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西郷どん 第46話「西南戦争」その4 ~西郷軍解散と木戸孝允の死~

 昨日の続きです 

田原坂の陣を奪われた西郷軍は、以後、退却を重ねていくことになります。3月20日に田原坂をあとにした西郷軍の本営は、4月以降、神瀬、木山を経て、もともと薩摩国に接し、薩摩の影響の強い人吉へと移されました。ここで西郷隆盛は、負傷した別府晋介鹿児島に帰らせ、先に熊本から帰郷していた桂久武とともに、新たな兵員の募集に当たらせました。この期に及んで、まだ西郷は戦いを諦めてはいなかったようです。しかし、この時点ではすでに武器弾薬や食料は底をつき、その敗北は誰の目にも明らかな状態になっていました。


 そんな状況のなか、逮捕された大山綱良に変わって新たに鹿児島県令に任に就いていた岩村通俊から、5月7日、すでに決着がついたとしたうえで、これ以上の犠牲者を出さないために、西郷に対して投降を呼びかける告諭書が出されます。しかし、西郷はこれを受け入れることはありませんでした。ここで投降するなど、死んでいった兵たちに申し訳が立たないといった心境だったのかもしれません。また、同時期に、鹿児島城下にいた西郷軍が奪還を目指して兵を挙げ、城下の大部分が焼け野原となる攻撃を仕掛けていたことも関係していました。事ここに至っては、もう後戻りはできなかったんでしょうね。


e0158128_15131310.jpg やがて人吉の西郷軍の本営も政府軍に攻撃を受け、6月1日に陥落します。やむなく西郷軍は宮崎方面へ逃れ、都城、宮崎、高鍋と本営を転々としたのち、延岡の北方にあった長井村へ逃れ、8月15日、ここで西南戦争最後の激戦が展開されることになります。2月の挙兵以来、これまで西郷は戦闘の指揮を桐野利秋らに任せて口出しすることはありませんでしたが、このとき、初めて自ら指揮を執りました。西郷は、丘陵の中央に位置した和田越えの頂上に立ち、約3千人の兵を集めて彼らを激励し、士気を鼓舞したといいます。それは、弾丸が雨のように降り注ぐ中での指揮でした。このとき、村田新八らが危険だから高台を降りるようにといくら勧めても、西郷はその場を動こうとはせず、やむなく、兵数人で西郷の巨体を抱え、無理やり後方へ運んだといいます。このとき西郷はどんな心中だったのか。あるいは、敗色が濃厚となるなか、弾に当たって戦死しようとしていたのかもしれません。


 西郷の指揮もむなしく、西郷軍の士気は低下し、投降者が相次ぎました。やがて西郷は、これ以上の戦争継続は困難と判断し、8月16日、軍の解散を布告し、全将兵に行動の自由を許しました。このとき、西郷自身も、自らの身体にけじめを付けるべく、陸軍大将の軍服を焼却するなどの身辺整理を行ったといいます。西郷は解散令を出したあと、自ら人を呼び、野戦病院の始末などの事務処理細かく指示したといいます。これも、鹿児島出立以来、はじめてのことでした。このときの西郷について、作家・司馬遼太郎氏はその著書『翔ぶが如く』のなかで、次のように述べています。


 「西郷は戦いのあいだ狩猟などをして何もせず、和田越をのぞいては前線にさえ立たなかったが、最後にのぞみ、解散についてのさまざまな始末を、幕僚にはかることなくみずからやったという点、この人物の何事かが見えるようである」


 部下を信頼して仕事を任せる。失敗すれば、その責任をとって後始末をする。そう考えれば、理想的な上司像といえるかもしれませんが、これが、戦争の指揮官として理想的といえるかどうかは、難しいところですね。


 全軍解散となった西郷軍でしたが、それでも、西郷を慕う私学校以来の約300人行動を共にすることを希望します。そして、このあと長井村から脱出を図る有名な作戦が決行されます。それは次回、最終回にて。


 e0158128_19334109.jpg最後に、木戸孝允についても触れておきましょう。西郷たちが人吉を本営としていた明治10年(1877年)5月26日、木戸は京都の邸で病にて息を引き取りました。木戸はその死の直前、西南の地で挙兵した西郷と明治政府を案じ、昏睡状態のなか見舞いに訪れた大久保利通の手を握りしめ、「西郷、いいがげんにせんか」と言ったといいます。盟友といえたかどうかはわかりませんが、木戸にとって西郷、大久保は共に明治新国家を作り上げた同志であったことは間違いなく、その同志のふたりが敵対している現状は、木戸にとって最大の心残りだったに違いありません。結局、西郷は木戸の死から4ヶ月後、大久保も約1年後に落命します。「維新三傑」と呼ばれたこの3人が、偶然にもわずか1年の間にこの世を去ることになるという事実も、歴史というのは実にドラマチックにできていると思わずにいられません。



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by sakanoueno-kumo | 2018-12-13 23:59 | 西郷どん | Trackback | Comments(0)  

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