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2011年 06月 21日 ( 1 )

 

JIN -仁-(完結編) 第10話(最終章・前編)

 坂本龍馬暗殺予定日の慶応3年(1867年)11月15日になって、ようやく龍馬と会うことができた南方仁は、龍馬を助けるべく居場所を四条・近江屋から伏見・寺田屋に移したものの、日が変わった16日未明、龍馬は史実通りに前頭部を横に斬られて倒れる。しかし、史実とは違って龍馬を斬った人物は、龍馬の護衛に付いていた長州藩士・東修介(架空の人物)だった。
 「私の兄は貴方に切られたんです。貴方が久坂さんと会った帰りに。貴方は私の敵なんです。そのつもりで貴方に近づきました。」

 この時代、仇討(敵討)合法な行為だった。武士階級のみに許されたもので、範囲は父母や兄など尊属の親族が殺害された場合に限られ、卑属(妻子や弟・妹を含む)に対するものは基本的に認められない。その仇討をした相手に対して復讐をする重仇討は禁止されていた。本来は仇討をする場合、主君の免状を受け、他国へわたる場合には奉行所への届出が必要で、町奉行所の敵討帳に記載され、謄本を受け取るという手続きが必要。しかし、無許可であっても、現地の役人が調査して仇討であると認められれば、大目に見られ、場合によっては賞賛された。逆に父母や兄が殺されたにも関わらず仇討しないことは武士として恥ずべきことで、場合によっては家名お取り潰しになったりもした。

 つまり、東の龍馬に対する仇討の企ては、逆恨みでも何でもなく、武士として当然の、あるべき姿だったのである。仇討のために龍馬に近づくも、龍馬の考え方に感銘し、尊敬すらし始めていた東。しかし、仇討を断念するは武士の恥。そんな葛藤に苦しんでいた東だったのだろう。
 「私の兄は志士で、やはり志半ばで倒れました。兄の代わりに果たしたいことがひとつあったのですが、坂本さんの大政奉還の建白を読んだ時に、もう良いのではないかと思ったのです。」
 前話でそう言っていた東が、この局面で龍馬に刃を向けたのは、武士の誉である仇討だったのか、それとも、咲が言うように龍馬の生き方を守るためだったのか・・・。

 これより6年後の明治6年(1873年)、明治政府の司法卿・江藤新平らによる司法制度の整備により、仇討は禁止される。それ以後、当然だが現在でも仇討は許されていない。しかし、肉親や大切な人が殺害された場合、その相手を殺したいほど憎む思いは今も同じだろう(肉親を殺された経験はないが)。現代の、どれだけ凶悪な殺人鬼であっても人権が守られる法制度が、果たして正しいものなのだろうか・・・なんて、昨今の裁判の報道などを見てときどき思ったりする。昔のほうが、被害者に優しい血の通った秩序だったんじゃないかと・・・。

 仁先生たちの懸命な治療により、一時的に意識を取り戻した龍馬と仁先生の会話。
 「先生には、この時代はどう見えたがじゃ?愚かなことも山ほどあったろう?」
 「教わる事だらけでした。未来は夜でもそこらじゅうで灯りがついていて、昼みたいに歩けるんです。でも、ここでは提灯を提げないと夜も歩くこともできないし、提灯の火が消えたら、誰かに貰わなきゃいけなくて・・・。一人で生きていけるなんて、文明が作った幻想だなあとか。離れてしまったら、手紙しか頼る方法ないし、ちゃんと届いたかどうかもわからないし・・・。人生って、ホント、一期一会だなあとか・・・。あと、笑った人が多いです。ここの人たちは、笑うのが上手です。」

 文明ってなんだろう・・・と、私もときどき思う。不便を便利にするために発達した文明に、結局私たちは縛られている。携帯電話なんてなかった十数年前までは、相手とすぐに連絡が取れないことが当たり前だった。今は、携帯が繋がらないと、私も含め人はすぐにイライラする。休日でも出先でも、いつでもつかまえられることが当たり前。逆に自分もつかまえてもらう体勢でいなければ、相手に不快感を与えてしまう。便利であるはずの文明に、縛られている。原発が止まって電力が滞ると、都市機能は麻痺し、経済すら滞る。提灯から提灯へ火を譲ったように、電力を国民皆で分け合わなければならない今、人々はそれぞれの立場で好き勝手なことを言い、混沌とした政治はこの期に及んでまだ国民の側を向うとしない。文明って、本当に人を幸せにしたのだろうか・・・と。

 「先生・・・わしゃ、先生の生まれた国を作れたかのぉ?・・・先生のように、優しゅうて、馬鹿正直な人間が、笑うて生きていける国を・・・。」

 坂本龍馬たち幕末の志士たちが命を賭けて目指した未来の国家像は、今のようなものだったのだろうか・・・。もし、彼らが現代の日本と日本人の姿を見たら、どう思うだろうか・・・。

 「こりゃぁ、もういっぺん日本を洗濯する必要がありそうじゃき!」
 そんな龍馬の言葉が聞こえてきそうだ。


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by sakanoueno-kumo | 2011-06-21 19:12 | その他ドラマ | Comments(3)