西郷どん 第10話「篤姫はどこへ」 ~篤姫の輿入れと将軍継嗣問題~

 篤姫輿入れ先が明らかになりましたね。幕末ファン、大河ドラマファンの方々にとっては言うまでもないことだと思いますが、島津斉彬の養女となった篤姫の輿入れ先は、江戸幕府第13代将軍・徳川家定正室でした。外様大名の分家の娘が、一国のファーストレディーになるというのですから、当時としては、ちょっとしたシンデレラストーリーだったことでしょう。その篤姫の輿入れに西郷吉之助(隆盛)も深く関わることになるのですが、それは、もう少し先のことになります。


e0158128_20010581.jpg この縁談に関しては、昔から斉彬が一橋慶喜(のちの徳川慶喜)の将軍継嗣を実現するために仕組んだとの説があります。第13代将軍の家定は病弱で言動も定かではなかったといわれ(一説には、脳性麻痺だったとも)、政務を満足に行える人ではなかったといいます。折しも世情は黒船来航後の混乱の時代を迎えており、大事に対応できる有能な指導者を必要としていました。そこで斉彬たちが期待を寄せたのが、英明との誉れ高かった慶喜でした。ドラマのヒー様です。そのヒー様の次期将軍擁立を推していたのは、斉彬をはじめ、越前福井藩主の松平慶永(春嶽)や水戸の徳川斉昭などの開明派と呼ばれる有力諸侯でした。


これに対して、保守的な譜代大名たちは、家定に血筋が近い紀伊の徳川慶福(のちの徳川家茂)を擁立しようとします。ここに次期将軍の座を巡る派閥が生まれ、前者を一橋派、後者を南紀派と呼ぶようになります。その一橋派の筆頭が斉彬で、南紀派の筆頭が、のちに大老となる彦根藩主・井伊直弼でした。しかし、井伊家は代々幕府大老を排出してきた譜代大名であるのに対し、島津家は、77万石を誇る大大名とはいえ、末席に位置する外様大名という立場に過ぎません。そこで、斉彬は篤姫の輿入れを画策したというんですね。すなわち、篤姫を将軍家に輿入れさせることで、その義父という立場で自身の発言力を高め、慶喜の次期将軍を実現させようと考えたという説です。なるほど、説得力のある話です。今話のラストシーンの斉彬と西郷の会話から見ても、たぶん、今回もその説をベースに描かれるのでしょうね。


 しかし、歴史家さんたちの間では、現在ではその説はほぼ否定されています。というのも、そもそも篤姫の輿入れの案が出たのは、将軍継嗣問題が生じる前のことでした。それも、この縁談を持ちかけたのは島津家からではなく、幕府側からだったといいます。その理由はいくつかありますが、まず、将軍家と島津家がすでに姻戚関係にあったということ。薩摩藩第5代藩主・島津継豊に幕府第8代将軍・徳川吉宗の養女・竹姫が輿入れし、その竹姫の孫にあたる薩摩藩第8代藩主・島津重豪の三女・茂姫(のちの広大院)が、幕府第11代将軍・徳川家斉の正室として輿入れしたという実績がありました。つまり、篤姫の縁組以前から、将軍家と島津家は深い結び付きがあったわけです。これは、外様大名としては例のないことでした。


e0158128_00524727.jpg また、その茂姫が、健康長寿だったことも大きな理由だったと考えられます。茂姫は50年近くも大奥・御台所の地位にあり、しかも、子沢山に恵まれました。彼女の血を引く大名や大名夫人が全国に15人もいて、しかもそれらの面々が皆、元気長寿だったといいます。幕府は、これにあやかろうとしたというんですね。あまり知られていませんが、家定は篤姫を正室として迎える前に、公家出身の女性を二度、娶っていましたが、ふたりとも若くして亡くなっていました。そこで幕府は、3人目の正室は、公家出身ではなく武家出身の女性を求めたとも言われます。そこで白羽の矢が立ったのが、健康で子沢山だった茂姫の実家、島津家だったわけです。つまり、この縁談を欲したのは、徳川家のほうだったんですね。


 もっとも、島津家にとっても、この縁談は大いにメリットがありました。茂姫の死後、家格が低下していた島津家の地位を復活させる意味でも、この縁談は願ったり叶ったりだったでしょう。また、斉彬と懇意だったといわれる幕府老中首座・阿部正弘の意向もあったでしょうね。阿部正弘は斉彬を始めとする有能な諸侯の意見を積極的の取り入れたいという方針の持ち主でした。その対策として、島津家との縁組を画策したとも考えられます。いずれにせよ、将軍継嗣問題は別にしても、篤姫の輿入れは、島津家にとって政治だったことは間違いないでしょう。


 ちなみに余談ですが、ヒー様こと慶喜役松田翔太さんは、10年前の大河ドラマ『篤姫』では、政敵の南紀派が擁立する家茂役でしたね。慶喜、家茂の両方を演じた俳優さんは、松田翔太さんが初めてなんじゃないでしょうか。だからどうということはないのですが。


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by sakanoueno-kumo | 2018-03-12 00:54 | 西郷どん | Trackback | Comments(6)  

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Commented by heitaroh at 2018-03-13 17:32
えー!篤姫の家茂役は、松田翔太だったんですか?!今初めて両者が同一人物だと知りました。
大久保と小松の両方を演じた俳優も珍しいんじゃ無いですか?(笑)。
Commented by sakanoueno-kumo at 2018-03-13 23:22
> heitarohさん

たしかに(笑)。
ついでに言えば、大久保と斉興を演じた俳優さんも出てますが(笑)。
Commented by heitaroh at 2018-03-20 11:14
有村俊斎と井伊直弼を演じた俳優も出てますよ(笑)。
Commented by sakanoueno-kumo at 2018-03-21 00:29
> heitarohさん

たしかに(爆)!

ちなみに、銀ちゃんとヤスと小夏も出てます・・・って、ちょっと話が違いますか?!
Commented by heitaroh at 2018-03-23 11:56
そうそう!それ、私も思いました。
まあ、大御所俳優使ってれば、過去にどこかで共演してるんでしょうが。
Commented by sakanoueno-kumo at 2018-03-23 23:39
> heitarohさん

ところが、それぞれ2人の共演は何度かあったようですが、3人が揃うのは『蒲田行進曲』以来だそうですよ。
あのとき既に大スターだった松坂慶子さんに対して、風間杜夫さんと平田満男さんはあの映画がヒットするまでそれほど有名ではなかったので、当時は気おくれしてあまり喋らなかったんだとか。
35年後にこんなところで3人揃うとは思いもしなかったでしょうね。

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