6日に萩の山中で自刃して果てます。享年67歳。松下村塾の創設者であり、吉田松陰の師でもある文之進は、ある意味、激動の幕末長州藩の生みの親ともいえます。その生みの親が、長州藩の最後の武士たちと運命を共にしたというのは、なんとも出来過ぎたドラマですね。彼の死が、幕末長州藩にピリオドを打ったといえます。


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by sakanoueno-kumo | 2015-10-26 21:47 | 花燃ゆ | Trackback | Comments(0)  

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