坂本龍馬が剣術修行をした千葉定吉道場跡

東京駅八重洲口近くの鍛冶橋通りに面した歩道の植え込みに、「千葉定吉道場跡」と書かれた説明板があります。

千葉定吉道場といえば、若き日の坂本龍馬剣術修行をした道場として知られています。


e0158128_19534309.jpg


千葉定吉は、北辰一刀流剣術の創始者と伝わる千葉周作の弟で、自身も北辰一刀流の使い手でした。

兄の千葉周作は、鏡心明智流桃井春蔵神道無念流斎藤弥九郎とともに幕末三剣豪と呼ばれ、「位の桃井・力の斎藤・技の千葉」と評され、幕末の江戸三大道場とされていました。

地方から我こそはと江戸に上ってきた剣のエリートたちは皆、この三道場の門をたたいたといいます。

現在でいえば、東大、早稲田、慶應といったところでしょうか。

坂本龍馬は19歳から24歳までの間に2度、江戸に遊学し、ここで剣術を学びました。

そして安政5年(1858年)正月には、定吉から「北辰一刀流 長刀兵法」目録を伝授されたと伝わります。

司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』では、龍馬と同時期に桃井道場の塾頭に盟友の武市半平太が、斎藤道場の塾頭に桂小五郎(木戸孝允)が、そして龍馬が千葉道場の塾頭になったとされていますが、武市と桂が塾頭だったのは史実のようですが、龍馬が塾頭だったという話は、確かな史料は存在しないようです。


e0158128_19534790.jpg


龍馬の入門した千葉道場は、精神主義を排し、合理的な教授法が人気を呼んだらしく、江戸に剣術ブームを起こしたそうです。

武骨な道場というカラーを脱し、現在でいえば「剣術教室」といったカラーのとてもパブリックな道場だったようです。

のちの龍馬の観念にとらわれない合理的な発想の基礎は、この千葉道場の修行時代に作られたものかもしれません。


e0158128_19562000.jpg


あと、千葉道場での龍馬の剣術修行で思い出されるのは、定吉の娘・千葉佐那とのラブストーリーですね。

佐那(佐那子とも)は女だてらに剣の使い手で、10代で北辰一刀流免許皆伝に達したほどの腕前だったとか。

小柄で大そうな美女だったようで、「千葉の鬼小町」「小千葉小町」などと呼ばれていたといいます。

明治26年(1893年)に発行された『女学雑誌』の誌上に、「坂本龍馬の未亡人を訪ふ」というタイトルで談話が掲載され、その中で晩年の佐那自身が、龍馬から求婚された事実を語っています。

それによれば、父・定吉の承諾も得て、「天下静定の後を待って華燭の典を挙げん」と約束をしたといいます。

司馬遼太郎著『竜馬がゆく』では、佐那(同小説ではさな子)が想いを打ち明け、そのお返しに龍馬は自分の着ていた紋付の片袖を破って渡すというロマンチックなエピソードが描かれていますが、明治26年の佐那が語るところでは、婚約のしるしとして千葉家から短刀一振りを贈り、龍馬からは松平春嶽から拝領した袷衣を返したといいます。

その後、その後国事に奔走しはじめた龍馬と結ばれることはなく、佐那は生涯この袷衣を形見として側に置き、独身を通したと言われています。

何とも健気で切ない話ですが、一方の龍馬は、その後、周知のとおりお龍と結婚しています。

婚約の話が本当なら、龍馬も罪な男ですね。


e0158128_19562397.jpg


その龍馬の佐那に対する想いについては、国元の姉・乙女に宛てた手紙のなかに見ることができます。

「此はなしはまづまづ人にゆはれんぞよ。すこしわけがある。」という書き出しで始まるこの手紙には、千葉家の佐那という娘の歳は26歳で、乗馬薙刀に優れ、琴、絵画にも通じ、もの静かで、よけいなことを言わず、平井かほ(龍馬の国元の恋人だったといわれる女性)よりも美人であると紹介しています。

「まあまあ、今の平井、平井。」と書かれており、「平井に変わって今一番好きな人。」といった意味のようです。

かなりゾッコンだったようですね。

しかし、この手紙から4年後に龍馬はこの世を去ります。

このとき既に30歳になっていた佐那は生涯独身を通し、維新後、華族女学校(学習院女子部)の舎監をしたのち、千住の長屋の一角で千葉家家伝の鍼灸を生業として暮らし、明治29年(1896年)、59歳で生涯を閉じます。

東京・谷中の墓地に埋葬されましたが、独身ゆえ無縁仏になりそうだったため、鍼灸院の患者だった自由民権運動家・小田切鎌明の妻、豊次が不憫に想い、菩提寺だった清運寺に分骨し墓を建てたといいます。

その佐那の墓石の裏には、「坂本龍馬室」と刻まれています。




ブログ村ランキングに参加しています。
よろしければ、応援クリック頂けると励みになります。
   ↓↓↓


by sakanoueno-kumo | 2019-01-10 00:37 | 東京の史跡・観光 | Trackback | Comments(0)  

トラックバックURL : https://signboard.exblog.jp/tb/27908848
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]

<< 伝馬町牢屋敷跡・処刑場跡(吉田... いだてん~東京オリムピック噺~... >>