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いだてん~東京オリムピック噺~ 第27話「替り目」 ~皇紀2600年の東京オリンピック招致~

 関東大震災復興がなんとか形になってきた昭和5年(1930年)頃から、東京へのオリンピック招致の声があがり始めました。金栗四三三島弥彦が日本人選手として初めて参加したストックホルムオリンピックから20年近くが経ち、いよいよ日本も自国での開催を企画できるレベルにまで来ていたんですね。そもそもの発案者は、関東大震災時に東京市長を務めていた永田秀次郎でした。永田は昭和5年(1930年)に再び東京市長に選ばれると、関東大震災からの復興を象徴するイベントとして、東京オリンピックの招致を唱えます。昭和39年(1964年)の東京オリンピックは戦災からの復興、令和2年(2020年)に開催予定の東京オリンピックは東日本大震災からの復興といった具合に、国内外に復興をアピールするには、オリンピックはもってこいのイベントなんでしょうね。


e0158128_17104791.jpg また、このときの東京オリンピック招致は、もうひとつ、開催予定の昭和15年(1940年)が皇紀2600年にあたることから、その祝賀イベントにしようという意図もありました。「皇紀」(戦前は「紀元」とも言われていた)というのは、戦後生まれの私たちには耳なじみがあまりありませんが、戦前に使われていた紀年法で、初代天皇である神武天皇が即位したとされる年を元年とします。その元年は、西暦(キリスト紀年)でいえば、紀元前660年とされています。戦前の日本では、キリスト紀年の西暦はあまり使用されず、元号もしくは皇紀で年をよむのが一般的だったそうです。もっとも、この皇紀の歴史はそれほど古いものではなく、明治5年(1872年)に明治政府が太陰暦から太陽暦への改暦を布告した際に制定したもので、それ以前の江戸時代にはなかったものです。まあ、日本が皇国であるということを国民に植え付けたいという意図から作られたものだったのでしょうが、それでも、明治、大正期はあまり国民に浸透していなかったようで、多用されるようになるのは、昭和期に入ってからだそうです。第二次世界大戦前国定歴史教科書では、元号も西暦も用いられず、一貫してこの皇紀が用いられていたとか。こうして皇国日本のナショナリズムが作られていったんですね。


 もっとも、神武天皇の即位は『日本書紀』に基づくもので、これが信憑性に乏しいことは、当時でも少し学のある人なら周知のことだったでしょう。国民がこの皇紀をどれほど尊重していたかは疑問です。それでも、この皇紀2600年記念事業というのは、かなり盛大なイベントだったようで、紀元節(2月11日、現在の建国記念日)には全国11万もの神社において大祭が行われ、展覧会体育大会など様々な記念行事が全国各地で催されました。わたしは、城跡や寺社などの史跡めぐりを趣味にしていますが、史跡に建てられている戦前の石碑などの裏を見ると、「皇紀二千六百年記念」と刻まれているのをよく見かけます。国全体が祝賀ムードだったようですね。


e0158128_19143177.jpg 話が脱線しちゃいましたが、東京オリンピック招致を思い立った永田は、IOC委員である嘉納治五郎にその意図を伝え、協力を求めました。しかし、当初、嘉納は慎重だったようです。その理由は、参加国の大半が欧米諸国であるなか、極東の東京は地理的に遠すぎて移動費がかかりすぎること、選手や役員を宿泊させる十分なホテルがないこと、語学の面で欧米語を使える人材がスポーツ界に乏しく、十分な接待ができないことなどから、時期尚早ではないか、ということでした。これまでオリンピック参加には積極的だった嘉納でしたが、自国での開催となると、IOC委員であるだけにその難しさを熟知しており、そう簡単には決断できなかったのでしょう。しかし、永田をはじめ東京市関係者の熱心な説得を受け止め、嘉納は70歳代になってから、東京オリンピック招致で世界を駆け回ることになります。


 ドラマでは、金栗四三のお兄さんが亡くなりました。幼い頃に父を亡くし、父親代わりだった兄の死は、金栗にとって大きな悲しみだったことでしょう。日本初のオリンピック選手としてマラソンに熱中できたのも、兄の支えがあってこそだったでしょうから。これを機に、金栗はしばらく故郷の熊本に帰ることになります。ここから、物語は田畑政治を中心に展開していくんでしょうね。



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by sakanoueno-kumo | 2019-07-15 17:18 | いだてん~東京オリムピック噺~ | Comments(0)  

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