人気ブログランキング |

いだてん~東京オリムピック噺~ 第35話「民族の祭典」 ~東京五輪招致の成功とベルリン五輪~

 二・二六事件から五ヵ月後の昭和11年(1936年)7月29日、ベルリンIOC総会が開催されました。前年の総会で日本がムッソリーニに交渉してローマを辞退させたことにより、IOCの反感を買って決定が先送りになった昭和15年(1940年)の第12回オリンピック大会の開催国を決定するための総会です。前年の政治的な運動の責任をとって杉村陽太郎がIOC委員を辞任したため、日本からの出席は嘉納治五郎副島道正の2人。嘉納はIOC委員としては最古参で、副島は初めての総会出席でした。


 候補地は東京ヘルシンキ一騎打ちでした。東京の最大の不利は、極東の遠い国ということ。これまでの11回のオリンピックは、全て欧米で開催されてきました。飛行機が発達していないこの当時、ヨーロッパから日本に来るには、船でアフリカ、インド洋を経て日本に向かうか、あるいは北米回りの航路か、はたまたシベリア鉄道でソ連を横断して日本に入るかのいずれかのコースしかありませんでした。いずれも20日間近い日数を要します。東京開催に難色を示すIOC委員の共通の理由は、渡航日数が長く旅費がかかりすぎるということでした。


e0158128_19143177.jpg しかし、これに嘉納は真っ向から反発します。


 「日本はその極東から、1912年以来二十余年、毎年多くの選手を派遣している。日本が遠いということは理由にならない。むしろ、東京で開催することによって、オリンピックはようやく欧米のものから世界的な文化になる。オリンピックは当然日本に来るべきだと思われるにもかかわらず、もし来ないのであれば、それは正当な理由が斥けられたということに他ならない。それならば、日本からヨーロッパへの参加また遠距離であるから、出場するには及ばないということになる。そのときは日本は更に大きな世界的な大会を開催してもいいと思っている」


 この嘉納の半分脅しともとれる強気の熱弁が功を奏したのか、投票の結果、36票対27票東京が勝利しました。アジアではじめてのオリンピック開催が決定。満州事変以降、日本は国際連盟を脱退するなど世界的に孤立して数年が経過していたこの時代に、せかいスポーツの国際大会を東京で行うことの支持を取り付けた。これは一にも二にも嘉納の功績といって大過はないでしょう。まさに、スポーツと政治は別ものという理想を体現してみせました。まったく、すごいじいさんですね。しかし、実際のアジアでのはじめてのオリンピック開催は、20年以上先になることは周知のところです。やはり、スポーツと政治は切り離せなかったんですね。それは、これから描かれていくのでしょう。


e0158128_00002262.jpg 同じ年、第11回オリンピックベルリン大会が開催されました。第一次世界大戦によって第6回オリンピックベルリン大会が中止されてから20年。ドイツ国民にとっては悲願のオリンピック開催だったでしょう。もっとも、この20年の間にドイツは様変わりしていました。昭和8年(1933年)にドイツの政権を掌握したアドルフ・ヒトラーは、昭和10年(1985年)に「ドイツ人の血と名誉を守るための法律」(ニュルンベルク法)に制定し、アーリア民族至上主義のもとに国内のユダヤ人を迫害していました。この当時、第一次世界大戦の過酷な戦後措置に対して深い遺恨を抱いていたドイツ国民が、このヒトラーの思想に同調し、多くの支持を寄せるようになります。そんななか、ヒトラーは当初、オリンピックは「ユダヤ人の祭典」だとしてベルリン開催に難色を示していましたが、しかし、側近から「大きなプロパガンダ効果が期待できる」との説得を受けて、開催することに同意したといいます。ヒトラーはオリンピックを通じて国威を見せつけるべく、膨大な国家予算を投じて10万人以上を収容する巨大なメインスタジアムを建設するなど、大いに政治利用しました。やはり、スポーツと政治は切り離せなかったんですね。


 ちなみに、アテネからランナーが聖火をリレーして開催地に運ぶという、いわゆる聖火リレーが初めて行われたのが、このベルリン大会だったそうです。実はこれも、彼らゲルマン民族こそがヨーロッパ文明の源流たるギリシャの後継者であるというヒトラーの思想から生まれたプロパガンダだったそうですが、当初の思惑はさておき、いまなお続いている聖火リレーを考案したのは、唯一、ヒトラーの後世に残した功績といえるかもしれません。



ブログ村ランキングに参加しています。
よろしければ、応援クリック頂けると励みになります。
   ↓↓↓



更新を通知する


by sakanoueno-kumo | 2019-09-16 00:00 | いだてん~東京オリムピック噺~ | Trackback | Comments(0)  

トラックバックURL : https://signboard.exblog.jp/tb/28576013
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]

<< 天誅組の足跡を訪ねて。 その1... 緒方洪庵の適塾をたずねて。 <後編> >>