人気ブログランキング | 話題のタグを見る

西郷どん 第43話「さらば、東京」その2 ~明治6年の政変<10月14日の閣議>~

西郷どん 第43話「さらば、東京」その2 ~明治6年の政変<10月14日の閣議>~_e0158128_15131310.jpg昨日のつづきです。

明治6年(1873年)10月14日、正院にて閣議が開かれました。当初は10月12日に開かれる予定でしたが、急遽、副島種臣参議に加わるなどのゴタゴタがあって、2日延期されました。岩倉具視の帰国以来、征韓論反対派は水面下で激しく裏工作に動いていましたが、西郷隆盛を中心とする賛成派は、これといった政治工作はしていませんでした。西郷にしてみれば、自身の朝鮮国使節の件は8月17日の閣議で決まったことであり、すでに天皇への上奏も終えており、覆ることはありえないと高をくくっていたのかもしれません。それでも、ここに来て少し不安になってきたのか、12日の閣議が延期という通達が届くと、西郷は三条実美に手紙を送り、もし、今になって朝鮮使節の件を取り消すようなことになれば、「勅命軽き場に相成り候」と批判したうえで、「実に致し方なく、死を以て国友へ謝し候」と、脅しをかけました。西郷も、少し焦っていたのかもしれません。


 この日の閣議の席に連なったのは、太政大臣・三条実美、右大臣・岩倉具視、そして、西郷隆盛、板垣退助、大隈重信、大木喬任、後藤象二郎、江藤新平、大久保利通、副島種臣の8人の参議でした。木戸孝允は病気により欠席。このなかで、西郷、板垣、江藤、後藤、副島が征韓派で、岩倉、大久保、大隈、大木が反対派、どっちつかずが三条でした。


 閣議が始まると、まず、岩倉が西郷の朝鮮国即時派遣に反対の意を表明しました。岩倉が反対したのは即時の派遣で、つまり延期論でした。本来は渡韓そのものを中止にしたかったのでしょうが、摩擦を回避するための一時的な方便だったのでしょう。こう言われると、板垣らのような開戦論者にとっても、戦争をするには準備不足は明らかだったので、いったんは西郷を除く全員が岩倉の延期論に同意します。しかし、西郷はただひとり納得せず、自身の朝鮮国への即時派遣をあくまでも主張したため、事態は紛糾します。


 西郷どん 第43話「さらば、東京」その2 ~明治6年の政変<10月14日の閣議>~_e0158128_15131733.jpgその西郷に真っ向から立ちはだかったのが、大久保でした。大久保は、西郷の渡韓は朝鮮との開戦につながる恐れが濃いと主張し、西郷の遣使に反対します。その理由として、日本の民情社会がまだ不安定であること、戦争のための財源がないこと、着手中の政府事業を中断せざるを得なくなること、武器弾薬外国に依存せざるを得ず、輸入が増大すること、そして、何より、たとえ朝鮮と戦争して勝利し、朝鮮を植民地として領有するようなことになっても、今の日本には朝鮮の国土を保有していく力はない、というものでした。つまり、朝鮮との戦争に勝っても負けても、日本にとって何ひとつ得なことはない、と言うんですね。後世から見れば、大久保の主張は実によく将来を見据えた論旨を展開したと言わざるを得ません。


大久保には、このあとの日本の国作りのビジョンがはっきりとありました。そのためには、たとえ竹馬の友である西郷と袂を分かつことになろうとも、引き下がるわけにはいかない。西郷に対してここまでハッキリとものが言えたのは、この席では大久保だけだったでしょう。さすがは鋼鉄の意思の人です。一方、西郷を中心とする征韓派の面々の主張には、そのあとの展望がいささかも語られていません。ただ、朝鮮の非礼を唱えて征韓を主張する、いわば観念的、感情的思考からくる征韓論であり、将来的展望がまったく示されていないんですね。ドラマでの大久保は、「西郷に勝ち、今の政府をぶっ壊したい」と言って不気味な笑みを浮かべていましたが、そんな個人的な勝ち負けや政局争いをしたわけではなかったでしょう。大久保とて、本音は西郷との対立を避けたかった。でも、大久保が描いた天下国家の体制を実現するには、いま目の前で国家を滅ぼそうとする暴論を唱える西郷(少なくとも大久保にはそう感じられていたでしょう)たち征韓派は、排除する必要があったのでしょう。西郷と大久保では、見えている景色が違ってきていたんですね。


 作家・司馬遼太郎氏はその著書『翔ぶが如く』のなかで、この征韓論争についてこう述べています。


 「政策論争が堂々と行われ、政局でも権力欲でもなく純粋に政策が焦点として争われたのは、日本政治史上稀にみる事件だった。」


 そうかもしれませんね。

 明日に続きます。

ブログ村ランキングに参加しています。
よろしければ、応援クリック頂けると励みになります。
   ↓↓↓



by sakanoueno-kumo | 2018-11-20 02:41 | 西郷どん | Trackback | Comments(0)  

<< 西郷どん 第43話「さらば、東... 西郷どん 第43話「さらば、東... >>