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どうする家康 総評

人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し


 最終回の冒頭のナレーションにもあった言葉ですが、これは、神君御遺訓の冒頭の一文として今日に伝わる有名な言葉ですね。まさに、徳川家康の長い長い苦難の人生を象徴する名言といっていいでしょう。人質として駿府で過ごした少年時代に始まり、桶狭間の戦いから大坂夏の陣まで半世紀以上の戦いの日々。その間、今川義元、武田信玄、織田信長、豊臣秀吉といった実力者に屈しながらも、着実に力をつけ、人生の最晩年にはとうとう天下人となった徳川家康。そんな物語が、今年の大河ドラマ『どうする家康』でした。


 最終回を観終えて1週間以上が過ぎました。毎年、最終回のレビューを起稿した3、4日後には総評の稿をアップしていたのですが、今年はどうも気が乗らない。やる気が起こらないまま1週間以上が過ぎてしまったというのが正直なところです。その理由は、間違いなく批判に走ってしまうことがわかっていたから。当ブログでは、毎年、最終回を観終えるまでは批判しないというポリシーでやってきたのですが、今年は、特に前半、あまりにも酷かったので趣旨に反して批判してしまいました。そうすると、批判に同調するコメントをたくさんいただくようになり・・・。やはり、ネット社会というのは、つくづく批判を好むところだと思いましたね。で、途中から批判するのをやめたのですが、決して良くなったからではありません。まあ、後半は少しマシにはなりましたが・・・。とにかく、近日中に総評を起稿すると予告してしまいましたので、遅ればせながら私の総評です。


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 まず、のっけから受け入れ難かったのは、おそらく多くの古い大河ドラマファンが思ったであろうことですが、あの弱虫家康キャラですよね。第1話のお人形遊びをする家康までは、まあ子供時代を描いているんだろうということでありとしても、戦場で家臣をほっぽって一人で逃げるなんて、いくら何でも酷すぎです。そんな奴に家臣が付いてくるはずがありませんね。仕えるに値しないと家臣に見限られたら、すぐさま見捨てられて主君の座から引きずり降ろされるのがこの時代。戦場から一人で逃げ出す主君なんて、その場で家臣に殺されますよ。あれは酷すぎましたね。あれを観て、ああ、今年の大河はダメだ・・・と思った人、多かったんじゃないでしょうか。


 今年の家康に限らずですが、近年の大河ドラマの悪い傾向として、主人公を無理やり普通の人にしてしまう悪癖がありますよね。どこにでもいそうな普通の心優しい少年が、周りの人たちに助けられながら成長していって英雄になるパターンばかりです。その方が共感を得られるとでも思っているのでしょうね。そもそもそこが大間違いだとわたしは思います。歴史上の英雄に共感したいとか、親近感を抱きたいなんて思いません。むしろ、凡人には理解しがたい人物だからこそ魅力的なんですよ。そこを制作サイドはぜんぜんわかっていないんですよね。もちろん、家康とて信長とて秀吉とて、悩んだり失敗したりしながら成長していったであろうことは否定しません。それは当然です。だけど、英雄たる人、やはり、子供の頃から非凡な少年だったはず。天下人になろうという人物が、どこにでもいそうな普通の少年だったとはとても思えません。ましてや、今年の家康に至っては、普通以下弱虫、泣き虫、鼻水垂れですからねぇ。あんな家康を見て、誰が魅力的に感じるんですか?


 いつからこういう悪癖がパターン化したんだろうと思い返すと、わたしは約20年前の『利家とまつ』あたりからのように思いますね。それ以前の主人公は、もっと非凡な人物でした。だから、観ていて憧れるんですよ。その人物に。今年の弱虫、泣き虫、鼻水垂れの家康に、誰が憧れますか?


 つづいて、ヒロイン瀬名こと築山殿豊臣秀吉の物語だったら寧々織田信長の物語だと帰蝶がヒロインになるでしょうが、家康の物語だとヒロインの設定が難しいのはたしかですね。瀬名は早く死んじゃいますからね。でも、今回は、ヒロインを正室の瀬名にした。これは、まあ、いいと思います。悪女と言われる築山殿ですが、実際にはどうだったかわからないですからね。ただ、今回の築山殿は、あまりにも聖女過ぎでした。どんだけいい人やねん!・・・ってツッコミたくなるぐらい、心が清らか過ぎました。親友の裏切りによって両親が殺されても恨まない、侍女に夫が寝取られても嫉妬しない、家臣たちからも慕われ領民思いで、高慢な嫁にも優しい。いやいや、完璧すぎでしょう。そんな女性いますか?それこそ現実離れしすぎですよね。いただいたコメントでどなたかがおっしゃっていましたが、まったく負の感情が蓄積されないアンドロイドのような人間で、逆に気持ち悪いと言っていましたが、わたしもそう思います。そんな完璧すぎる聖女の築山殿を、どうやって信康事件に巻き込むのかと思いきや・・・あの、とんでも設定の話になっちゃうわけですよね。有村架純さん好きなんで、あまり悪くはいいたくないんですけどね。1983年の大河ドラマ『徳川家康』では、池上季実子さん演じる築山殿が、徐々に嫉妬深くなってアブナイ女になっていく様がよく描かれていました。今回の筑山殿は、聖女過ぎてまったく感情移入できませんでした。


 で、そのとんでも設定の築山事件、松平信康事件についてですが、おそらく脚本家さんは、築山殿悪女説から脱却したかったのでしょう。それはいいです。ただ、その結果が、慈愛の国を作るというお花畑構想。お決まりの「戦のない世の中をつくるため」ってやつですね。これ、わたしが大河ドラマで最も聞きたくない台詞です。正直、綺麗ごとでしかありません。諸国と奪い合うのではなく与え合う関係性を築くべきだ・・・と。そんなことが簡単に出来るのなら、プーチンゼレンスキーも今すぐ握手するでしょうし、ハマスイスラエルも、お互い国土を譲り合うでしょう。できますか?・・・そんなこと。21世紀の現代でもなし得ない理想論を、戦国時代に生きる彼らにできるはずがないし、そもそもそういう先進的な発想に至るはずがありません。だから、男ではなく女性の発想なんだ・・・と? あ~あ、またジェンダー論か・・・ですよね。そもそも、女がまつりごとをすれば平和な発想になるっていう考え自体、この脚本家さんのセンスのなさを浮き彫りにしているといえます。そんなこと決してないから!!! 高市早苗さんが総理になったら、隣国との関係は悪くなりますよ(笑)。


 仮にもし、百歩譲って瀬名がドラマで描かれていたような慈愛の国作りの思想を持っていたとしても(わたしは絶対ないと思いますが)、それにすべての家臣たちが共感して全乗っかりするなんてことは100%あり得ません。もうね・・・この脚本家さんの無知さ加減に言葉が出ません。慈愛というなら、わたしは普通に夫と息子に向けた慈愛で死んでほしかった。織田を信用できず、織田から夫と息子を守るため、自らの命を犠牲にする、そういう話で良かったのに・・・って思いますね。


 他の登場人物でいえば、ひどかったのはやっぱ秀吉ですね。何なんですか?あの気持ち悪い男は。あれが人たらし秀吉ですか?家康が主人公の物語ですから、秀吉がヒール役になるのは仕方がないとは思いますが、あれではただのアブナイやつサイコパスの気持ち悪い男です。あんな男が天下人になれるはずがないでしょう。晩年の秀吉はともかく、信長の磯巾着のようについて回る若き日の無様なさま。金ヶ崎の退き口でうろたえる無様な姿。姉川の合戦で無表情に鉄砲隊を指揮する不気味なさま。どれをとっても酷すぎましたね。1978年の大河ドラマ『黄金の日々』では、若き日の人懐っこい天真爛漫な笑顔の秀吉が、権力を手にしてのし上がっていくにつれ、同じ笑顔でも目が笑っていない恐ろしい笑顔になっていく。その秀吉の移り変わりを緒形拳さんが見事に演じておられました。あれですよ、あれ。


 勘違いしないでほしいのは、わたしは何でもかんでも昔が良かったって言っているわけではありません。その証拠に、わたしは昨年の『鎌倉殿の13人』と一昨年の『青天を衝け』を、名作として当ブログで大絶賛しています。昔の作品ばかりを褒めているわけでは決してありません。


 秀吉とくれば信長ですが、信長と家康の関係というのが、この物語の前半のひとつのキーポイントだったと思います。弱虫白兎の家康とサディスト信長の二人の関係の着地点をどう描くのか・・・。本能寺の変では、家康が信長暗殺計画を企てるなんて創作話まで用いながら、その結末は、ただの友情話でしたよね。第28話のレビューでも述べましたが、正直、くっだらない!!!!というのが率直な感想でしたね。戦国時代の、しかも信長、家康と言った天下人たちの行動原理が「友情」だなんて、英雄たちの軌跡に対する冒涜といっても過言ではないでしょう。安っぽい青春ドラマの主人公と天下人を一緒にしないでほしい。仮に家康と信長の間に友情のような感情があったとしても(わたしは絶対なかったと思いますが)、それを行動原理にするなど、あり得ないにも程があります。瀬名のお花畑構想と一緒で、まさに現代価値観を無理やり歴史に持ち込んだ愚行です。ってか、現代でも、1020代の若者ならまだしも、信長と同世代のアラフィフ親父が友情を生き方の基軸に置くなんてことは、まずないでしょう。現代価値観をもってしても感情移入できないこの脚本。いや~、ひどすぎですね。


 他にも、言い出したらキリがないですが、急にLGBTぶっこんだり、小豆阿月をかけたくだらない創作話があったり、とにかく前半の物語は酷かった。


 世間のあまりにも激しい拒否反応に脚本家さんが屈したのかどうかはわかりませんが、信長が死んだあと、少しマシになりました。小牧・長久手の戦いは見ごたえありましたし、石川数正出奔の経緯も、悪くはなかったと思います。豊臣政権になってからの秀吉は、あれはあれでよかったのでしょう。若き日の秀吉が酷すぎたから、まだマシに見えただけかもしれませんが。そして関ヶ原の戦いも、久々に大河ドラマらしかったですね。前半のドラマとは脚本家が変わったのでは?・・・と思うほどでした。何より良かったのは、やはり淀殿ですね。正直、前半、お市の方が必要以上に話に絡んできていたことに対し、違和感を抱いていました。家康とは直接の接点はほとんどなかったであろうお市を、無理やり初恋の相手のような描き方をして、そこはちょっと苦々しく思っていたのですが、その娘である茶々が、母を助けに来てくれなかった家康を恨み、それが関が原、そして大坂の陣へつながっていくというストーリーを想定してのお市だったんですね。そこは面白かったと思います。


 今までのマザコン秀頼のイメージを払拭する凛々しい豊臣秀頼も良かったですね。そして、意外に感動したのは千姫方広寺梵鐘事件のときには徳川と豊臣の間の板挟みで不安そうにしていた少女が、冬の陣での恐怖を経て、豊臣の妻として実母と決別するシーンは切なかった。で、最終回では、とうとう「徳川を倒そうぞ!」と。あれですよ、あれ。あれが戦国の世の女性の悲しさですよ。なんであれが描けるのに、瀬名はあんな聖女になっちゃったのか・・・。って、また話がそこに行きますね。


 ただ、最後の最期に、また脚本家さんがやってくれましたね。あの意味不明の淀殿の長台詞日ノ本か・・・つまらぬ国になるであろう・・・云々ってやつです。せっかく見事な豊臣の最期のシーンを、あのセリフが台無しにしてしまいました。北川景子さんの迫真の演技もすべてパー!なぜあそこで淀殿があんな右翼的な台詞を吐くのか、その意図がわかりません。あのセリフは、いったい誰に向かって言ってたの?家康?未来の人々?


 上述したとおり、母が死んでからの茶々の行動原理は、すべて家康への復讐にあったはずです。それはそれで、面白い脚本だと思いました。で、最終回の一話前に、実は少女時代の茶々は母から聞かされていた家康に憧れていて、その憧れの君に裏切られたことで、憎しみに変わったという種明かしもありましたよね。で、それを知った家康が淀殿に書状を書いた。それを読んだ淀殿は、何かを悟ったようでしたよね。わたしの想像では、もうここで終わりにしてもいいと思ったように感じました。ところが、自身が育て上げた愛息の秀頼は、もう淀殿では止められない西軍の大将となってしまっていた。その姿を見た淀殿は、もう後戻りはできないと観念して手紙を燃やした。そうですよね? おそらく、手紙を燃やした時点で、息子と共に死ぬ覚悟が出来たのでしょう。わたしはそう解釈しました。そして、その覚悟通り、死のときを迎えた。息子の死を見届け、家臣たちも皆死に、最後に残った淀殿の台詞が、なんで現代人への警鐘のようなセリフになるんですか? まったく脈略がない興ざめでした。ドン引きでした。そこは、「茶々は、ようやりました・・・」の一言で良かったんですよ。脚本家はあのシーンでいったい何を描きたかったのか!!!!! 意味不明です。


 瀬名のお花畑構想のところでも述べましたが、大河ドラマでよくある「乱世を終わらせるため」とか「戦のない世を作るため」というスローガン。これ、いい加減やめませんか? これを聞くと一気に醒めちゃうんですよね。彼らは皆、自分たちの野望を満たすため、あるいは、自家の存続と繁栄のために戦っていたわけで、決して世のため人のために戦っていたわけではありません。言うなれば、現代の企業戦士たちと同じで、自社の利益のため、家庭を守るため、自身の出世のために血眼になって働いているわけで、世の中のために働いている人なんて、ほとんどいないはずです。それが、結果的に世の中の繁栄につながっているだけあって。乱世を終わらせたというのも、結果的にそうなっただけで、家康がそれを目指していたわけでは決してなかったはず。家康が目指したのは、徳川家の繁栄ですよ。戦のない世の中を作るための戦い。そんな屁理屈の解釈はありえません。戦争は戦争ですよ。


もっと言えば、徳川幕府の時代になって平和な世の中になったという解釈自体、まったくの間違いです。劇中、「徳をもって治めるが王道、武をもって治めるが覇道。覇道は王道に及ばぬもの」というフレーズが第1話から登場するテーマのようになっていましたが、それでいうなら、徳川幕府が250年安泰だったのは、武をもって治めていたから。決して徳をもって治めていたわけではありません。その証拠に、幕末、黒船来航という外圧によって幕府の軍事力の弱さが露呈したら、たちまち倒幕ムードが高まり、参勤交代を廃止して江戸に詰めていた人質を国元に返したら、瞬く間に幕府は瓦解しました。徳川幕府というのは、日本史上最大にして最強の軍事政権です。戦国時代が終わって始まったのは、血なまぐさい粛清の時代です。徳をもって治めるとか、きれいごとも甚だしい。


 わたしが三谷幸喜さんの作品を絶賛するのは、そういうきれいごとのスローガンをいっさい使わないところです。『鎌倉殿の13人』では、「坂東武者の国を作り、そのてっぺんに北条が立つ」というのが主人公のスローガンでした。実にわかりやすいですよね。『真田丸』では、「自身がこの世に生きた証を残すため」というのが戦う理由でした。これですよ!これ! これこそが真の武士、真の男の生き様ですよ。もちろん、家康と真田信繫では置かれた立場が違いますから、家康は生きた証を残すために戦っていたわけではなかったでしょうが、乱世を終わらせるために戦っていたなんてのは詭弁です。ってか、乱世乱世といいますが、当時を生きていた彼らが、今を乱世と思っていたかどうかも疑問です。生まれたときから戦うのが普通だったわけですから。


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 気が付けば、めっちゃ長文になっていました。批判がとまらない。頑張って少しだけ褒めます。今回、いままでになくVFX技術を駆使した背景映像を導入していましたが、あれは良かったですね。最初はちょっと違和感があったのですが、だんだん見慣れてくると、ロケでは絶対表現できない迫力ある映像で、関ヶ原の戦いなんて今までにない戦闘シーンでした。姉川の戦いのシーンでも、小谷城の稜線から姉川の風景まで、ほぼ現地のロケーションどおりでした。あれは、ロケでは絶対無理ですからね。今回初めてということで、最初はちょっと馴染めなかったですが、おそらく10年後にはこれが当たり前になっているでしょう。その転換期がこの作品だったってことになるでしょうね。ただ、馬は本物の馬が良かった(苦笑)。


 あと、ひとつ断っておくと、出演した俳優さんたちは、まったく批判の対象ではありませんので、お間違いなきよう。主役の松本潤さんも、少年時代から70歳を過ぎた老人まで、よく演じられましたね。お疲れ様でした。悪いのはすべて脚本です。申し訳ないですが、古沢良太さん、もう二度と大河ドラマは書かないでください。民放のコメディドラマを書いていてください。切に願います。とにもかくにも、このあたりで『どうする家康』のレビューを終えたいと思います。毎週のぞきにきていただいた方々、時折訪ねてきてくれた方々、コメントをくださった方々、本稿で初めてアクセスいただいた方々、どなたさまも本当にありがとうございました。


●1年間の主要参考書籍

『徳川家康』 笠谷和比古

『定本 徳川家康』 本多隆成

『徳川家康 知られざる実像』 小和田哲夫

『徳川家康の決断』 本多隆成

『徳川家康と武田信玄』 平山優

『徳川家康』 藤井譲治

『織田信長』 池上裕子

『信長の天下布武への道』 谷口克広

『秀吉の天下統一戦争』 小和田哲夫

『関が原合戦と大坂の陣』 笠谷和比古


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by sakanoueno-kumo | 2023-12-27 22:52 | どうする家康 | Trackback | Comments(20)  

Commented at 2023-12-28 01:18 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-12-28 02:02
> みやさん

非公開コメントなのが残念ですが、おっしゃるとおりですね。
この脚本家さんは、リーガルハイとかコンフィデンスマンとか、いわゆる謎解き的な伏線を張って回収していくといったストーリーを得意としているようですが、それを大河に持ち込まれると、もはやそれは歴史ドラマではなくなります。
テクニックばかりに走って、人物を描こうとしていうない。
歴史ドラマはヒューマンストーリーですからね。
大河には向いてない脚本家だと思います。
Commented by 博多の虎(夜のみ) at 2023-12-28 19:12 x
 まあ…「批判を控える」と公言されて以降も,「ああ…言いたいことがあられるんだろうなあ…。」というのはオブラートにうまく包んで書かれておられるといいますか,書かれた言葉の端々ににじみ出ていたといいますか…いずれにせよお疲れさまでした。

 良し悪しとか成否とかはともかくとして,脚本家の「新しい大河」らしきものと言いますか,意図が見えたのは前半だったのかなという気は致します。三河一向一揆や今川滅亡などを時間かけて丁寧に書こうという意図は見えていました。(ただし丁寧に書くことと時間をかけることは決してイコールではない。丁寧に書こうという意図は見えたが,私としては時間をかけた割には丁寧さには欠けていたように思えましたが。)一般的にも「よくなった」と言われる後半ですが,そもそも折り返しの築山事件や本能寺の変が酷すぎたから相対的にマシに見えた,ともいえますし,何より「良くも悪くも普通の大河」になっただけという気もしなくもないです。前半に時間を割きすぎて後半は「新しい(変な)こと」が結果的にできなくなった…ゆえの怪我の功名的に良くなったというのはいささか厳しすぎでしょうかね?

 演技についてですが…基本的に「下手に見える」演出だったように思います。第34話だったかな,コメントさせていただきましたが,感情表現のレパートリーが乏しいというか,静と動の「動」一辺倒,緩急の「急」一辺倒という印象が強かったですね。もちろん多くの出演者はそういったメリハリのある演技ができるレベルの高い方々だった(と信じたい)はずですが,レパートリーが乏しいゆえに俳優の演技レベル,スキルがフルに活かされていない…これは演出の問題なのかな?

 「大河でなければ」「現代劇であれば」といった声も聞かれるようですが…基本的にキャラクターの書き方が拙く,人物の成長や変化,あるいはキャラクター設定がだいたい他の人物のセリフで説明されることがほとんどで,その当人の言動やエピソードから我々視聴者が感じ取る機会は極めて乏しかったように思います。後付けの新規回想でつじつまを合わせるなども,そもそもドラマの書き方として「プロとは思えない」レベルの低さで…大変失礼ながらドラマとして極めてクオリティが低かったと言わざるを得ないのではないでしょうか?
Commented by kumikokumyon at 2023-12-29 07:45
まずこの1年間本当にお疲れ様でした。本作を見ながらどこにもぶつけられない(回りは全て途中退場)不満や批評をこちらのサイトを拝見することでかなり解消することができました。そして丁寧な各話に纏わる解釈があったので1年間見続けることが出来ました。感謝いたします!!
私はこの脚本家を選んだNHKに最も非があると思うのです。
売れっ子だからってだけで選んだのでしょう、タコが!!

今ここで話すことではないかもですが、来年もすごく不安なんです。設定の難しいと思われる平安時代、主役の女優さんは可愛くて好きですが、とっても才女には見えません。光君のモデルであろう道長があれ?そしてオーバーツーリズムも甚だしい京都に、またどっちゃりと大河好きが押し寄せると思うとぞっとします。
Commented by ignatiusmaria0319 at 2023-12-29 09:49
管理人様、ご無沙汰しております。
『どうする家康』を観終わりました。

前半はファイトクラブ、北斗の拳、ミッドガル等の要素が含まれ、そして何よりも目を引いたのが紫禁城で中国時代劇のようでした。織田信長当時の清洲城復元図をネットで見ましたが典型的な戦国の城でした。今回の築山殿は有村架純さんに合わせたようで一種の解釈として見ていました。VFXを用いていたのでまさにゲームファンタジーです。

後半はだいぶ改善されて従来の大河ドラマに近づいてきましたが管理人様の仰る通る、脚本家の向き不向きがあります。あの朝ドラ(連続テレビ小説)史上最悪の大迷作『純と愛』と匹敵します。その次が『江 〜姫たちの戦国〜』です。当時の週刊誌の表現を借りますと「陳腐なお子様ドラマ」でした。

最終回に『吾妻鏡』と『源氏物語』が登場し大河ドラマの前後作を暗示させ、そういえば『らんまん』に次の大河ドラマを匂わせる「夕顔」や「べらぼう」が登場しました。小栗旬さんが天海大僧正として登場しましたね。誰だかわからないほど特殊メイクが施されていました。これは『鎌倉殿の13人』最終回冒頭に徳川家康を登場させたお礼と松本潤さんと小栗旬さんが友人の関係であるからその意向にしたのでしょう。

長文となりましたが来年は平安時代が舞台なので期待します。大河ドラマは戦国、幕末以外の時代を積極的に取り上げる時代(近現代日本の大河ドラマは4作ありますが視聴率的に唯一成功しているは『いのち』のみです)です。

良いお年をお迎えください。ありがとうございました。
Commented by sabertiger54 at 2023-12-29 20:08
こんばんわ。
いや〜“直江状”を見るが如くの胸のすくような総評感服いたしました。私もおおよそkumo様の総評に同意しますし、大河ファンならそう思うと思います。ただこれは古沢某だけのせいではなく私もそう思っていた。「利家とまつ」辺りから始まった〈大河ドラマのホームドラマ化〉という前提があると思います。私のような面倒くさい歴史おじさんから若者、ファミリー層獲得のために話をわかりやすく、面白くするために家族の絆や戦なき世という現代的価値観をねじ込んでくるために一種の破綻が生じてしまう。そのへんは三谷幸喜さん、大石静さんあたりは本人が歴史好きなので勘どころがわかっているんですよね。古沢某はそこに現代的価値観をベタで持ち込んでしまったと言うことでしょうか。
徳川家康に合う配役では無く、松本潤に家康の性格を合わせてしまった。これは瀬名も同じ。いい人キャラ路線は既定路線だったのでしょう。
批判ばかり書いても何なんで一ついいところを探すなら淀殿の最後は今までで一番良かったかもしれない(長台詞は無用ですが。明らかに現代世相を意識してます)。CGによる古戦場や城郭の再現には大きな可能性を感じました。
脇役ばかり深堀りせず家康の変化を丹念に描いていたらある意味今までのイメージと違う面白い家康ドラマになっていたかもしれませんね。

一年間のレビューと総評ご苦労様でした。一年間楽しませていただきました。やはり私にとってkumo様のレビューを読むまでが大河ドラマです。
関係ありませんが映画「首」観てきました。拙ブログにも書きましたが良かったです。
Commented by 三番中 at 2023-12-30 20:36 x
>>他の登場人物でいえば、ひどかったのはやっぱ秀吉ですね。何なんですか?あの気持ち悪い男は。あれが人たらし秀吉ですか?家康が主人公の物語ですから、秀吉がヒール役になるのは仕方がないとは思いますが、あれではただのアブナイやつ。サイコパスの気持ち悪い男です。あんな男が天下人になれるはずがないでしょう。

いや〜それはどうですかね?
歴史学者の呉座勇一氏は、自身のYouTubeチャンネルで本作の秀吉は実際の人物像にかなり近いんじゃないかと言っていました。「戦国武将虚像と実像」という著書の中では、山田風太郎が「妖説太閤記」で描いた邪悪でサイコパスな秀吉を最も史実に近いと評価してましたね。そもそも秀吉が人たらしだったというのも、軍記物語でキャラ付けのために創作された設定に過ぎないらしいですから。
もちろん、史実としてなにが正しいかということと、その通りに描けばドラマとして面白くなるかは別の問題です。僕はもうちょっと織田家臣時代の秀吉を家康に友好的に描いた方が面白くなったと思います。
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-12-31 10:56
> 博多の虎(夜のみ)さん

おっしゃるように、三河一向一揆や今川滅亡などは、今まで詳細に描かれることはほとんどなかったですからね。
そこは評価したいところですが、ただ、そこに時間を費やしたから後半の尺がなくなったのではなく、瀬名の死を前半のクライマックスに・・・つまり、折り返しに設定したからだと思います。
これも近年の大河ドラマの悪癖ですが、主人公の若き日に影響を与えた重要な登場人物の死を折り返しの6月末ごろに持ってくるという展開がパターン化していて、そのせいで、後半が駆け足になっちゃうんですよね。
『麒麟』のときの斉藤道三とか『西郷どん』のときの島津斉彬とか『軍師官兵衛』の織田信長とか『龍馬伝』のときの武市半平太とか『篤姫』のときの斉彬と家定とか。
ほかの物語での、6月末から7月中旬にかけて重要な人物が死にます。
まずそこの設定ありきで物語が構成されているとしか思えません。
昔は決してそんなことなかったんですよ。
『太平記』では、緒形拳さんほどのビッグネームが3月に死んでますから。
今年は、有村架純さんと岡田准一さんを出来るだけ長く引っ張るというのが既定路線だったのでしょう。
でも、桶狭間の戦いから築山殿の死までの年月より、そのあとの家康の人生の方が倍ほどありますからね。
歴史の流れより俳優さんを優先するというのは、本末転倒も甚だしいですね。
ちなみに、昨年も頼朝が折り返しあたりで死んでますが、昨年の場合は、物語の流れ的にもちょうどその時期に死んでよかったところでした。
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-12-31 11:05
> kumikokumyonさん

過分なお言葉、ありがとうございます。
そう、売れっ子だったら誰でもいいってことでもないですよね。
ただ、骨太な大河作品を書ける脚本家さんがいないっていうのも確かなんでしょうね。
ここ十数年、圧倒的に女性の脚本家さんが目立ちます。
三谷さんや池端さんは何度も書いていますから、今回、久々に古沢さんはニューフェイスの男性脚本家さんだったのですが、超がっかりでな結果です。
LGBTとかジェンダー論とか、これ、女性脚本家さんにありがちな話なんですが、男もそれ書くのか・・・と。
まあ、NHKからそれを盛り込んでくれと依頼されたのかもしれませんが。
ジェームス三木さんの脚本が恋しいです(笑)。
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-12-31 11:14
> ignatiusmaria0319さん

なるほど、ゲームファンタジーですか。
わたしはゲームをしないので、その点は気づきませんでしたし、ファイトクラブ、北斗の拳、ミッドガルらも知らないので、よくわかりません。
たしかに、清洲城の映像はたしかに紫禁城か!・・・と私もブログでツッコミを入れたのですが、のちに城郭考証担当の方の言葉を聞くと、あれはちゃんと当時の城郭資料をもとに作った映像だそうです。
本文中でも述べましたが、姉川の戦いの映像は、まさに信長の陣から見た景色がそのまま再現されていました(ここはわたし、実際に行ったことがあるので、実に詳細に再現されているかがよくわかりました)。
大坂の陣や関ケ原のシーンも同じです。
これまでの大河ドラマでは、江戸城と言いながら実は姫路城の映像だったり、関ケ原といいながら、ただのどこかの草原でのロケだったりしたのですが、VFX映像は、これまで再現できなかったロケーションを見ることができるので、私はよかったと思っています。
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-12-31 11:24
> sabertiger54さん

直江状ですか(笑)。
それは古沢さんも激怒するでしょうね(爆笑)。
ドラマは所詮は娯楽エンターテインメントなわけですから、史実や通説を必ず描かないといけないとはわたしは思いませんが、実在した歴史上の人物を題材にした歴史ドラマの場合、やはり、できるだけ考え方や価値観を含めて歴史を描いてほしいですよね。
特に大河ドラマの場合は、60年以上続いているひとつの文化だと思いますから、民法の歴史ファンタジードラマと一緒にしてはいけないと思います。

たいへん過分なお言葉をいただいて恐縮ですが、来年の大河は、ちょっと解説は無理っぽいです。
ぜんぜん知識がないので。
今もどうしようか迷っています。
Commented by sakanoueno-kumo at 2023-12-31 11:51
> 三番中さん

呉座さんはかなり極端な見解の持ち主ですからねぇ。
学者さんとしては、ちょっと穿ちすぎなところが多々ある方かと。
秀吉の人たらしというのは後世の軍記物語ですが、当時の史料でも、たとえば前田利家や長宗我部元親の書簡などで、秀吉の人柄に感服したという記述があります。
そこからキャラ付けされた創作ですから、まったく荒唐無稽とはいえないと思いますよ。
学者さんという仕事は、まず疑ってかかるところから始まりますから、軍記物語などにしか見られない記録を基本的に否定します。
ですが、わたしら歴史好きの素人は、そうではありません。
わたしは一次史料にないから嘘だとも思いません。
眉唾物なのは、時の政権に媚を売るような話ですね。
江戸時代の軍記物語ですから、徳川政権に媚るには、むしろ秀吉を蔑むべきところですが、その時代でも人たらしに描いている話は、むしろ信ぴょう性を感じます。

加えて、学者さんというのは、自分独自の見解を発したがるので、あえて解釈を恣意的に捻じ曲げることがよくあります。
その最たる例がSTAP細胞でしょう。
歴史学者さんでも、対局の見解を持つ学者さんの本とか読んでると、罵り合いが醜いですよー。
わたしは城好きですが、城郭考古学者の千田嘉博先生なんて、言ってることめちゃくちゃですから。
呉座勇一さんも似たようなことろがあります。
テレビなどで人気の学者さんはとくに、人と違う観点でものを言いたがりますから。
だから、私は、学者さんの言う新説とか逆説とかは、参考にはしますが鵜呑みにはしません。
やはり、長年培わてきた通説とか伝承の方が、信ぴょう性があると私は思っています。
Commented by heitaroh at 2023-12-31 15:46
貴兄の辛抱強さこそが令和の家康ですよ。重い荷を背負って遠くに行ってください(笑)。
Commented by とくべえ at 2023-12-31 16:28 x
1年間、エピソードの確認に拝見しておりました。
管理人様もおっしゃる通り、私も「悪いのはすべて脚本」だと思います。後付け設定が次々とされては、俳優さんもその場その場の演技をしていくしかできなかったのでは、と察します。
「乱世を終わらせる」というスローガンを出すこと自体は、私は悪いとは思わないし、かっての「徳川家康」などでも見られました。ただし、これらの作品は、主人公がただ平和を唱えるだけでなく、戦争の残酷さや、戦争を避け終わらせることの難しさ、主人公の行動の矛盾といったこともしっかりと描いていました。だから「きれいごと」とはならなかった。
しかし今回の作品の瀬名や家康は、去年の義時のように悪を飲み込み自分の手を汚すということをしていない。だからまさしく「きれいごと」になってしまったのだと思います。
Commented by sakanoueno-kumo at 2024-01-01 17:02
> heitarohさん

それは褒められているのか、ディスられているのか・・・。
Commented by sakanoueno-kumo at 2024-01-01 17:35
> とくべえさん

ありがとうございます。
でも、わたしはやはり、「乱世を終わらせる」というスローガン自体、現代価値観の安っぽい反戦史観、平和史観だと思います。
当時の人たちは、平和なんてそもそも知らないわけですから、自分たちの生きている世の中が乱世だとも戦国時代だとも思っていないはず。
乱世やら戦国なんて言葉は、後世が歴史を相対的ににて名付けたものに過ぎないですからね。
今の価値観から見たら、当時は確かに乱世ですが。
Commented by あぎゅら at 2024-01-02 17:26 x
昨年も1年間の解説ありがとうございました。
私も挫折しそうになりながらようやく正月休みで完走しました。
青天、鎌倉殿と傑作が続いただけに余計に粗が目立った印象ですが、家康という最高の題材でこの出来は頂けないですね。
個人的には数正出奔あたりからは面白く見られたのですが、私の周りでも春頃までに脱落した人が多かったです。
家康なんて余計な捻りを加えずに史実をなぞって普通作るだけで十分面白くなると思うんですが…
ともあれ今年の解説も楽しみにしております!

Commented by sakanoueno-kumo at 2024-01-02 23:38
> あぎゅらさん

おっしゃる通りですね。
必ずしも史実どおりに描かないといけないとは思いませんが、史実を無視して描く以上、史実より面白い話にしてもらわないとね。

今年はまったく知識がありませんので、解説はできないなぁと思案しています。
単なる感想文になりそう。
Commented by 山城守 at 2024-03-29 19:21 x
凡そご賢察の通りと存じます。
尤も、最初「普通以下。弱虫、泣き虫、鼻水垂れ」だったことに関しては「まあ、三方ヶ原で無様な敗戦を喫するくらいだから最初はこんなものか。漢王朝400年(前後合わせて)の初代皇帝となる劉邦も当初は項羽に追い立てられて逃走用の馬車を軽くして自分だけ助かろうとその子女(内一人は後の第2代皇帝恵帝)を馬車から放り出して夏侯嬰に説教されるという何とも情けない、というより屑そのものだし、若い頃の家康がヘタレでも、別段問題ないよな。」と思っていたんです。ところが情報戦での家康の良さが光るはずの小牧長久手の戦いの3年前の本能寺の変の時期に瀬名の企みを武田が故意に漏らしたことに家康が気付いていない。この時点で、「じゃあ、そこから3年後どうやってあの見事に池田恒興をあべこべに討ち取る情報戦の小牧長久手をやったんだよ。無理があるだろ。」とテレビの前で突っ込んでいました。
さらにさかのぼれば家康は今川氏真から「織田を討ち果たしてから帰って来い。」と三河の小領主の立場で手紙を貰った時に大喜びしています。尾張の大名に対し三河の小領主が挑んで勝てる道理がありません。それに、瀬名からの手紙では「駿府は戦とは無縁」と記載されていました。ということは、今川氏真は戦で兵力を割けないといった特段の事情もないのに家康に単独での戦いを強いたということになり、それは家康に死ねといったのと同じです。この状況で家康が今川からの手紙に喜ぶ等絶対にあり得ません。
「当時を生きていた彼らが、今を乱世と思っていたかどうかも疑問」ということについては国とは統治機構の法(ここで言う「法」とは成文、不文を問わない)により治められるものであり、当時はその「法」が天皇等や将軍等の無能さ故に機能不全を起こした状態ですから、比較的力のある大名、或いは由緒正しい大名(これには甲斐源治の武田が該当すると思われます)等は「私がもう一度日本に法秩序を作る。」という構想を抱いても別段不思議ではないと考えます。
Commented by sakanoueno-kumo at 2024-04-03 08:54
> 山城守さん

貴殿は途中でリタイアされたんですよね?
選挙に投票していない人に政治批判をする資格はないとわたしは思っていますし、ドラマを最後まで観ていないのにその一部だけを抜粋して批判するのはいかがなものかと。
実際、最後まで観ないと作者の意図がわからないことは往々にしてあります。

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