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幕末京都逍遥 その119 「金福寺(村山たか隠棲地)」

前稿で紹介した詩仙堂から200mほど南下したところにある金福寺は、幕末の女スパイ・村山たかが晩年を過ごした隠棲地と伝えられます。


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金福寺は貞観6年(864年)に慈覚大師円仁の遺志により、安恵僧都が創建したと伝えられる古いお寺です。

その後、荒廃していましたが、元禄年間(1688年~1704年)に圓光寺鉄舟によって再興されました。

その後鉄舟と親しかった松尾芭蕉が、京都に旅行した際に庭園の裏側にある草庵を訪れ、風流を語り合ったとされたため、のちに芭蕉庵と名付けられたそうですが、その後、荒廃していたため、芭蕉を敬慕する与謝蕪村とその一門が安永5年(1776年)に再興しました。


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幕末、幕府大老・井伊直弼スパイとして働いた村山たかが尼として入寺し、ここで生涯を閉じました。

山門横には、たかが創建したとされる弁天堂があります。


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20歳で祇園の芸妓となったたかは、男児を出産するもシングルマザーとなり、子供を連れて生まれ故郷の彦根に帰りますが、そこで、当時、部屋住みとして過ごしていた井伊直弼と出会って男女の関係となります。

直弼は彦根藩第14代藩主・井伊直中十四男で、本来は藩主の座に就く可能性はほとんどゼロに近い境遇でした。

だから、芸者崩れと情交を結んでも、誰も咎めたりはしなかったのでしょうね。


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ところが、直弼はその後、数奇な運命によって藩主の座に就き、さらに、幕末の混乱した政局のなか、幕府大老職に就任します。

たかは捨てられました。


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しかし、その後、たかは直弼のブレーンだった長野主膳に保護され(一説には男女の仲となり)、安政の大獄の際には京都にいる反幕府勢力の情報を江戸に送るスパイとして暗躍します。

彼女が主膳に送ったタレコミの手紙が何通も残っているそうです。

たかは日本の政権に属した女性工作員としては、史上初めて名をとどめる存在となります。


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安政7年3月3日(1860年3月24日)に起きた桜田門外の変で直弼が暗殺されると、文久2年(1862年)にたかも尊攘派の志士たちに捕らえられ、三条河原に3日3晩生き晒しにされましたが、女性ということで殺害は免れます。

しかし、息子の多田帯刀は母親のかわりに土佐藩の岡田以蔵らによって斬殺され、首を晒されました。


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その後、たかは出家してここ金福寺に入り、明治9年(1876年)に67歳で亡くなるまでの14年間を尼僧としてここで過ごします。


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本堂内には、たかにまつわる品々が展示されています。

上の写真は、「たか女晒し者の図」


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こちらは、たかが59歳のときに刺繍した壇引だそうです。


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たかの筆跡だそうです。


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こちらは、長野主膳の妻・多起に宛てた書状だそうです。


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境内の裏山には、たかの参り墓があります。

彼女の本墓は圓光寺にありますが、ここ金福寺にも、彼女の菩提を弔うための本墓の土を埋め、彼女の筆跡を刻んで参り墓としたそうです。


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たかは、舟橋聖一の小説『花の生涯』ヒロインとして、昭和になってその名を広く知られるようになりました。

『花の生涯』は、NHK大河ドラマの第1作目となった作品でもあります。

自称大河フリークのわたしですが、さすがにこの作品は生まれる前なので知りません。


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金福寺には、芭蕉庵や与謝蕪村の墓などもありますが、幕末シリーズとは関係ないので、また別の機会に紹介します。




「幕末京都逍遥」シリーズの、他の稿はこちらから。

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幕末京都逍遥


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by sakanoueno-kumo | 2018-08-25 00:59 | 幕末京都逍遥 | Comments(5)  

Commented by heitaroh at 2018-08-27 12:23
へー、遺品残ってるんですね。結構意外でした。
Commented by sakanoueno-kumo at 2018-08-27 20:23
> heitarohさん

長きに渡ってここで隠棲していたそうですから、残っていてもおかしくはないんじゃないでしょうか。
もっとも、それほどの人物ではないため、遺品も博物館などに展示されることもなく、こうして写真撮影もできるわけですが。
Commented by 一言 at 2018-08-29 16:14 x
  こういう女性を主役にすればいいのに ①

この頃女性主役の大河が2年に1回はありますが、絶対に「大河ドラマ」で主役にならないのが「側室」とか「愛人」なんですよね。今まで大河ドラマの主役であった女性は全て「正妻」だった人ばかり。だから「おんな太閤記」はあっても茶々を主人公にした大河ドラマはない(まぁ、茶々は戦国大河にはほとんどでてくるので、今更主役にしなくてもいいけど)。

村山たかのような女性を主役にすると、井伊直弼、長野主善の違った一面も描けそうだし、安政の大獄とか、京都における尊王攘夷派との暗闘とか、面白そうなんですけどねぇ(ただしちゃんと書けばですけど)。女スパイとか、女性が三条河原に3日3晩晒されたとか、「NHK大河ドラマ」で書くのは無理なんでしょうね。

村山たかに限らず、下の身分から権力者の側室になった人(例えば桂昌院とか丹後局とか)はドラマチックな一生を送ってそうなのでドラマにしやすいと思うけど、やらないんですよね。少なくとも、杉文よりはドラマを作りやすいと思うんですが。

続きます 
Commented by 一言 at 2018-08-29 16:46 x
  こういう女性を主役にすればいいのに ②

特に今、チャンネル銀河でやっている「オスマン帝国外伝」を見てるとつくづくそう思います。これはトルコ版大奥物みたいな感じで、「大河ドラマ」に似てるんですけど、中身は大違い。

私は「篤姫」も全然楽しめなくて、「大奥物」はどちらかというと興味がないのですが、これは面白いです。まずヒロインが性悪すぎ(多分日本だとこんな女性はヒロインになれない)。皇帝の愛情を独占するため、ライバルは蹴落としていく。しかも毒蛇を使うわ、毒薬を使って殺そうとするわで、全く良心の呵責なし。「真田丸」の昌之が天使に見える程酷い。しかも登場人物のほとんどが、裏で陰謀をしているような連中ばかりで、ヒロインがそれ程悪く見えないという(笑)。

ただこういう女性の方が、ドラマ性はあるので面白い話は作りやすい。「大河ドラマ」のヒロインは善良な女性ばかりで(女性に限らないかもしれないが)、ヒュッレム(オスマン帝国外伝のヒロイン)のように、野心でギラギラして、目的のためには手段を選ばずというのが、新鮮に思えるんですよ。

だから村山たかみたいな主人公が、大河ドラマになると面白いんですけど、絶対NHKはやらないでしょうね。

Commented by sakanoueno-kumo at 2018-08-29 17:50
> 一言さん

わたしは「オスマン帝国外伝」は観ていないのですが、おっしゃる通り、たしかに、大河ドラマの女性主人公は、心の美しい女性ばかりで、面白みにかけますね。
まあ、近年は男性の主人公も心優しい聖人君子ばかりなんですが。
その意味では、25年前の『花の乱』が、三田佳子さん演じる悪女として名高い日野富子が主人公で、視聴率は低かったようですが、わたしは結構面白かったですけどね。
ただ、当時わたしはまだ20代で、日曜日の夜におとなしく家にいることは少なく、全話観ていませんが。

そもそも、日本の歴史が圧倒的に男性社会なんですから、歴史上の偉人も男と女では絶対数が違うわけで、分母が違うのに、男女均等に1年交代で主人公にしようというのが無理なんです。
そりや、杉文や新島八重といった誰も知らない女性を引っ張り出すことになっちゃいますよね。
女性主人公は5~6年に1人くらいでいいんじゃないかと。
昔はたしかそうだったように思います。

村山たかは、主人公ではありませんが、記念すべき大河ドラマ第1作目の作品「花の生涯」のヒロインなんですよね。
主人公・井伊直弼が二代目尾上松緑さんで、村山たか役は数年前に亡くなられた淡島千景さん、長野主膳は佐田啓二さん(中井貴一さんのお父さんですね)だったそうです。
もちろん、わたしは生まれていないので観ていませんが。

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