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2011年 06月 08日 ( 1 )

 

JIN -仁-(完結編) 第7話・第8話

 癌が再発した野風の出産の物語。このときより数年前、花魁時代に乳癌に侵された野風だったが、南方仁の手術により一命を取り留めた。しかし、そのことによって彼女が本来歩むべき歴史が変わってしまった。おそらく彼女は、仁の未来の恋人、友永未来(みき)の先祖。本来ならば彼女は、旗本と結婚して子供を生んだのち癌で死に、その子供の子孫が未来(みき)に繋がっていくはずだった。しかし、すでに彼女の人生は別の道を進み始め、仁が持っていた未来(みき)の写真も消えてしまっていた。

 人生が変わった野風は、フランス人貿易商ジャン・ルロンと結婚。しかし、その幸せも束の間、彼女の身体は再び癌に侵されていた。しかも、彼女はルロンとの間の子供を身ごもっているという。本来ならば、この世に生まれることはなかった命。ただでさえ癌に蝕まれた身体での出産は危険を伴うのに加え、歴史の修正力が本来生まれるはずのなかった命の誕生を許すだろうかと悩む仁。
 「もし、お前のやったことが意にそぐわぬことであったら、神は容赦なくお前のやったことを取り消す。」
 1話で佐久間象山の言った言葉が仁の決断を鈍らせる。そんな彼に、自分に子供を取り上げさせてほしいと頼む。この時代の人間が子供を取り上げるなら、それは修正された歴史ではなく、ただの歴史なのではないか・・・と。この言葉に、仁は仁友堂で野風の出産を診ることを決断する。修正された歴史ただの歴史。ここに、この物語の核心部分が隠されているようだ。

 やがて臨月を向かえた野風だったが、逆子出産となってしまい、自然分娩を試みるものの困難を極め、帝王切開の必要性に迫られる。しかし、この時代の麻酔は強すぎて胎児が死んでしまう。野風の命を守るため、一度は死産を決意する仁だったが、野風の切望により、麻酔なしの帝王切開を断行する。

 麻酔なしの帝王切開といえば、なんと野蛮な荒療治かと思うが、信じられないかもしれないが、実は私はその麻酔なしの帝王切開で生まれた人間のひとりである。私が生まれたのは昭和42年(1967年)。この物語のちょうど100年後のこと。母の話では、私は予定日より1ヵ月近くも遅れていたそうで(その頃に陣痛促進剤があったかどうかは知らない)、頭蓋骨が出来上がっていて自然分娩では出てこず、帝王切開に切り替えるも、ドラマと同じく麻酔をすれば子供が死ぬと言われ(理由はわからない)、死産か麻酔なしの帝王切開かの究極の選択を迫られ、相談の末、麻酔なしの帝王切開を決断したらしい。腹を割いて子供(私)を取り出し、へその緒を切ったら即、麻酔・・・その間、数分のことだったそうだが、その痛みは想像を絶するものだったと母はいう。メスが入った瞬間、獣のような叫び声をあげた・・・と。そりゃあ、そうだろう。切腹のようなものだから(切腹をしたことがないので、どれほどの激痛かわからないが・・・笑)。これはまぎれもなく本当の話。病院も町医者ではなく、名の通った大病院である。平成の現代でもそんな例があるのかどうかは知らないが、昭和の後半には、間違いなくあった話である。私が子供の頃、私が反抗する度に母はこの話を持ち出した。「あんな痛い思いをして産むんじゃなかった。」・・・と(苦笑)。

 野風の子供は無事に生まれ、彼女も命を落とすことはなかった。歴史の修正力ははたらかなかった。修正される歴史と、そうでない歴史。この違いが、物語のテーマのようである。

 物語の裏主役とでもいうべき坂本龍馬は、「大政奉還」の実現に向けて奔走。有名な「船中八策」を起草する。この「船中八策」については、昨年の大河ドラマ『龍馬伝』の稿でふれているので、よければそちらを一読ください(参照:龍馬伝 第43話「船中八策」)。しかし、ここでもあるはずのない歴史が誕生。龍馬の起草した新国家の体制案は、9つ目の項目が存在し、「船中九策」となっていた。
 九、皆が等しく必要なる医療を受けられ、健やかに暮らせる保険なる仕組みを作る事
 それは、勝海舟からでも大久保一翁からでもなく、仁から得た知識だった。
 「いるはずの無い俺の足跡が、歴史に刻まれていく。坂本龍馬の手で・・・。歴史は、変えられないわけじゃない・・・。」
 変えられない歴史と、変わりはじめた歴史。その違いは何なのか。もうすぐ見えてきそうだ。

 新しい命の誕生と、新しい国家の誕生を重ねあわせたあたり、実に上手い設定だと思う。第4話の稿でも述べたが(参照:JIN -仁-(完結編)第4話)、ストーリーに無理に龍馬を絡めてくるわけではなく、ちゃんと通説に沿った行動をさせながら、フィクションの物語とも深く繋がっているという設定は見事。このあたりが、フィクションでありながら歴史ファンにも支持される理由だと思う。

 余談だが、第6話で出てきた田中久重という人物のことをよく知らなかったのだが、調べてみると、「東洋のエジソン」といわれた大発明家で、東芝の創業者だとか・・・。原作漫画にもこの人物が登場するのかどうかは知らないが、チョイ役とはいえ、なぜドラマに登場させたのか考えたときに、このドラマのスポンサーがどこであるかに気がついた。なるほどな・・・と(笑)。


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by sakanoueno-kumo | 2011-06-08 01:04 | その他ドラマ | Comments(4)