西郷どん 第2話「立派なお侍」 ~郡方書役としての西郷吉之助~

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 弘化元年(1844年)、西郷吉之助(隆盛)は数えの18歳で郡方書役助に任じられ、藩の役人の末席に名を連ねます。この役職は、農政を担当する郡奉行の配下で、役人としては最下級でした。そのお役目の具体的な内容は、藩内のあちこちを常に巡回して、道路などの普請の必要性を調べたり、農家のの出来具合を管理し、年貢徴収の監督にあたるというものでした。西郷はこのポスト(やがて書役に昇進)を約10年間務めることとなり、そのため困窮している農民の実態を熟知し、農政に精通するようになります。西郷の官吏としての実務能力は優れていたようで、そのことは、これより十数年後の安政3年(1856年)に島津斉彬に直接提出したとされる農政に関する上書からも窺えます。

 また、西郷はこの職務を長く務めたことで、農民に対する深い愛情の心を持つようになったといわれます。もちろん、西郷もこの時代の武士階級一般と同じく、「愚民観」の持ち主でしたが、だからこそ、支配階級である武士として農民を助けなければならないという信念を持っていたようです。ドラマでは、借金のかたに売られそうになっていた少女を助けるために力を尽くしていましたが、似たようなエピソードが伝えられています。


 若き日の西郷が年貢の徴収作業にあたっていたとき、年貢を払えずに農耕馬を泣く泣く手放そうとしていた農夫が、夜中に愛馬と別れを惜しんでいる姿をたまたま目撃します。翌日、西郷は役所に掛け合って年貢の徴収を延期してもらったといいます。このエピソードは西郷伝には欠かせない話で、西郷の農民に対する深い愛情と、弱い者や貧しく不幸な人に対する生来の情の厚さが窺えます。


 ドラマには出てきていませんが、西郷がこの職に就いた当初の上司(郡奉行)は、名奉行として知られた迫田太次右衛門利済という人物でした。迫田は見識が高く気骨がある人物だったといい、農民への同情心に厚く、困窮した農民の生活を守るため、年貢の減額の嘆願書を藩に提出し、それが聞き入れられないと、激しく義憤して奉行を辞職してしまいました。迫田の辞職は西郷が書役助に就いて間もないころのことで、その後の西郷の人格形成に、大きな影響を与えたといわれます。

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 西郷が郡方書役助の役職に就いた2年後の弘化3年(1846年)、西郷より3つ年下の大久保正助(利通)は、記録所書役助に任じられます。書役の主な職務は、古い文書を管理し、藩内の様々な記録を整理するというお役目。いわば事務官ですね。沈着冷静な実務家の大久保には、うってつけのお役目だったといえるでしょうか。それにしても、西郷と大久保、この2人の役人としての出発点の対比は、実におもしろいですね。西郷は農村を歩き回って実態を調べる外回りの役目で、大久保は役所に詰める事務職。まるで、将来の2人の関係を暗示しているかのようです。庶民の声望高き革命家・西郷隆盛と、官僚を統率する政治家・大久保利通の原点は、ここにあったのかもしれません。



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by sakanoueno-kumo | 2018-01-16 16:41 | 西郷どん | Trackback(1) | Comments(2)  

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Tracked from 平太郎独白録 親愛なるア.. at 2018-01-17 17:24
タイトル : 天文学的な債務の幕末薩摩藩的返済方法 その1
以前、平太郎独白録 「30代の私よりの3通の手紙。」の中で、平成12年頃の走り書きが出てきた際、「現在、日本には700兆円という天文学的な国債という借金がある」ということについて触れ、それに対して、「まず、元栓を締めること・・・」と述べましたが、では、それが成功したとして、その後、これだけの多額の負債をどうやって返すか?という問題が浮上してくると思います。そして、その唯一のモデルケースがあると申し上げました。で、これに対しては、「踏み倒すしかない」という短絡的な意見もあるようですが、徳政令というもの...... more
Commented by heitaroh at 2018-01-18 11:43
すんもはんど、第二話は殆ど早送りで見てしまいもした(笑)。
Commented by sakanoueno-kumo at 2018-01-18 19:00
> heitarohさん
よかよか。
よかんど(笑)。

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