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麒麟がくる 第21話「決戦!桶狭間」 ~桶狭間の戦い~

 永禄3年5月19日(1560年6月12日)、尾張国桶狭間において、その後のわが国の歴史を大きく左右することになる合戦が行われます。世にいう桶狭間の戦いですね。今川義元率いる大軍を少数の織田信長が討ち取り、その名を天下に轟かせたことで知られるこの戦いですが、このとき明智光秀はおそらく越前に住んでいたと思われ、この戦いには関わっていません。なので、当然ですが、凱旋する信長と会ったシーンもドラマの創作です。まあ、ああでもしないと主人公の出る幕がなかったでしょうが。


麒麟がくる 第21話「決戦!桶狭間」 ~桶狭間の戦い~_e0158128_18283550.jpg 5月12日、今川義元は駿府を出陣しました。その軍勢は、『信長公記』には4万5000とあり、その他の史料でも2万から6万まで諸説ありますが、通説では2万から2万5000ほどとされています。一方の織田軍は3000ほど。兵の数からいえば、どう逆立ちしても太刀打ちできるはずのない兵力差でした。義元の出陣の目的は、上洛のためとも尾張国の制圧のためとも言われますが、定かではありません。今川軍は遠江、三河を経て尾張に入り、18日に沓掛城に入城。そして19日明け方、義元の家臣・朝比奈泰朝が織田方の鷲津砦を落とし、隣接する丸根砦松平元康によって落とされます。そして義元自身が率いる今川軍本隊は、正午ごろ、桶狭間に南方の「桶狭間山」と呼ばれる小高い丘に本陣を布きました。


麒麟がくる 第21話「決戦!桶狭間」 ~桶狭間の戦い~_e0158128_21004698.jpg 一方の織田方は、『信長公記』によると、18日夜に重臣たちが清州城に集まったものの、信長は戦の話をいっさいしようとせず、雑談をしただけでさっさと寝床に入ってしまったといいます。この危機的状況にありながら戦の話をしなかったというのは、どう考えても不自然で、信長があえて軍議を避けたとみるべきでしょう。その理由は定かではありませんが、よく言われるのは、軍議をすれば家臣たちは籠城策を勧めるだろうから、もとより籠城するつもりなどなかった信長は、あえて家臣に意見を求めなかったのではないかという解釈。たぶん、そうだったのでしょうね。織田は父の信秀にしても信長にしても、籠城策をとったためしがありません。籠城策は援軍が期待出来てこその作戦で、圧倒的に劣勢の兵力の上に援軍のない織田方にとって、籠城策は延命作戦に過ぎない。このときも信長は籠城策をとるつもりはなかったでしょう。なので、ドラマで信長が「籠城する」と言ったときには、ちょっと驚きました。と同時に、また帰蝶に進言させるのではないか・・・と嫌な予感がしたのですが、今回は違いましたね。よかった(笑)。


 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」


 定番の「敦盛」の一節を謡い舞うと、目を光らせて簗田政綱を呼び寄せて絵図を広げ、分散した敵兵の数を計算したうえで、「善照寺砦で落ち合おう」と命じます。あのシーン、なかなか良かったですね。一か八かの賭けに出たわけではなく、周到に計算した上での出陣だったと。そうだったかもしれません。


帰蝶「殿、籠城では?」

信長「この城のなかには今川に通じている者もいるので、しばし籠城と思わせた。頼りになるのは、いま砦で気合を入れて今川勢とやりおうておる者たちよ。この者たちを善照寺砦へ集めて、一戦交える」


なるほど。籠城といったのはそういうことだったんですね。


帰蝶「敗けたら?」

信長「死ぬのは一定という。いずれ人は死ぬ。」


 この台詞は、信長が好んでうたったという小唄「死のふは一定、しのび草には何をしよぞ、一定かたりをこすよの」の一節ですね。


 明け方の午前4時頃に清州城を出陣した信長は、10時頃に善照寺砦に到着。2000の兵が集結すると、さらに中島砦まで兵を進めます。ここで、織田軍にとって幸運が起こるんですね。午後1時すぎ、桶狭間に視界を妨げるほどの豪雨が降ります。このときの雨を『信長公記』では、「俄に急雨石氷を投げ打つ様に、敵の輔に打ち付くる。身方は後の方に降りかゝる。」と伝えています。「急雨石氷」というくらいですから、も混ざった豪雨だったのかもしれません。この雨に乗じて信長は兵を進め、一気に義元本隊に奇襲をかけました。雨音で織田軍の接近に気づかなかった今川軍はたちまち大混乱に陥り、ことごとく惨敗します。そして、義元は織田方の毛利新助良勝に討ち取られ、を取られました。その際、義元は相手の指を食いちぎって果てたと伝わります。主将を討ち取られた今川軍は戦意を喪失し、合戦は織田軍の勝利に終わりました。


 今川方の敗因として、よく、今川軍が丸根砦、鷲津砦を陥落させたことで、勝利に奢って油断していたところを奇襲されたように描かれることが多いですが、この説は同時代の史料には見られず、根拠に乏しいそうです。実は私も、けっこう最近までこの説を信じていました。今回のドラマではその説は採られませんでしたね。今川義元の汚名返上といったところでしょうか(今回の義元は、今までのドラマのような、お白粉、お歯黒じゃなかったですし)。


信長「よいか!この先の山沿いの道を桶狭間に向かって走る。ほかの者に目をくれるな。狙うは今川義元ただひとり。義元の居所は塗り輿が目印じゃ!」


 いやあ、カッコよかったですね。このドラマで初めて信長をカッコいいと思った。これまで帰蝶の手柄ばっかでしたからね(笑)。やっぱ、戦国物はこうでなくちゃね。桶狭間の戦いの展開も、通説とオリジナル解釈をうまく取り混ぜて、いい仕上がりだったと思います。久々に大河ドラマらしい回でした。


 さて、物語は中盤に差し掛かったところで、新型コロナウイルスの影響で撮影が止まったままで、しばらく放送休止とのこと。残念ですが、仕方がないですね。どれだけの期間休止となるかはわかりませんが、NHKの発表によると、年を越してでも予定通り全44話放送する予定とのことなので、期待して待つことにします。ただ、心配なのは、ほぼ半分近くが過ぎた21話の段階で、物語はまだ桶狭間の戦いだということ。これまでの物語の時代は、主人公の明智光秀はまったく史料が残っていない時代で、本当の意味での光秀伝はこれからです。なのに、その創作の話で半分も使ってしまった。時代の流れで見ても、第1話から今回で13年しか経っておらず、残りの回で22年分描かなければなりません。今回の桶狭間の戦いもたいへんいい出来だったのですが、とはいえ、主人公の光秀とは無関係の戦に2週も使っちゃいました。このあと大丈夫でしょうか? これからが本当の光秀の活躍の歴史なのに、後半が超駆け足の雑な展開になりそうで心配です。ともあれ、早く撮影再開してほしいですね。



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by sakanoueno-kumo | 2020-06-08 20:55 | 麒麟がくる | Trackback | Comments(6)  

Commented by ゲコゲコ at 2020-06-09 16:36 x
新型コロナの影響で放送が中断するのは本当に残念です。
年始の放送開始も遅れたので、最後まで話が終わるのか心配でした。ひょっとしたら、本能寺の変から山崎の戦いをナレーションだけで終わるのではないだろうか、なんて思ったりして……。
まあ、そんなことはなさそうですが。(^^)
Commented by sakanoueno-kumo at 2020-06-09 19:55
> ゲコゲコさん

コメントありがとうございます。
本能寺の変と山崎の戦いはさすがにちゃんと描くでしょうから(桶狭間の戦いをこんなに詳しく描いておいて、本能寺や山崎を省略なんてありえません)、どこかがすっ飛ばされるんじゃないかと思っています。
このあと、越前での暮らし、足利義輝の死から足利義昭の大和脱出、義昭と信長の橋渡し、信長への仕官、義昭と信長の対立、信長の越前攻めからの金ヶ崎退き口、志賀の陣、比叡山焼き討ち、坂本城城主となり南近江の統治、義昭追放、丹波攻略、石山合戦、松永久秀と荒木村重の謀反、丹波の統治、京都馬揃え、武田攻め、四国攻め、徳川家康の安土接待、そして本能寺の変からの山崎の戦い、と、思いつくだけでも、光秀が関わったであろう重要な歴史的時事象がこんなにあります。
どう考えても、残り23話でこれだけ描けるとは思えない。
何かがすっ飛ばされるんじゃないかと思っています。
私が思うに、志賀の陣や丹波攻略、石山合戦あたりが省略されるんじゃないかと。
でもね、志賀の陣をちゃんと描かないと、なぜ比叡山焼き討ちになったかがわからないし、丹波攻略や石山合戦をしっかり描かないと、光秀がいかに七面六臂の働きをしていたかもわかりません。
やはり、ここまで時間を掛けすぎでしょうね。
美濃編は半分の10話ぐらいで良かったと思います。
どうするつもりなんでしょうね。
Commented by ゲコゲコ at 2020-06-09 23:40 x
うへっ! そ、そんなにあるのですか?!
じゃあ、来年は「麒麟がくる」のパート2ですね。
Commented by sakanoueno-kumo at 2020-06-10 01:22
> ゲコゲコさん

そうなんです。
今のペースだと、60話ぐらいないと描ききれない。
ドラマですから、史実ばっかじゃなく創作も大いに結構だとは思いますが、史料がほとんどなく創作ばっかの美濃編をこんなに多く描いて、史料がたくさん残っている本来の光秀の事績を割愛するのは、どう考えても本末転倒かと。
Commented by kumikokumyon at 2020-06-13 11:52
こちらにもコメント失礼いたします。

私的にはどなたも結末をご存じの本能寺の変と山崎の戦いはなくていい、と思ったりします。
そこに至る経緯をきっちり描き「敵は本能寺にあり!!」光秀の顔のアップで終わる、はあきませんか?
映像の素敵なオープニングのシーンがなんか最終回と重なるように思えてしかたありません。
確かに美濃編は長すぎますね。架空の人物の登場も(台詞まわしのくどい堺正章とか)不要と思われます。個人的意見ですけどー。

Commented by sakanoueno-kumo at 2020-06-13 19:07
> kumikokumyonさん

>「敵は本能寺にあり!!」光秀の顔のアップで終わる

なるほど、ありかもしれませんね。
でも、わたしはやはり最後まで描いてほしいかな。
おしゃるように、本能寺の変から山崎の戦いまでの経緯はだれもが知っていますが、本能寺の変から山崎の戦いまでの間の光秀の心中というのは、あまり詳しく描かれた作品はなかったと思います。
そこからは、ほかの物語では中国大返しの秀吉が主役になっちゃいますからね。
本能寺の変を起こした時点で、すでに光秀は死を覚悟していたのか、それとも、見込みが甘かったのか、秀吉が猛スピードで帰ってきたことを知ったとき光秀はどう思ったのか、そのあたりをどのように描くかが楽しみです。

>台詞まわしのくどい堺正章

同感です(笑)。
わたしも駒ちゃんとマチャアキと岡村は不要だと思っています。
物語が100話あるんだったら、そういう架空の人物の話があってもいいですが。
尺を考えると、無駄ですよね。

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